出来でけ)” の例文
旧字:出來
そら綿貫のいうたことかて一から十まで信用出来でけしませんし、あの着物取られた晩でもたしかに綿貫が指図さしずしたのんと違うかしらん。
(新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
「あんた一人で東京までようおきやすか。」と母親おふくろはもう涙を一杯眼に浮べて「しげ可憫かはいさうに、おつれちつとも出来でけよらんのかいなあ。」
花「それはうでありましょう、しか出来でけない処を無理に頼むので、出来難でけにくい処をするが勘弁だア、うじゃアありませんか」
真景累ヶ淵 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
間もなくその素封家から「紅葉先生と露伴先生のだけは早速表装しました、おかげで自慢の家宝が二幅出来でけえました、」と、慇懃いんぎんな礼手紙が来た。
今日日きょうびはパアマネントオーの一つ位掛けんことには、良家えゝとこの人と交際も出来でけまへんさかいナ。それに、何でんがナ。
俗臭 (新字新仮名) / 織田作之助(著)
自分わしの同門に松浦おろかという少年が居った。こいつは学問は一向出来でけん奴じゃったが、名前の通り愚直一点張りで、勤王の大義だけはチャント心得ておった。
近世快人伝 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
よね 今迄、そけをつて、己共おつどんが話ば聞いとつたツだるけん、一人だけつらしゆうてしたてちや、そらあ出来でけんたい。仲間入りばせんぎりや承知せんけん……。
牛山ホテル(五場) (新字旧仮名) / 岸田国士(著)
こうお見受けしたところ、あんたはんも、まんざら物の出来でけんお方でもおへんやろ。向うは人をだまさにゃ商売が成り立ちまへん。それを知って騙されるのはこちらの不覚。
霜凍る宵 (新字新仮名) / 近松秋江(著)
嬰児が可哀相やよつて、さう頼むんや、嬰児をどうかして了へいふたかて、そんな殺生なこと出来るかいな。罪どすがな。わて、殺す言はれたかて、そんなこと出来でけへん。
乳の匂ひ (新字旧仮名) / 加能作次郎(著)
「株ちゅうものは、儲かるように出来でけちょる。そんでなくて政府が許しとくものかな」
猫車 (新字新仮名) / 宮本百合子(著)
「駐在所で、仕末が出来でけねえだら、長野へつゝ走つて、何うかして貰ふがいし、長野でも何うも出来ねえけりや、仕方が無えから、村の顔役がたかつて、千曲川へでも投込はふりこんで了ふがいだ」
重右衛門の最後 (新字旧仮名) / 田山花袋(著)
「あんた、女が出来でけたとじゃな?」
花と龍 (新字新仮名) / 火野葦平(著)
「藁でお餅が出来でけるんですか。」
私の生ひ立ち (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
着物を取ったんは泥坊と違うて博奕打ばくちうちやいうのんです、それがだんだん聞いてみますと、ほんまに悪いことは出来でけへんもんで
(新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
お互に一寸は楽しみをして気を晴らさんでは辛い勤めは出来でけん、お梅はんの処へ泊っても庄吉にも云わぬじゃ、私が心一つで
敵討札所の霊験 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
「こなひだ、芝耕しこうの芝居を見て、すつかり感じたもんやさかい、ちよつくら真似てみたが、なか/\出来でけよらんわい。」
これが私の夫ですというて、ひとに紹介も出来でけしませんわ。字ひとつ書かしても、そらもう情けないくらいですわ。ちょっとも知性が感じられしませんの。
秋深き (新字新仮名) / 織田作之助(著)
そんな事で向うの禅宗寺へ逃込みますと、有難いことにその和尚という奴が、博多の聖福寺しょうふくじから出た奴で、私たちの友達ですケニなかなか人物が出来でけております。
近世快人伝 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
だるけん、言葉にも顔色にも出さんごたるこつば、どこだいろで感づツとたあ……。さうすツと、もう、どぎやんも出来でけんと……。そん通りイなつてしまふとだもね。
牛山ホテル(五場) (新字旧仮名) / 岸田国士(著)
「閑静は閑静やけれど、寂しいえな。よう辛抱出来でけるかしらん。」
世の中へ (新字旧仮名) / 加能作次郎(著)
永「いゝやうも、もう出来でけたかえ、早いのう、今ねえ皆使つかいったゞ、眞達も庄吉も居ないで退屈じゃア有るし、それに雨が降って来た故」
敵討札所の霊験 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
そうそう、そいからその時分にあのいつぞやの観音さんの絵エ出来でけ上りましたので、それ夫にみせたことありました。
(新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
「そうやのし。何が良えちゅうたかてのし。兄弟が仲良うお酒のんでお正月出来でけるちゅうのが一番いっち良えのし」
俗臭 (新字新仮名) / 織田作之助(著)
「わたしも縫い物が出来でけやせん。お母さんが亡くなってからほんとに武雄はわるくなった」
三つの眼鏡 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
いた男となりや、あぎやんとこれたて、暮すこツたい。吝気しうてしたてちや出来でけんし……丸一年、自分の国の言葉ば使はでん居つて見ろな、あんた、どぎやんあつて思ふ。
牛山ホテル(五場) (新字旧仮名) / 岸田国士(著)
「よう出来でけとるな。このがまの顔が何とも言へんな。いつ頃の作やつたかなあ。」
永「そうかえ、檀家の者も来ぬから一人で一杯遣って居たのよ、おゝ着物がもう出来でけたか、う出来た」
敵討札所の霊験 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
「貴公は皆の中で一番学問が出来でけとるけに、さぞいくつも詠む事じゃろうのう」
近世快人伝 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
しみつたれやな、こんなやとおこもに施しも出来でけへんがな。」
「芳雄ちゃんは下へ行って団扇うちわ取って来なさい。秀雄ちゃん、あんた兄ちゃんやないか、兄ちゃんが先に下へ行かないけません。さ、お母ちゃんは久し振で叔母ちゃんと話があるのんに、そない引っ着かれたら話が出来でけしませんやないか」
細雪:02 中巻 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
殊に又邪淫の一戒というて此れを破れば魔界へ落るというくらいの大事なものじゃ、それに酒を飲むことが出来でけん、飲酒おんじゅの戒は文珠経にも出てあるじゃ、えか
「ああ。やっとこさ話の出来でけとこまで来た」
オンチ (新字新仮名) / 夢野久作(著)
おのれが取次をするから此の様な間違が出来でけたのや、サ是を御覧、此の手紙が何よりの証拠や、わたいはお前に逢いとうて逢いとうてならぬから、家出をしてお前のとこ
闇夜の梅 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
「アハハハ。よう出来でけた、よう出来た……」
林「いかんたってわしにはられませんよ、旦那様、頭へけず出来でけました、こんなににやして何うにも斯うにも、其様そんな薄穢い田舎者えなかものえやだよッて、突然いきなり烟管で殴しました」
菊模様皿山奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
「フーン。そげな事が出来でけるかなあ」
オンチ (新字新仮名) / 夢野久作(著)
花「是は仕様がねえ、じゃア、まアお前さんが剣術遣だから刀に掛けても貰おうというだらわしは角力取だから力に掛けても遣る事は出来でけぬと極めた、それよりほか出来でけませんわ」
真景累ヶ淵 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
すると先達せんだっ前町まえまち風呂屋ほろばが休みで、行水をつかった事がありましたろう、此の時ばかり白い肌が見られると思ってると、悉皆すっかり戸で囲ってのぞく事が出来でけねえ、何うかしてと思ってると
菊模様皿山奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
はアそうでございますかと指をくわえて引込ひっこむ事は出来でけぬ、私は馬鹿だ智慧が足りねえから挨拶の仕様を知らぬ、何卒どうかこうせいと教えて下せえ、お前のいう通りりましょう、ねえ
真景累ヶ淵 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
それに妄語戒といって嘘をつくことは出来でけん、えゝか、それに虫けら一ツでも命を取ることは出来でけん、殺生戒といってな、それは/\出来でけにくいには違いない、喰いいものもう喰わず
とはうも出来でけた、それはさうと君は大層たいそう衣服きものうたな、何所どこうた、ナニ柳原やなぎはらで八十五せん、安いの、うもこれ色気いろけいの本当ほんたうきみなにを着ても似合にあふぞじつ好男子かうだんしぢや
世辞屋 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)