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伊達卷
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だてまき
ト
其の
胸を、
萌黄に
溢れ、
紫に
垂れて、
伊達卷であらう、
一人は、
鬱金の、
一人は
朱鷺色の、だらり
結びが、ずらりと
摩く。
「
哥太寛も
餞別しました、
金銀づくりの
脇差を、
片手に、」と、
肱を
張つたが、
撓々と
成つて、
紫の
切も
亂るゝまゝに、
弛き
博多の
伊達卷へ。
フト
夫人は
椅子を
立つたが、
前に
挾んだ
伊達卷の
端をキウと
緊めた。
絨氈を
運ぶ
上靴は、
雪に
南天の
實の
赤きを
行く……
其のかはり、
衣服は
年上の
方が、
紋着だつたり、お
召だつたり、
時にはしどけない
伊達卷の
寢着姿と
變るのに、
若いのは、
屹と
縞ものに
定つて、
帶をきちんと
〆めて
居る。
さあ、それからは、
宛然人魂の
憑ものがしたやうに、
毛が
赫と
赤く
成つて、
草の
中を
彼方へ、
此方へ、たゞ、
伊達卷で
身についたばかりのしどけない
媚かしい
寢着の
婦を
追𢌞す。
其處へ
病上りと
云ふ
風采、
中形の
浴衣の
清らかな
白地も、
夜の
草葉に
曇る……なよ/\とした
博多の
伊達卷の
姿で、つひぞない
事、
庭へ
出て
來た。
其の
時美人が
雪洞を
手に
取つて
居たのである。