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えきゐん
跫音乱れて、スツ/\と
擦れつゝ、
響きつゝ、
駅員の
驚破事ありげな
顔が
二つ、
帽子の
堅い
廂を
籠めて、
園の
居る
窓をむづかしく
覗込むだ。
此が、
少なからず
茶の
外套氏を
驚かして、
渠をして
駅員に
急を
告げしめたものに
相違ない。
駅員の
一人は、
帽子とゝもに、
黒い
頸窪ばかりだが、
向ふに
居て、
此方に
横顔を
見せた
方は、
衣兜に
両手を
入れたなり、
目を
細め、
口を
開けた、
声はしないで、あゝ、
笑つてると
思ふのが
「もし、もし、もし……
駅員の
方、
駅の
方——
駅夫さん……」
が、いづれにも、
然も、
中にも
恐縮をしましたのは、
汽車の
厄に
逢つた一
人として、
驛員、
殊に
驛長さんの
御立會に
成つた
事でありました。
呼ぶと、
驛員が
駈けて
來た。まだ
宵ながら
靴の
音が
高く
響く。……
改札口に
人珍しげに
此方を
透かした
山家の
小兒の
乾栗のやうな
顏の
寂しさ。
實際、
彼は
驛員の
呼び
聲に、
疾く
此の
停車場の
名は
聞いて
心得たので。
空も
山も、
餘りの
色彩に、
我は
果して
何處にありや、と
自ら
疑つて
尋ねたのであつた。
車室から
降りたのは
自分一人だつた
彼に、
海拔二千
尺の
峰に
於けるプラツトフオームは、
恰も
雲の
上に
拵へた
白き
瑪瑙の
棧敷であるが
如く
思はれたから、
驛員に
對する
挨拶も