𢌞めぐ)” の例文
道に沿ふて高い石垣をきづき、其の上へ城のやうに白壁の塀を𢌞めぐらした家もあつた。邸風やしきふう忍返しのびがへしが棘々とげ/\長屋門ながやもんの横に突き出てゐた。
東光院 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
我はかの光の中に、他の多くの光、輪を成して𢌞めぐるを見たり、但し早さに優劣まさりおとりあるはその永劫えいごふの視力の如何によりてなるべし 一九—二一
神曲:03 天堂 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
少年が屋根へ登る家は小さな川のそばにあつて、黒塀が𢌞めぐつて居る。建物は古いけれども、何となく鷹揚おうやうな間取で、庭も廣い。
少年の死 (旧字旧仮名) / 木下杢太郎(著)
無慈悲な運命にもなみだはあろう。あるとも思われないような万が一の𢌞めぐり合わせということも世間にはある。頼むのは、ただそればかりだった。
親ごころ (新字新仮名) / ギ・ド・モーパッサン(著)
世話好せわずきなのが、二人ふたりつて、これかたはらかべけると、つばめでもがんでもなかつた。するところ樓臺亭館ろうだいていくわん重疊ちようでふとしてゆる𢌞めぐる、御殿造ごてんづくりの極彩色ごくさいしき
画の裡 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
ここに伊耶那岐の命詔りたまひしく、「然らばと、この天の御柱を行き𢌞めぐりあひて、美斗みと麻具波比まぐはひせむ
或ひは地を叩き、或ひは對者の竹を打ち、エイサツサ、エイサツサと景氣のいい掛聲をかけつつ、𢌞めぐ𢌞めぐつて踊る。
はい、私の良人やどが帰りませんから、尋ねて参りますのでございますが、仮令たとえおっと𢌞めぐり逢いましても、一人の娘を
塩原多助一代記 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
𢌞めぐる盃の數と共に、自分に話す言葉使ひの角がとれ、見合す眼の色の次第々々に打ち解けて行く、其れを感ずる心持こそ、戀の歡樂の最も甘い瞬間であらう。
歓楽 (旧字旧仮名) / 永井荷風永井壮吉(著)
「いや、さうぢやない、ジエィン。この世は達成の世界ではないのです。そんな風に考へを𢌞めぐらすのはよくない。また休息の世界でもない。なまけ者になつてはいけませんよ。」
アグレイアがゐなくなつた思ひ出の日も、あと數日で、𢌞めぐつて來る九月の初めである。
水車のある教会 (旧字旧仮名) / オー・ヘンリー(著)
カピ妻 にくや、かなしや、あさましや、うらめしや! やすもなう𢌞めぐなが年月としつきあひだにも、またと、こんななさけないがあらうかいの! たゞ一人ひとりの、可愛かはゆ一人ひとりの、大事だいじの/\祕藏兒ほんそごをば
大日輪の𢌞めぐる氣重き虚空こくう鞭うつて
海潮音 (旧字旧仮名) / 上田敏(著)
このほかすべての者の事を汝かくさだかにせんと思はゞ、わが言葉に續きつゝこの福なる花圈はなわにそひて汝の目を𢌞めぐらすべし 一〇〇—一〇二
神曲:03 天堂 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
そこでシホツチの神が「わたくしが今あなたのためにはかりごと𢌞めぐらしましよう」と言つて、隙間すきまの無い籠の小船を造つて、その船にお乘せ申し上げて教えて言うには
家を𢌞めぐる樹木のれた木の葉の面は一枚々々滴る雫と共に黄金こがねのやうに輝いてゐる。
歓楽 (旧字旧仮名) / 永井荷風永井壮吉(著)
当時いまばちあたつてういふ身分みぶん零落おちぶれ、俄盲目にはかめくらになりました、可愛想かあいさうなのは此子供このこぞうでございます、んにもぞんじませぬで、おや因果いんぐわが子に𢌞めぐりまして、此雪このゆきなか跣足はだしで歩きまして
尊きマッカベオの名とともに、我はいま一の光の𢌞めぐりつゝ進み出づるを見たり、しかして喜悦よろこびはかの獨樂こまの糸なりき 四〇—四二
神曲:03 天堂 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
「吾は日の神の御子として、日に向ひて戰ふことふさはず。かれ賤奴やつこが痛手を負ひつ。今よは行き𢌞めぐりて、日を背に負ひて撃たむ」と、ちぎりたまひて、南の方より𢌞り幸でます時に
鹽原も戸田侯の御供を致しまして国詰の身と相成りましたから、とんと沼田下新田の角右衞門方へ音信おとずれは打絶えましたが、再び実子多助に𢌞めぐり逢いますお話は、一息つきまして申し上げます。
塩原多助一代記 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
これらの輪未だ長く𢌞めぐらざるまに(かくいひて目を天にむく)、わがことばのなほよく説明ときあかす能はざるもの汝にあきらかなるにいたらむ 八八—九〇
神曲:02 浄火 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
旦那様わたくしは身不肖ふしょうにして、あだたるお國源次郎に𢌞めぐり逢わず、未だ本懐は遂げませんが、丁度旦那様の一周忌の御年囘に当りまする事ゆえ、此のたび江戸表へ立帰り、御法事御供養をいたした上
さてしばらく𢌞めぐりて後、このもの電光いなづまのごとく恐ろしく下り來りて我をとらへ、火にいたるまで昇るに似たりき 二八—三〇
神曲:02 浄火 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
しかして我等のこの處を𢌞めぐりて苦しみを新たにすることたゞ一たびにとゞまらず——われ苦しみといふ、まことになぐさめといはざるべからず 七〇—七二
神曲:02 浄火 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)