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一々
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いちいち
ふりがな文庫
“
一々
(
いちいち
)” の例文
私は今
一々
(
いちいち
)
人間という者は真似をするものであるということの沢山な例を記憶しておりませんが、
茲処
(
ここ
)
に二つ三つあります。
模倣と独立
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
その混雑のなかを押し分けて、
箱提灯
(
はこぢょうちん
)
がゆらりゆらりと往ったり来たりしているのが外記の眼についた。彼は提灯の紋どころを
一々
(
いちいち
)
にすかして視た。
箕輪心中
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
其様
(
そんな
)
家の内の
光景
(
ありさま
)
などを
一々
(
いちいち
)
覗き込んで、町の中程になっている
按摩
(
あんま
)
の家を訪ねた——家は九
尺
(
しゃく
)
二
間
(
けん
)
で
裡
(
なか
)
は真暗である——私は「今晩は。」といって入った。
黄色い晩
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
一々
(
いちいち
)
女の名と、
亥年
(
いどし
)
、
午年
(
うまどし
)
、幾歳、幾歳、年齢とが
彫
(
ほ
)
りつけてございましてな、
何時
(
いつ
)
の世にか、諸国の
婦人
(
おんな
)
たちが、
挙
(
こぞ
)
って、
心願
(
しんがん
)
を
籠
(
こ
)
めたものでございましょう。
春昼
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
兵隊上
(
へいたいあが
)
りの
小使
(
こづかい
)
のニキタは
乱暴
(
らんぼう
)
にも、
隠
(
かくし
)
を
一々
(
いちいち
)
転覆
(
ひっくりか
)
えして、すっかり
取返
(
とりか
)
えしてしまうのであった。
六号室
(新字新仮名)
/
アントン・チェーホフ
(著)
▼ もっと見る
娘は
直
(
すぐ
)
に箪笥を拭き始め、その上の品物を
一々
(
いちいち
)
拭きて工合好く据直す。画家は紙巻を一本吸付け、窓を背にして、銅版の置きある机に寄りかかり、娘のする事を見ている。
家常茶飯 附・現代思想
(新字新仮名)
/
ライネル・マリア・リルケ
(著)
俺に
一々
(
いちいち
)
口を出させんでも、お前は、ここでは恐れられているんだからな……あの鉱山が成績があがれば、それを標準に全鉱区からうんと徴発金を収めさせることも出来るんだ
雲南守備兵
(新字新仮名)
/
木村荘十
(著)
それ故
一々
(
いちいち
)
名を記そうとは企てません。こういう気持こそは、もっと尊んでよいことではないでしょうか。実に多くの職人たちは、その名を
留
(
とど
)
めずにこの世を去ってゆきます。
手仕事の日本
(新字新仮名)
/
柳宗悦
(著)
一々
(
いちいち
)
比較して見た、眼の下はルツァーンの湖をそのままに覆う綿雲で、すぐ近くビュルゲンシュトック、右よりに、スタンザホルンとピラトゥス、その間に深く入りこんだ雲の海は
スウィス日記
(新字新仮名)
/
辻村伊助
(著)
一々
(
いちいち
)
の批評をして見た所で、その俳優に対する好き好きがあろうから無駄な事だが、私は過日帝国館で上場された改題「
空蝉
(
うつせみ
)
」の女主人公に扮したクララ・キンベル・ヤング嬢などは
活動写真
(新字新仮名)
/
淡島寒月
(著)
夢ながら
可恐
(
おそろし
)
くも、浅ましくも、悲くも、
可傷
(
いたまし
)
くも、
分
(
わ
)
く方無くて唯一図に切なかりしを、事もし一塲の夢にして
止
(
とどま
)
らざらんには、
抑
(
そもそ
)
も
如何
(
いかん
)
! 今や塩原の実景は
一々
(
いちいち
)
夢中の見るところ
金色夜叉
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
従兄弟同志は勤め始めてから一週間ばかりたった時、ツク/″\
然
(
そ
)
う感じた。店員の模範になるどころか、
一々
(
いちいち
)
係りの番頭から
手解
(
てほど
)
きをして貰わないと仕事が分らない。寛一君は一生懸命だった。
脱線息子
(新字新仮名)
/
佐々木邦
(著)
柄
(
がら
)
にもなくこんなことを
考
(
かんが
)
えて、
西蔵
(
チベット
)
に
棲
(
す
)
んでる
仲間
(
なかま
)
の
鴉
(
からす
)
を
一々
(
いちいち
)
たづねて
話
(
はな
)
したが、
皆
(
みんな
)
は
日頃
(
ひごろ
)
ラランの
悪知慧
(
わるぢえ
)
をよく
知
(
し
)
つてゐるので、
誰
(
だれ
)
も
一緒
(
いつしよ
)
に
飛
(
と
)
ばうとするものがなかつた。ラランは
不気嫌
(
ふきげん
)
だつた。
火を喰つた鴉
(新字旧仮名)
/
逸見猶吉
(著)
今は
一々
(
いちいち
)
記臆
(
きおく
)
に存していないのが
甚
(
はなは
)
だ遺憾である。
不吉の音と学士会院の鐘
(新字新仮名)
/
岩村透
(著)
おつかさまは
一々
(
いちいち
)
夜烏
(新字旧仮名)
/
平出修
(著)
それは領内の
窮民
(
きゅうみん
)
または
鰥寡
(
かんか
)
孤独の者で、その身がなにかの
痼疾
(
こしつ
)
あるひは
異病
(
いびょう
)
にかゝつて、容易に
平癒
(
へいゆ
)
の見込みの立たないものは、
一々
(
いちいち
)
申出ろといふのであつた。
梟娘の話
(新字旧仮名)
/
岡本綺堂
(著)
清吉は
一々
(
いちいち
)
姓を上げて、
小山
(
おやま
)
、清水、林などといって、やはり眼を両手で
擦
(
こす
)
って泣いている。
蝋人形
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
此処
(
ここ
)
から
中尊寺
(
ちゅうそんじ
)
へ行く道は、参詣の順をよくするために、新たに開いた道だそうで、傾いた
茅
(
かや
)
の屋根にも、
路傍
(
みちばた
)
の
地蔵尊
(
じぞうそん
)
にも、
一々
(
いちいち
)
由緒のあるのを、
車夫
(
わかいしゅ
)
に聞きながら、
金鶏山
(
きんけいざん
)
の
頂
(
いただき
)
七宝の柱
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
独逸
(
ドイツ
)
語ですって澄ましたものだ、それから今度は調子にのって、御前の言葉は文法が
異
(
ちが
)
う、こう云うんだろうなんて、
一々
(
いちいち
)
混ぜかえすと、
確
(
し
)
っかりした根柢はないんだから、散々考えて
スウィス日記
(新字新仮名)
/
辻村伊助
(著)
と社長は此方の言うことを
一々
(
いちいち
)
そのまゝ受け容れる人でない。
ガラマサどん
(新字新仮名)
/
佐々木邦
(著)
「いや、技術長のお説は
一々
(
いちいち
)
尤
(
もっと
)
もですよ」
雲南守備兵
(新字新仮名)
/
木村荘十
(著)
それから私は思う所あって、今自分が現にいる
室
(
へや
)
の
裡
(
うち
)
を隅から隅まで
一々
(
いちいち
)
検
(
しら
)
べて見た。
老婆
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
くはしく語りて
疑
(
うたがい
)
を解かむとおもふに、をさなき口の順序正しく語るを得むや、
根問
(
ねど
)
ひ、
葉問
(
はど
)
ひするに
一々
(
いちいち
)
説明
(
ときあ
)
かさむに、しかもわれあまりに疲れたり。うつつ心に何をかいひたる。
竜潭譚
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
ほとんどみな支那小説の影響を
蒙
(
こうむ
)
っていない物はないと言ってもよろしいくらいで、わたくしが
一々
(
いちいち
)
説明いたしませんでも、これはなんの
翻案
(
ほんあん
)
であるか、これはなんの
剽窃
(
ひょうせつ
)
であるかということは
中国怪奇小説集:02 開会の辞
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
先に運動場へ出て待っていた正三君は
一々
(
いちいち
)
吟味
(
ぎんみ
)
して
苦心の学友
(新字新仮名)
/
佐々木邦
(著)
と私達は
一々
(
いちいち
)
頷くばかりだった。
ガラマサどん
(新字新仮名)
/
佐々木邦
(著)
一
常用漢字
小1
部首:⼀
1画
々
3画
“一”で始まる語句
一
一人
一寸
一言
一時
一昨日
一日
一度
一所
一瞥