道草みちくさ)” の例文
余は麦畑に踏込む犬をしかり、道草みちくさむ女児をうながし、品川堀に沿うて北へ行く。路傍みちばたの尾花は霜枯れて、かさ/\鳴って居る。丁度ちょうど七年前の此月である。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
このみちは、毎日まいにちとおらなければならぬみちでしたが、このときは、ただ太郎たろう一人ひとりでありましたから、みぎたり、ひだりたりして、道草みちくさをくってやってきました。
脊の低いとがった男 (新字新仮名) / 小川未明(著)
學校がくかうきにもきにもひに世話せわをやかしたることなく、あさめしべるとして三退校ひけ道草みちくさのいたづらしたことなく、自慢じまんではけれど先生せんせいさまにももの
大つごもり (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
今時分いまじぶん、おせんがいないはずはないから、ひょっとすると八五ろうやつ途中とちゅうだれかにって、道草みちくさってるのかもれぬの。堺屋さかいやでもどっちでも、はやればいいのに。——
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
一年生は帰りに道草みちくさを食う。三々五々、彼方あっちへ寄ったり此方こっちへ寄ったり、決して真直に歩かない。蛇が蛙を呑むところへでも来合せようものなら、悉皆すっかり消化してしまうまで見ている。
凡人伝 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
はやくさ、かあちやん。かあちやん、つてば。ぐずぐず道草みちくさばかりべてゐて」
ちるちる・みちる (旧字旧仮名) / 山村暮鳥(著)
それつゝかけに夜昼よるひるかけて此処こゝまでたなら、まだ/\仕事しごと手前てまへやまにもみづにも言訳いひわけがあるのに……彼方あつち二晩ふたばん此方こつち三晩みばんとまとまりの道草みちくさで、——はなにはくれなゐつきにはしろく、処々ところ/″\温泉をんせん
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
「かならず道草みちくさをしていてはならぬぞ」
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
はやく、道草みちくさをとらんで、いらっしゃいと、いっているのですよ。」と、おかあさんは、こたえました。
水七景 (新字新仮名) / 小川未明(著)
と考えが道草みちくさの蝶にさそわれて、ふわふわとたまが菜の花ぞいに伸びたところを、風もないのに、さっとばかり、横合よこあいから雪のかいなえりで、つと爪尖つまさきを反らして足を踏伸ふみのばした姿が、真黒まっくろな馬に乗って
春昼後刻 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
かれ学校がっこうかえりに、さびしいみちをひとりで、ひらひらしろいこちょうをいかけたり、また、のあぜでくかえるに小石こいしげつけたりして、道草みちくさをとっていたこともあります。
僕はこれからだ (新字新仮名) / 小川未明(著)