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かんじゃく
ふりがな文庫
“
閑寂
(
かんじゃく
)” の例文
言
(
い
)
うが
早
(
はや
)
いか、お
爺
(
じい
)
さんの
白衣
(
びゃくい
)
の
姿
(
すがた
)
はぷいと
烟
(
けむり
)
のように
消
(
き
)
えて、
私
(
わたくし
)
はただひとりポッネンと、この
閑寂
(
かんじゃく
)
な
景色
(
けしき
)
の
中
(
なか
)
に
取
(
と
)
り
残
(
のこ
)
されました。
小桜姫物語:03 小桜姫物語
(新字新仮名)
/
浅野和三郎
(著)
あのにぎやかな「ええじゃないか」の卑俗と
滑稽
(
こっけい
)
とに比べたら、まったくこれは行ないすました
閑寂
(
かんじゃく
)
の別天地から来る、遠い世界の音だ。
夜明け前:02 第一部下
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
その前をちょっと素通りしただけでも、冬なんぞの
閑寂
(
かんじゃく
)
さとは打って変って、何か
呼吸
(
いき
)
づまりそうなまでに緊張した思いのされる程だった。
木の十字架
(新字新仮名)
/
堀辰雄
(著)
冬近い
閑寂
(
かんじゃく
)
な日、栄三郎は、千住竹の塚、孫七の家の二階にすわって、ながいこと無心に夜泣きの脇差を抜いて見入っている。
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
しかしヘルンが仕事をしている時は、家人が皆神経質に注意しているので、家中がひッそりとして
閑寂
(
かんじゃく
)
に静まり返っていた。
小泉八雲の家庭生活:室生犀星と佐藤春夫の二詩友を偲びつつ
(新字新仮名)
/
萩原朔太郎
(著)
▼ もっと見る
何処からくるのか、その時刻になると気のせいか若葉まで静まって、長い裏町に子供のかげすらないほど
閑寂
(
かんじゃく
)
としていた。
蛾
(新字新仮名)
/
室生犀星
(著)
一叢
(
ひとむら
)
の
幽翠
(
ゆうすい
)
につつまれて
閑寂
(
かんじゃく
)
な
庫裡
(
くり
)
や本堂が見える。秀吉は山門に駒をすて、近侍たちとともにぞろぞろと入って行った。
新書太閤記:05 第五分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
うすをもるる豆の音がちょうどあられのようにいかめしい中に、うすのすれる音はいかにも
閑寂
(
かんじゃく
)
である、店の奥には母が一生懸命に着物を
縫
(
ぬ
)
うている。
ああ玉杯に花うけて
(新字新仮名)
/
佐藤紅緑
(著)
しかも他の部分の静粛なありさまを
反思
(
はんし
)
せしむるに足るほどに
靡
(
なび
)
いたなら——その時が一番
閑寂
(
かんじゃく
)
の感を与える者だ。
趣味の遺伝
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
しかも
平井橋
(
ひらいばし
)
から
上
(
かみ
)
の、
奥戸
(
おくど
)
、
立石
(
たていし
)
なんどというあたりは、まことに
閑寂
(
かんじゃく
)
なもので、水ただ
緩
(
ゆる
)
やかに流れ、雲ただ静かに
屯
(
たむろ
)
しているのみで、
黄茅白蘆
(
こうぼうはくろ
)
の
洲渚
(
しゅうしょ
)
蘆声
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
人間としての権利も不当不条理に
剥奪
(
はくだつ
)
され、かつて前例のないほどの道化た待遇を受けながら、悶えもせず、
嗟嘆
(
さたん
)
もせず、見るからに
閑寂
(
かんじゃく
)
な生活を送っています。
ハムレット
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
低い砂丘のその松原は予想外に
閑寂
(
かんじゃく
)
であった。松ヶ根の
萩
(
はぎ
)
むら、
孟宗
(
もうそう
)
の影の映った
萱家
(
かやや
)
の黄いろい荒壁、
機
(
はた
)
の音、いかにも
昔噺
(
むかしばなし
)
の中の
鄙
(
ひな
)
びた村の日ざかりであった。
木曾川
(新字新仮名)
/
北原白秋
(著)
この室はいとど
閑寂
(
かんじゃく
)
ですが、二三間を隔てた、あとの二人連れのさむらいの部屋では、カラカラと高笑いがしたり、話に興が乗ったり、
罵
(
ののし
)
ったり、
噪
(
さわ
)
いだり、あざけったり
大菩薩峠:27 鈴慕の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
同時にまた滑稽でも洒落でもなく、かかる
閑寂
(
かんじゃく
)
の趣こそ俳句の生命であるべきを悟った。
俳句はかく解しかく味う
(新字新仮名)
/
高浜虚子
(著)
雨と雪と月光とまた爛々たる
星斗
(
せいと
)
の光によりて
唯
(
ただ
)
さへ淋しき夜景に一層の
閑寂
(
かんじゃく
)
を添へしむるは広重の最も得意とする処なり。北斎の山水中に見出さるる人物は皆
孜々
(
しし
)
として労役す。
江戸芸術論
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
かの女はそんな空想や
逡巡
(
しゅんじゅん
)
の中に閉じこもって居る
為
(
ため
)
に、かの女に近い外界からだんだんだん遠ざかってしまった。かの女は
閑寂
(
かんじゃく
)
な山中のような生活を都会のなかに送って居るのだ。
かの女の朝
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
音無川
(
おとなしがわ
)
を——
現今
(
いま
)
では汚れた溝川になっているが——前にした、静かな往来にむかって、百姓
家
(
や
)
の角に、竹で網んだ
片折戸
(
かたおりど
)
をもった、粗末ではあるが
閑寂
(
かんじゃく
)
な小屋に、湯川氏のおばあさんが
旧聞日本橋:12 チンコッきり
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
気が次第に落着いて来て、始めてあたりの
閑寂
(
かんじゃく
)
な空気に気がついた。
火葬国風景
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
といふ句を見て、作者の理想は
閑寂
(
かんじゃく
)
を現はすにあらんか、禅学上悟道の句ならんか、あるいはその他
何処
(
いずく
)
にかあらんなどと
穿鑿
(
せんさく
)
する人あれども、それはただそのままの理想も何もなき句と見るべし。
俳諧大要
(新字旧仮名)
/
正岡子規
(著)
というような
閑寂
(
かんじゃく
)
な世界もある。
古句を観る
(新字新仮名)
/
柴田宵曲
(著)
しかしながら芭蕉は、趣味としての若さを嫌った。
西行
(
さいぎょう
)
を好み、
閑寂
(
かんじゃく
)
の静かさを求め、枯淡のさびを愛した芭蕉は、心境の自然として、常に「
老
(
ろう
)
」の静的な美を慕った。
郷愁の詩人 与謝蕪村
(新字新仮名)
/
萩原朔太郎
(著)
近ごろ、武人の間に、茶は非常な流行をみせていたが、公卿仲間では、晴季はじめ、とんと、こういう“
佗
(
わ
)
び”とか、“
閑寂
(
かんじゃく
)
”とかいうものに、興味をもっている者はない。
新書太閤記:11 第十一分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
ちらとまたその隙間から白いひらひらが見えたかと思うと、また老樹の
樫
(
かし
)
や
楓
(
かえで
)
の
鬱蒼
(
うっそう
)
たる枝の繁みに遮られてしまう。と、それっきりで、八月八日は午前十一時の
閑寂
(
かんじゃく
)
なせみ
時雨
(
しぐれ
)
になる。
木曾川
(新字新仮名)
/
北原白秋
(著)
善も投げ悪も投げ、
父母
(
ちちはは
)
の生れない先の姿も投げ、いっさいを
放下
(
ほうげ
)
し尽してしまったのです。それからある
閑寂
(
かんじゃく
)
な所を選んで小さな
庵
(
いおり
)
を建てる気になりました。彼はそこにある草を
芟
(
か
)
りました。
行人
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
雨あがりの
大路
(
おおじ
)
の黒い土は、
胡粉
(
ごふん
)
をこぼしたように白い
斑
(
ふ
)
で描かれている。キリ、キリ、とさびしい
軌
(
わだち
)
の音が、
粟田口
(
あわたぐち
)
あたりの
閑寂
(
かんじゃく
)
な土塀や竹垣、生垣の
桜花
(
はな
)
の下蔭を通ってゆく——
親鸞
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
前と同様、南国風景の一であり、
閑寂
(
かんじゃく
)
とした漁村の
白昼
(
まひる
)
時を思わせる。
郷愁の詩人 与謝蕪村
(新字新仮名)
/
萩原朔太郎
(著)
広くはないが、配所とも見えぬほど
閑寂
(
かんじゃく
)
な幾室かがある、短い二
間
(
けん
)
ほどの橋
廊架
(
ろうか
)
を越えると、そこには何か非凡人のいるものの気配が尊く感じられて、三郎盛綱は、いわれぬうちから
親鸞
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
山の手の
四谷
(
よつや
)
の一
劃
(
かく
)
は、屋敷町の
閑寂
(
かんじゃく
)
な木立に、蝉しぐれが
啼
(
な
)
きぬいていた。
山浦清麿
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
それゆえ、秋の
日和
(
ひより
)
だというのに、にわとりも鳴かず、
杵
(
きね
)
の
音
(
おと
)
もせず、あわれにも
閑寂
(
かんじゃく
)
をきわめている。いま聞こえたへたくそな歌も、一つはこのせいで、いっそう、
素
(
す
)
ッ
頓狂
(
とんきょう
)
にもひびいてきこえる。
神州天馬侠
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
“閑寂”の意味
《名詞》
物寂しく、ひっそりしているさま。
(出典:Wiktionary)
閑
常用漢字
中学
部首:⾨
12画
寂
常用漢字
中学
部首:⼧
11画
“閑寂”で始まる語句
閑寂間