長生ながいき)” の例文
白雪 ええ、うるさいな、お前たち。義理も仁義も心得て、長生ながいきしたくば勝手におし。……生命いのちのために恋は棄てない。お退き、お退き。
夜叉ヶ池 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
さ「はい、業平橋と云う所は妙見様みょうけんさまく時通りましたが、あゝ云う処へお住いなすっては長生ながいきをいたしますよ、彼処あすこがお下屋敷しもやしきで」
業平文治漂流奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
多くの場合、女は男よりも長生ながいきをするものだが、来世で皺くちやな女の顔を見るのは、男にとつて胃の薬を飲むよりもつらいものだ。
丁 さう彼方此方あッちこッちることは出來できんわ。(一同に對ひ)ささ、はたらいたはたらいた。暫時ちっとのまぢゃ、はたらいた/\。さうして長生ながいきすりゃ持丸長者もちまるちゃうじゃぢゃ。
もう少し長生ながいきをしていたら、トテモ信長公が天下を取るわけにはゆかぬ、信長公が世に出なければ太閤というものも世に出るわけにはゆかぬ
と婆さん鶏は、しんみりとした声でいひましたので、雄鶏もちよつと可哀さうに思ひました、しかしそのくせ婆さん鶏は、長生ながいきをいたしました。
小熊秀雄全集-14:童話集 (新字旧仮名) / 小熊秀雄(著)
その一人はニコニコ王様の長生ながいきの乞食の白髪小僧で、今一人はこの国の総理大臣の美留楼みるろう公爵の末娘美留女姫みるめひめである。
白髪小僧 (新字新仮名) / 夢野久作杉山萠円(著)
国朝六家詩鈔こくちょうりくかししょうの初にある沈徳潜しんとくせんの序には、乾隆丁亥夏五けんりゅうていがいかご長洲ちょうしゅう沈徳潜しんとくせんしょす時に年九十有五。とわざわざ断ってある。長生ながいきの結構な事は云うまでもない。
思い出す事など (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「無気力なやつだ。無性者ぶしょうものだ。お前はたしかに長生ながいきするだろうよ。全くあきれて物がいえないとは、お前のことだ」
二、〇〇〇年戦争 (新字新仮名) / 海野十三(著)
五 子規しき自身の小説にはほとんど見るに足るものなし。然れども子規を長生ながいきせしめ、更に小説を作らしめん伊藤左千夫いとうさちを長塚節等ながつかたかしらの諸家の下風かふうに立つものにあらず。
病中雑記 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
「ねえ、荒川さん、斯うなったら一日でも長生ながいきをして恩給を余計取ってやることですよ」
親鳥子鳥 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
生活の簡単な世の中では、長生ながいきをする事が一番の幸福でありますから、祝言には普通に長寿の事を云う。そこで我が国では長生ながいき、すなわち「寿じゅ」のことを「ことぶき」と云います。
お前になるたけ長生ながいきをさせたい、末長く楽に暮させたいと思っているのだと誓って遣ろう。どうぞ己のそばにだけいてくれ、己の寝床の側を離れてくれるな、一人で死なせてくれるなと頼もう。
みれん (新字新仮名) / アルツール・シュニッツレル(著)
一老夫いちらうふこゝに来り主人を拱手てをさげて礼をなし後園うらのかたへ行んとせしを、あるじよびとめらう夫をゆびさしていふやう、此叟父おやぢ壮年時わかきとき熊に助られたる人也、あやふいのちをたすかり今年八十二まですこやか長生ながいきするは可賀めでたき老人也
とにかくまだまだ歌は長生ながいきすると思うのか。
長生ながいきをするためにさ。」
旧聞日本橋:08 木魚の顔 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
だが、高木氏の考へは少しまづかつた。そんな事を教へて今の紳士達がすつかり達者になつて、長生ながいきでもしたらうするつもりだらう。
はばかんながらこう見えても、余所行よそゆきの情婦いろがあるぜ。待合まちええへ来て見繕いでこしれえるような、べらぼうな長生ながいきをするもんかい。
婦系図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
生命いのちの親様の名前を忘れるなんて、言語道断だと仰有おっしゃるのですか……ト……飛んでもない。アンナ奴が生命いのちの親様なら、猫イラズは長生ながいきの妙薬でしょう。
キチガイ地獄 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
山楽は山楽でなければならないはずのものだ——永徳は早死はやじにをしたが、山楽は長生ながいきをした、およそ長生すれば恥多しということを、沁々しみじみと体験したもの山楽の如きはあるまい。
大菩薩峠:31 勿来の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
長生ながいき工夫くふうのための列仙伝が、長生もしかねまじきほど悠長ゆうちょうな心のもとに、病後の余からかく気楽に取扱われたのは、余に取って全くの偶然であり、また再びきたるまじき奇縁である。
思い出す事など (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
待っていてくれちゃ困るけれど、理窟は先ず斯うしたものさ。一に辛抱、二に長生ながいき。自分が死んでしまったんじゃお話にならない。すべからく大いに加餐かさんして、出世の資格を拵えるんだね
ガラマサどん (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
「これほど意見しても肯かぬ気性の其方そちく/\は親の首へ縄を掛けるに相違ない、長生ながいきして死恥しにはじを掻こうよりいっそのこと食事を絶って死ぬに越したことはない」と涙を流しての切諫せっかん
後の業平文治 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
かように年を取りますと、よくも、得も、はは、覚えませぬ。ただもう、長生ながいきがしとうござりましてのう。
天守物語 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
人間は長生ながいきしようと思へば、何よりも先に自分の産れ故郷にとゞまらなければならない。
そうして今の話で、この間赤い鸚鵡が云った一番長生ながいきの白髪頭の奇妙な姿をした老人というのはお爺さんでもお婆さんでも何でもなく、この白髪小僧の事に違いないことがわかった。
白髪小僧 (新字新仮名) / 夢野久作杉山萠円(著)
「好いだろう。第一空気が違う。斯ういうところに住んでいると、長生ながいきをするよ」
好人物 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
わたくしは殿様の側に何時いつまでも附いていて、殿様が長生ながいきをなすって、貴方あなたほかへ御養子にでも入らっしゃれば、お目にかゝる事は出来ません、其の上綺麗な奥様でもお持ちなさろうものなら
「君は一生旅烏たびがらすかと思ってたら、いつのにか舞い戻ったね。長生ながいきはしたいもんだな。どんな僥倖ぎょうこうめぐり合わんとも限らんからね」と迷亭は鈴木君に対しても主人に対するごとくごうも遠慮と云う事を
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
成る程この街で、一番珍しい奇妙な風体なりをしている、一番長生ながいきの白髪頭の老人を見付け出して、その人の身の上話しを聞かしてもらえば、屹度きっと面白い新規の話を聞く事が出来るに違いない。
白髪小僧 (新字新仮名) / 夢野久作杉山萠円(著)
くれ/″\も用心して猟人かりゅうどや無法者に出会わぬよう、無事で達者で長生ながいきしてくれよ、思えば/\、人間を助けるほどの情深きお前をば、何故なぜ天は人にしなんだか、世はさま/″\とは申しながら
後の業平文治 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
「毎日八時間死んで長生ながいきをしよってのは料簡りょうけんが分らない」
ガラマサどん (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
「もう少し長生ながいきをしたいって言っていますわ」
凡人伝 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
百「長生ながいきすれアかんばいじゃアないか」
敵討札所の霊験 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
滅多に長生ながいきする者はございませぬ。
後の業平文治 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
斯ういうのは長生ながいきが出来る。
勝ち運負け運 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
「君は長生ながいきをするよ」
凡人伝 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)