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遺
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わす
ふりがな文庫
“
遺
(
わす
)” の例文
てつせんは、詩にも歌にも
遺
(
わす
)
れられて、物のもやうにのみ用ゐらるゝものなるが、詩歌に採らるべきおもむき無きものにはあらじ。
花のいろ/\
(新字旧仮名)
/
幸田露伴
(著)
彼は死に
抵
(
いた
)
るまで、その父母を
遺
(
わす
)
るる
能
(
あた
)
わざりしなり。否、死するに際して、第一彼れの念頭に
上
(
のぼ
)
りし者は、その父母にてありしなり。
吉田松陰
(新字新仮名)
/
徳富蘇峰
(著)
師曰く
卿
(
けい
)
の志願妙なり必ずわれに先だちて得道すべし、得道せばわれを
遺
(
わす
)
るるなかれと、師と五百道士と涕泣して太子を送り崖頭に至れば
十二支考:01 虎に関する史話と伝説民俗
(新字新仮名)
/
南方熊楠
(著)
われは歸るさに
故意
(
わざ
)
と手帳を
遺
(
わす
)
れ置きぬ。そは日暮れて再び往かん爲めなり。
原
(
も
)
と女といふものは、只二人居向ひては
頑
(
かたくな
)
ならぬが多し。さて我は再び往きぬ。
即興詩人
(旧字旧仮名)
/
ハンス・クリスチャン・アンデルセン
(著)
闘ふこと
愈
(
いよ/\
)
多くして愈激奮し、その最後に全く疲廃して万事を
遺
(
わす
)
る、この時こそ、悪より善に転じ、善より悪に転ずるなれ、この疲廃して昏睡するが如き間に。
心機妙変を論ず
(新字旧仮名)
/
北村透谷
(著)
▼ もっと見る
慾深き人の心と降る雪は積るにつけて道を
遺
(
わす
)
るゝと云う、慾の世の中、慾の為には夫婦の
間中
(
あいなか
)
も道を違えます
人心
(
ひとごゝろ
)
で、其の中にも
亦
(
また
)
強慾
(
ごうよく
)
と云うのがございます。
業平文治漂流奇談
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
しかし卒業して間もない花房が、まだ頭にそっくり持っていた、内科各論の中の破傷風の徴候が、何一つ
遺
(
わす
)
れられずに、印刷したように目前に現れていたのである。
カズイスチカ
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
たとい母のことについて悪い
風聞
(
ふうぶん
)
があったとしても、そんなことを記す訳はないが、こゝでは暫く彼の日記を信用して、母は左大臣の
遺
(
わす
)
れ
形見
(
がたみ
)
の敦忠の成長を楽しみに
少将滋幹の母
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
世にはこれよりも更に
大
(
だい
)
なる悪、大なる罪を犯しながら白昼大手を振りて、
大道
(
だいどう
)
を
濶歩
(
かっぽ
)
する者も多かるに、
大
(
だい
)
を
遺
(
わす
)
れて
小
(
しょう
)
を拾う、何たる片手落ちの処置ぞやなど感ぜし事も
数〻
(
しばしば
)
なりき。
妾の半生涯
(新字新仮名)
/
福田英子
(著)
今や時勢滔々奢侈に流れ、人心華美を
衒
(
てら
)
ふ。ここにおいてか天下の士、気節の貴ぶべきを
遺
(
わす
)
れて、黄金光暉の下に拝趨す。それ黄金は士気を麻痺するの劇薬、名節を変換するの熔爐なり。
誰が罪
(新字旧仮名)
/
清水紫琴
(著)
夫
(
それ
)
は
爾
(
そう
)
だけどが書物で読むのと実際とは少し違うからナア小説などに在る曲者は足痕が残ッて居るとか兇器を
遺
(
わす
)
れて置くとか必ず三ツ四ツは手掛りを
存
(
のこ
)
して有るけどが是ばかりは
爾
(
そう
)
で無い
無惨
(新字新仮名)
/
黒岩涙香
(著)
いやしくも駿河大納言の
遺
(
わす
)
れ形見とあつては、うつかりした手入れも出來ず、寺社奉行のお係も、調べに手間取つて翌る日になると、二人目の犧牲者、井筒屋豊三郎も口を封じられてしまひ
銭形平次捕物控:283 からくり屋敷
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
放肆なるはそが
態
(
すがた
)
なりと、然して歓楽そが被衣たるを
遺
(
わす
)
る可からず、或は心神恍惚たり、或は衷に道念寤めて懊悩苦悶あり、情緒揺曳して悲愁暗涙あり、詩のこゝに出でゝ共に可ならざるはなし。
抒情詩に就て
(新字旧仮名)
/
蒲原有明
(著)
然して威令の行わるる所、既に前に
瞻
(
み
)
て後に仰ぎ、聡明の及ぶ所、反って小を察して大を
遺
(
わす
)
る。貧者は獄に入りて
殃
(
わざわい
)
を受け、富者は経を転じて罪を免る、
惟
(
これ
)
傷弓
(
しょうきゅう
)
の鳥を取り、
毎
(
つね
)
に
呑舟
(
どんしゅう
)
の魚を漏す。
令狐生冥夢録
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
有明月の
遺
(
わす
)
れもの 手匣の祕密
山果集
(旧字旧仮名)
/
三好達治
(著)
遺
(
わす
)
れし妻を戀ふれども
花守
(旧字旧仮名)
/
横瀬夜雨
(著)
手を
拱
(
こま
)
ねきて蒼穹を察すれば、我れ「我」を
遺
(
わす
)
れて、
飄然
(
へうぜん
)
として、
襤褸
(
らんる
)
の如き「時」を脱するに似たり。
一夕観
(新字旧仮名)
/
北村透谷
(著)
人事から生ずる張る氣の事を言つた以上、自然の天の數から生ずる張る氣のことを言はぬ時は、其の小を説いて其の大を
遺
(
わす
)
るゝことになるから、試に之を概説しよう。
努力論
(旧字旧仮名)
/
幸田露伴
(著)
今でもまだ多少仏への手前があり、その人の
遺
(
わす
)
れ形見であるところの娘の思わく、と云うようなことにも気がねがあるらしい、それで再婚するにしても、なるべく受動的に
細雪:03 下巻
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
ヂドは夫の
遺
(
わす
)
れたる武器を取りて立てり。その歌は沈みてその聲は重く、忽ちにして又激越悲壯なり。
同胞
(
はらから
)
なるアンナアが彼を焚かんとて積み
累
(
かさ
)
ねたる薪は今燃え上れり。幕は下りぬ。
即興詩人
(旧字旧仮名)
/
ハンス・クリスチャン・アンデルセン
(著)
銀烟管などは失ふまいと思ふと気骨が折れる。真鍮にはそれが無い。
縦
(
よ
)
し何処かに置き
遺
(
わす
)
れて取りに往くにしても、無造作に問ふことが出来る。問はれたものも亦、無い時無いと云ふに気兼を
伊沢蘭軒
(新字旧仮名)
/
森鴎外
(著)
然
(
しか
)
り
而
(
しこ
)
うして天下の人、まさに安然として計を得たりと為す。神州の地に生れ、皇朝の恩を
蒙
(
こうむ
)
り、内は君臣の義を失い、外は華夷の弁を
遺
(
わす
)
れば、学の学たる
所以
(
ゆえん
)
、人の人たる所以、それ
安
(
いず
)
くに
在
(
あ
)
りや。
吉田松陰
(新字新仮名)
/
徳富蘇峰
(著)
願はくは予は天下爲すあらんとするの人と共に、之を口稱心念して
遺
(
わす
)
れざらんとするのである。
努力論
(旧字旧仮名)
/
幸田露伴
(著)
彼女だけが先妻の
遺
(
わす
)
れ形見で、素質が悪く、学校の成績なども弟妹に比べて著しく劣るところから、父親にすれば後妻への遠慮があり、継母にすれば父親への気がねがあって
細雪:02 中巻
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
己れを
遺
(
わす
)
れて世を遺るゝを知る。己を
空
(
むなし
)
うして世を空うするを知る、誰れか己れを厭ふ事を知らずして真の厭世家となり、己れを罵ることを知らずして真の罵世家となるを得んや。
「油地獄」を読む:(〔斎藤〕緑雨著)
(新字旧仮名)
/
北村透谷
(著)
嘯詠吟哦
(
しょうえいぎんが
)
、
或
(
あるい
)
は
獅子
(
しし
)
の
繍毬
(
しゅうきゅう
)
を
弄
(
ろう
)
して日を消するが
如
(
ごと
)
くに、
其
(
その
)
身を終ることは
之
(
これ
)
有るべし、
寒山子
(
かんざんし
)
の如くに、
蕭散閑曠
(
しょうさんかんこう
)
、
塵表
(
じんぴょう
)
に
逍遙
(
しょうよう
)
して、其身を
遺
(
わす
)
るゝを
得
(
う
)
可きや
否
(
あらず
)
や、疑う可き也。
運命
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
「わたくしは、………わたくしは、………故大納言の
遺
(
わす
)
れ
形身
(
がたみ
)
、滋幹でございます」
少将滋幹の母
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
たゞ左岸の者は、人力を
遺
(
わす
)
れて運命を言ひ、右岸の者は運命を遺れて人力を言つて居るに過ぎずして、その人力や運命は、川の左右を以て扁行扁廢して居るのでは無いことも明白である。
努力論
(旧字旧仮名)
/
幸田露伴
(著)
纏
(
まと
)
まらなかった様子であること、沢崎氏は当人が既に四十歳を越えており、先妻の
遺
(
わす
)
れ形見などがあるにも
拘
(
かかわ
)
らず、後妻には初婚の、それもなるべく二十台の人を望んでいるらしいこと
細雪:03 下巻
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
ちなみに云う春琴と佐助との間には前記の外に二男一女があり女児は
分娩
(
ぶんべん
)
後に死し男児は二人共赤子の時に
河内
(
かわち
)
の農家へ
貰
(
もら
)
われたが春琴の死後も
遺
(
わす
)
れ形見には未練がないらしく取り戻そうともしなかったし子供も盲人の実父の
許
(
もと
)
へ帰るのを
春琴抄
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
遺
常用漢字
小6
部首:⾡
15画
“遺”を含む語句
遺骸
遺書
遺言
遺憾
遺物
遺児
遺子
遺跡
遺恨
遺漏
遺孤
遺失
遺言状
遺誡
遺詔
遺骨
遺伝
遺髪
遺言書
拾遺愚草
...