かわ)” の例文
帰りは、みきを並べたとちの木の、星を指す偉大なる円柱まるばしらに似たのを廻り廻つて、山際やまぎわに添つて、反対のかわを鍵屋の前に戻つたのである。
貴婦人 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
向うっかわ食卓テエブルの一つに、白服の詰襟のボーイ連、P・Q・Rが腰かけたままの突っ伏し姿で、どれもが一同にひっそりと、声ひとつない。
フレップ・トリップ (新字新仮名) / 北原白秋(著)
玩具屋のかわを次第に下って行くと坂の下には絵双紙屋があった。この店には千代紙を買いに行く、私の姉のお河童かっぱさんの姿もしばしば見えた。
山の手の子 (新字新仮名) / 水上滝太郎(著)
ぎんのさじを一本と、それに金貨きんかも一枚あげよう、その金貨といったら、少年の父親の銀時計ぎんどけいかわっくらいもある大きなものだと、言いました。
沢庵たくあんにする干大根ほしだいこんが出た時大根一樽にぬか六升と赤穂塩一升とを用意して大根を一かわ並べたら糠と塩を振って今の塩漬茄子をその上へ一側並べて
食道楽:秋の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
行く先は母親のかわの縁続きであった。父親は妻や子供をぞろぞろ引っ張って、そこへ入って行くのを好まなかった。
足迹 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
五百は姉小路あねこうじという奥女中の部屋子へやこであったという。姉小路というからには、上臈じょうろうであっただろう。しからば長局ながつぼねの南一のかわに、五百はいたはずである。
渋江抽斎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
六五 早池峯はやちね御影石みかげいしの山なり。この山の小国にきたるかわ安倍ヶ城あべがじょうという岩あり。けわしきがけの中ほどにありて、人などはとても行きうべきところにあらず。
遠野物語 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
向う側の四五かわ隔てた席に、此方を向いて腰掛けている男の顔があるのを知っていたが、実はその顔が自分の寝顔にまともな視線を注いでいるらしいのに気が付いて
細雪:03 下巻 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
石を投げている敵の前列は、甲州方の進撃路をきりひらいて来た工兵である。だからその水俣の者の隊は怖ろしくないが、一かわ後ろに精鋭が手につばして機を計っている。
新書太閤記:04 第四分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
あくる日めしを食うと見物に出た。釧路町は釧路川口の両岸にまたがって居る。停車場所在のかわは平民町で、官庁、銀行、重なる商店、旅館等は、大抵橋を渡った東岸にある。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
食事時間を大分過ぎていたので、わずかに数える程の客があちこちの席にいているばかりであった。卓子テーブルを三かわおいた彼の筋向うには、前額の禿上った男がしきりに新聞紙を読耽よみふけっていた。
緑衣の女 (新字新仮名) / 松本泰(著)
自分達が立ったかわは、かえってこっちの山の裾が水に迫って、ちょうど切穴の形になって、そこへこの石をめたようなあつらえ
高野聖 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
その周囲まわりへ氷の砕いたのを先ず一かわめてその上へ塩を沢山詰めて、また氷を入れて塩を詰めて三段か四段位にして茶筒の頭だけ少し出しておきます。
食道楽:秋の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
そして、西重門にしじゅうもんかわへ寄ろうとすると、楼門ろうもんの内から、ゾロゾロ吐き出されてくる参詣人の中で
鳴門秘帖:01 上方の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
むかかわではSH夫人ふじんらしい、ちら/\うごほしのやうなきわめてすゞしいひとが、無邪気むじやき表情へうぜうをしてゐるのがについた。わたくしわきにゐるお転婆てんばさんが彼女かのじよめてゐた。
微笑の渦 (新字旧仮名) / 徳田秋声(著)
「膃肭獣は向うっかわにいるそうです。」と誰やらが前から振り返った。
フレップ・トリップ (新字新仮名) / 北原白秋(著)
あるいはベシン皿の中へ松茸を一かわ並べてバターと塩胡椒をつけてまた松茸を並べてバターと塩胡椒をかけて二
食道楽:冬の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
縁日はもう引汐ひきしおの、黒いなぎさは掃いたように静まった河岸のかわで、さかり場からはずッとさがって、西河岸のたもとあたりに、そこへ……そのは、紅い涎掛よだれかけの飴屋が出ていた。
日本橋 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
一人を、多勢で取り囲んでいる場合、助太刀は無論一人のかわへつくので、山手組の侍は、それを見ると逃げ足早く散って、榎坂の樹木の中へたちまち姿を消してしまった。
剣難女難 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
MH反対はんたいかわみぎはしにゐたので、わたしはそのほうゆびさししめした。
微笑の渦 (新字旧仮名) / 徳田秋声(著)
最初に冬瓜を短冊に切って樽の中へ沢庵を漬けるように一かわ並べては塩を沢山かけまた並べてまた塩をかけてなるたけ沢山塩を入れて沢庵漬の通りに重い圧石おしいしを置くのです。
食道楽:秋の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
路が一条ひとすじ胡粉ごふん泥塗だみたように、ずっと白く、寂然しんとして、ならび、三町ばかり、手前どもとおなじかわです、けれども、何だか遠く離れた海際まで、突抜けになったようで
縷紅新草 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
湯煮ゆでたお芋を輪切にしてベシン皿かあるいは丼鉢どんぶりばちの底へ一かわ並べてその上へバター大匙一杯に砂糖を大匙一杯に塩胡椒を好いほどかけてまたお芋を一側並べてまたバターやお砂糖を
食道楽:冬の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)