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鞴
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ふいご
ふりがな文庫
“
鞴
(
ふいご
)” の例文
仕事はしていないが
鞴
(
ふいご
)
の囲いには赤い火が燃えさかっていた。そして、一人の女房が焔に背を向けて
夜業
(
よなべ
)
に布を打っているのだった。
宮本武蔵:04 火の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
見てゐるうちに、久米氏の顔は真青になつた。額からは汗がたら/\と流れた。鼻は
鞴
(
ふいご
)
のやうに激しい息を吐いた。皆はうろたへ出した。
茶話:06 大正十一(一九二二)年
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
一本の竹でつくった縦の柄を握り、
鞴
(
ふいご
)
を使う時みたいに両手を左右に動かすと、蝶々の
翅
(
はね
)
に似た形の扇が開いたり閉じたりする。
日本その日その日:03 日本その日その日
(新字新仮名)
/
エドワード・シルヴェスター・モース
(著)
もとより異議のあろうはずはなく、仕掛から仕上げまで、大体三年と踏み、とりあえず久七が
鞴
(
ふいご
)
を一座つくることになった。
藤九郎の島
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
それ汝等の願ひの向ふ處にては、侶と
頒
(
わか
)
てば分減ずるがゆゑに、
嫉妬
(
ねたみ
)
鞴
(
ふいご
)
を動かして汝等に
大息
(
といき
)
をつかしむれども 四九—五一
神曲:02 浄火
(旧字旧仮名)
/
アリギエリ・ダンテ
(著)
▼ もっと見る
犢
(
こうし
)
の冷肉を一皿とクワス一本を
平
(
たい
)
らげてから、広大無辺な我がロシア帝国の地方によっては、よく言い草にされている、
謂
(
いわ
)
ゆる『
鞴
(
ふいご
)
のような
大鼾
(
おおいびき
)
』
死せる魂:01 または チチコフの遍歴 第一部 第一分冊
(新字新仮名)
/
ニコライ・ゴーゴリ
(著)
商人は一声叫ぶなり坂を
四谷
(
よつや
)
の方へ逃げあがった。あがったところに
夜鷹蕎麦
(
よたかそば
)
の灯があった。商人は
鞴
(
ふいご
)
のような
呼吸
(
いき
)
と同時にその屋台へ飛びこんだ。
狢
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
痛風の小さな老人は
鞴
(
ふいご
)
みたいにぷつぷつ言った。包屍布を着ている女は例の鼻をぶらぶら動かした。木綿のズボンをはいている紳士は耳をぴくぴくさせた。
ペスト王:寓意を含める物語
(新字新仮名)
/
エドガー・アラン・ポー
(著)
案の定一見
鍛冶
(
かじ
)
屋のごとく、時計師の仕事場のごとく、無数の
錺
(
かざり
)
職の道具、
鞴
(
ふいご
)
、小型の電気炉等々、夫人の居間鏡台の陰に作られた、ドラーゲ公爵家同様
グリュックスブルグ王室異聞
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
煤
(
すす
)
だらけの化け物が茶色の紙の帽子をかぶって、
鞴
(
ふいご
)
のところでせっせと働いていたが、それもちょっと取っ手にもたれ、
喘息
(
ぜんそく
)
病みの器械は長い
溜
(
た
)
め息をつく。
駅馬車
(新字新仮名)
/
ワシントン・アーヴィング
(著)
一方の隅は
鍛冶場
(
かじば
)
になっていて、巨大な
漏斗
(
じょうご
)
をさかさまにしたような通気屋根の下にコークスの充満した炉の口が開き、奇妙な形の足踏み
鞴
(
ふいご
)
が横わっている。
偉大なる夢
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
それでも金床や
鞴
(
ふいご
)
や大小の
鑢
(
やすり
)
や
鏨
(
たがね
)
やがいろ/\の材料と共に配置され、未完成の大きい
櫓
(
やぐら
)
時計が三つと、置時計の修繕物が三つ、部屋の隅に片寄せてあるのです。
銭形平次捕物控:184 御時計師
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
その傍でぼんやりと
鞴
(
ふいご
)
を吹かせている小僧は、この間ひどい目に遭った権太郎だと家主が教えてくれた。
半七捕物帳:06 半鐘の怪
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
すると其の鍛冶屋は、外で火をつけて、地面の上で
鞴
(
ふいご
)
を動かし始めました。そして、大きな鉄のさじの中で其のランプを熔かして、それに少しばかり錫を加へました。
科学の不思議
(新字旧仮名)
/
ジャン・アンリ・ファーブル
(著)
佐渡は従来、
狐
(
きつね
)
も
狸
(
たぬき
)
も一頭もおらぬ。ただ鉱山があるので、昔は
鞴
(
ふいご
)
に貉の皮を用うるために、わざわざ内地より貉をつれて来たり、これを山林に放ちて繁殖せしめた。
迷信と宗教
(新字新仮名)
/
井上円了
(著)
到るところで錬金術師は
鞴
(
ふいご
)
を吹いたりレトルトを
炙
(
あぶ
)
ったりしましたが、
遂
(
つい
)
に成功しませんでした。
科学が臍を曲げた話
(新字新仮名)
/
海野十三
、
丘丘十郎
(著)
真向
(
まむ
)
かいの
鍛冶
(
かじ
)
場で
蹄鉄
(
ていてつ
)
を鍛える音、
鉄砧
(
かなしき
)
の上に落ちる
金槌
(
かなづち
)
のとんちんかんな踊り、
鞴
(
ふいご
)
のふうふういう息使い、
蹄
(
ひづめ
)
の焼かれる
匂
(
にお
)
い、水辺にうずくまってる
洗濯
(
せんたく
)
女の
杵
(
きね
)
音
ジャン・クリストフ:08 第六巻 アントアネット
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
呼吸する
鞴
(
ふいご
)
であつたか? 真に事実が、如何に一層悲痛ではなかつたか? この時、獅子の脳漿よりしてさへ、かの一羽の蝶はまた、再び夙やく天の一方に飛翔し去る時!
測量船
(新字旧仮名)
/
三好達治
(著)
「蹈鞴」とはその字の示すごとく、
鞴
(
ふいご
)
による送風装置が、特殊な形をした炉の両側についてゐるので、木炭をつかつて低温直接製鉄法によつて玉鋼をつくるのださうである。
出雲鉄と安来節
(新字旧仮名)
/
田畑修一郎
(著)
そのふっさりとしたる間へ
火口
(
ほくち
)
に似た木の葉で拵えたものを入れてそれから日本の昔の流儀で
燧火石
(
ひうちいし
)
を打って火を移すのです。そうして皮の
鞴
(
ふいご
)
でぼつぼつと風を送るんです。
チベット旅行記
(新字新仮名)
/
河口慧海
(著)
父親は煙管をくわへながら
鞴
(
ふいご
)
をあをいでゐた。薄暗い土間に焔がゆらぎはじめた。
南風譜
(新字旧仮名)
/
牧野信一
(著)
ブーブーと
鞴
(
ふいご
)
でコークスの火を燃やして、その中で真赤にした鉄を
鉄床
(
かなとこ
)
の中に
鋏
(
はさみ
)
で
挟
(
はさ
)
んで置いて、二人の男がトッテンカンと
交
(
かわ
)
る
交
(
がわ
)
る
鉄鎚
(
てっつい
)
で叩いていた。叩く度にパッパッと火花が散った。
贋紙幣事件
(新字新仮名)
/
甲賀三郎
(著)
仕事場の
鞴
(
ふいご
)
の
囲
(
まわ
)
りには三人の男が働いていた。
鉄砧
(
かなしき
)
にあたる
鉄槌
(
かなづち
)
の音が高く響くと疲れ果てた彼れの馬さえが耳を立てなおした。彼れはこの店先きに自分の馬を引張って来る時の事を思った。
カインの末裔
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
極めて原始的な
玉鋼
(
たまはがね
)
と称する荒がねを小さな
鞴
(
ふいご
)
で焼いては鍛え、焼いては鍛え、幾十遍も折り重ねて鍛え上げた鋼を刃に用いたもので、研ぎ上げて見ると、普通のもののように、ぴかぴかとか
小刀の味
(新字新仮名)
/
高村光太郎
(著)
けれど疾走して來た後なので、胸一ぱい口から肺へ空氣を吸ひ込まうとすると、彼は、右胸部の傷口から、破れた
鞴
(
ふいご
)
を思はせるやうな、怖ろしい、微かな音を立てて、その空氣のはいるのを感じた。
氷島の漁夫:01 氷島の漁夫
(旧字旧仮名)
/
ピエール・ロティ
(著)
すべての
鞴
(
ふいご
)
一齊に熔爐二十の上に吹き、 470
イーリアス:03 イーリアス
(旧字旧仮名)
/
ホーマー
(著)
真雄は、
鞴
(
ふいご
)
の前へ馳け寄って、どっかと、
筵
(
むしろ
)
の上に坐ると、
金火箸
(
かなひばし
)
を
把
(
と
)
って、真っ赤な溶鉄となった玉鋼を、
火土
(
ほど
)
の中から引き出した。
山浦清麿
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
吉之丞は、もうだめだと思い、無我夢中で壺をかいぐりとり、水を
蹴
(
け
)
って浮きあがると、
鞴
(
ふいご
)
のような音をたてて息を吸った。
呂宋の壺
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
火をおこす時には
鞴
(
ふいご
)
の役をする。日本人はスープが熱いと扇でさます。舞い姫は優美な姿勢でいろいろに扇を使う。
日本その日その日:03 日本その日その日
(新字新仮名)
/
エドワード・シルヴェスター・モース
(著)
だが困つた事には
身体
(
からだ
)
が牛のやうに肥えてゐるので、お説教が
興奮
(
はづ
)
むと、
鞴
(
ふいご
)
のやうな苦しさうな息遣ひをする。
茶話:03 大正六(一九一七)年
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
その一例は
羽前
(
うぜん
)
の庄内の町にて、毎夜深更になると狸の
腹鼓
(
はらつづみ
)
の音がするとて、騒ぎ立てしことがあるに、よくよくただしてみれば、
鍛冶
(
かじ
)
屋の
鞴
(
ふいご
)
の音であったということじゃ。
迷信解
(新字新仮名)
/
井上円了
(著)
寝床の中で彼の身体は、布片のようにぐったり
放
(
ほう
)
り出されていた。身動きもできないほどだった。ただその胸だけが、
鞴
(
ふいご
)
のようにあえいでいた。頭は重苦しくて熱ばんでいた。
ジャン・クリストフ:06 第四巻 反抗
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
天井も床下も、座布團の中も、
鞴
(
ふいご
)
の中も、少しの手落ちもなくといふ註文です。
銭形平次捕物控:184 御時計師
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
夫人は蒼白な顔をして荒々しい呼吸に全身を
鞴
(
ふいご
)
のようにはずませていた。
十八時の音楽浴
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
我、今行きて諸の器具を
鞴
(
ふいご
)
を收むべし。
イーリアス:03 イーリアス
(旧字旧仮名)
/
ホーマー
(著)
そこで彼は、持て余すまい、よく生かそうと、自己の天性を自己の努力で
錬冶
(
れんや
)
している。
鞴
(
ふいご
)
の火みたいな熱意を不断にそれへかけている。
新書太閤記:03 第三分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
日ごろ、あまり物事に動じないその加十が、額際にビッショリと冷汗をかき、何やらひどく切迫した面持で
鞴
(
ふいご
)
のような激しい息遣いをしている。
魔都
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
これなん狸の腹鼓である、その正体を見届けんものと思い、その方角をたどって静かに歩み行くに、行けば行くほど遠くなる。だんだん近づいて見れば、
鍛冶屋
(
かじや
)
の
鞴
(
ふいご
)
の音であった。
おばけの正体
(新字新仮名)
/
井上円了
(著)
鞴
(
ふいご
)
は長い四角な箱で、その内にある四角い
喞子
(
ピストン
)
を桿と柄とによって動かす。鍛冶屋は左足で柄をつかみ、その脚を前後に動かして鞴に風を吹き込むから、両手で鉄槌を使うことが出来る。
日本その日その日:03 日本その日その日
(新字新仮名)
/
エドワード・シルヴェスター・モース
(著)
「
鞴
(
ふいご
)
を使つて、羽目板を後ろにして居たんだ。どうしてその背中を突いた」
銭形平次捕物控:318 敵の娘
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
猛火に
鞴
(
ふいご
)
さしむけて其働きを初めしむ。
イーリアス:03 イーリアス
(旧字旧仮名)
/
ホーマー
(著)
そのうちに庄次郎は、肩から両腕、棒のような
凝結
(
こり
)
に、刀の重さがこたえて来るし、口は
鞴
(
ふいご
)
みたいに渇いた
呼吸
(
いき
)
を大きくする。
松のや露八
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
今まで椅子の中に沈み込んで
鞴
(
ふいご
)
のような息づかいをしていた外務大臣は、跳ねッ返るように椅子から立ち上り、ネクタイを引きむしってそれをテーブルの上に叩きつけ
魔都
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
山と睨めッこしている間は忘れていたが、ふとわれに返ると、彼はまた鍛冶の
鞴
(
ふいご
)
の中に突ッこんでいるような足を持てあまし
宮本武蔵:04 火の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
威勢よく燃えあがった松薪の炎が、
鞴
(
ふいご
)
のような音をたてて吸いあげられていく。
肌色の月
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
と梅軒は思い出したように、仕事場の土間にまだ草鞋も解かず、
鞴
(
ふいご
)
の火にあたっている武蔵を見て、女房にいいつけた。
宮本武蔵:04 火の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
十人の吹所棟梁が吹屋をひとつずつあずかり、薄ぐらい大
鞴
(
ふいご
)
仕立ての炉のそばで棟梁手伝いのさしずで、大勢の職人が褌ひとつになって、金をのばしたり打ちぬいたり、いそがしそうに働いている。
顎十郎捕物帳:07 紙凧
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
鍛冶、染物、
皮革
(
ひかく
)
などの職人のみが多く住んでいる裏町の一
劃
(
かく
)
は、
鞴
(
ふいご
)
の赤い火や、
鎚
(
つち
)
の音や、働くものの
喚
(
わめ
)
きなどで、夜も日もあったものではない。
黒田如水
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
と、破れた
鞴
(
ふいご
)
のような声を出す。
魔都
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
その間に、邸内の物置小屋を、少しばかり改築して、
鞴
(
ふいご
)
をすえ、
火土
(
ほど
)
を築き、鍛冶道具も窪田清音が備えてくれた。
山浦清麿
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
“鞴”の解説
鞴(ふいご、en: bellow)は、気密な空間の体積を変化させることによって空気の流れを生み出す器具。金属の加工、精錬などで高温が必要となる場合に、燃焼を促進する目的で使われる道具を指す。街の鍛冶屋で使われるような小型のものもあれば、たたら製鉄などで使われる足踏み式の蹈鞴(たたら)もある。
(出典:Wikipedia)
鞴
漢検1級
部首:⾰
19画
“鞴”を含む語句
地鞴
地鞴踏
蹈鞴
地蹈鞴
鞴祭
吹鞴
踏鞴
地踏鞴
東蹈鞴
肺鞴
鑢鞴戸
鞴場
鞴子