蹶起けっき)” の例文
見よ、その時、この隠れたる神の児達が、大地の下層より蹶起けっきして、自己の体得し、又体験せるところを、堂々と証言するであろう。
この情勢は満州民族を蹶起けっきせしめ、ついに満州より黄河流域にわたる強力な金の建国となって、北方シナに満州民族の血を注ぎ入れた。
孔子 (新字新仮名) / 和辻哲郎(著)
これではいかんと、大正二年に李烈鈞りれつきんが第二革命の火蓋ひぶたを切って、各地に反袁軍が蹶起けっきしたのだが、袁世凱の弾圧でこれも敗れた。
いやな感じ (新字新仮名) / 高見順(著)
きよさん清さん。」という声が聞こえた。その声は狼狽ろうばいした声であった。余が蹶起けっきして病床に行く時に妹君も次の間から出て来られた。
子規居士と余 (新字新仮名) / 高浜虚子(著)
もし又君の為に然らずとせんか、かの近来の赤大根は君の小説に感奮し、君の評論に蹶起けっきしたる新鋭気鋭の青年にあらずや。
八宝飯 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
万一、他出しているうちにでも、突然、蹶起けっきするような事にでもなれば、一挙の統制を欠くばかりでなく、出おくれては一の恥辱にもなる。
新編忠臣蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
自分は蹶起けっきして乳搾ちちしぼりに手をかさねばならぬ。天気がよければ家内らは運び来った濡れものの仕末に眼の廻るほど忙しい。
水害雑録 (新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
運輸労働者が一斉に蹶起けっきしたとしても、Y市の「工場労働者」がその闘争の外に立つことは、他の何処の市でもそうであるように分りきっていた。
工場細胞 (新字新仮名) / 小林多喜二(著)
の力添えようと、同志とともに蹶起けっきしたもの、この地は他領とはいいながら、地続きのこと援助願おうと、こうして参ったわれわれでござる。
血煙天明陣 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
熊楠つつしんでかんがうるに、古エジプト人は日神ウンを兎頭人身とす、これ太陽あしたに天に昇るを兎の蹶起けっきするに比したんじゃ(バッジ『埃及諸神譜ゼ・ブック・オブ・ゼ・エジプシアンス』巻一)
雪に覆われた赤い広場を眺めていると、ここには濃い諧調と美とがあって、伸子は、抑えられつづけた人間の執拗な蹶起けっきの情熱に同感するのだった。
道標 (新字新仮名) / 宮本百合子(著)
今夜の行動は、帆村の示唆しさするところに従って、田鍋課長が蹶起けっきしたという形になっていたが、実のところ課長としては何等自信のあることではなかった。
鞄らしくない鞄 (新字新仮名) / 海野十三(著)
たえす塾生たちを困惑こんわくさせた一事があった、それは「蹶起けっき部隊」とか、「行動部隊」とか、あるいは「占拠せんきょ部隊」とかいう言葉が使用され、三日目になって
次郎物語:05 第五部 (新字新仮名) / 下村湖人(著)
その日の未明に蹶起けっきした青年将校の一団が幾手かにわかれて要路の大官の屋敷を襲い、今、警視庁を占領してそこに立てこもっているというはなしをしたあとで
菎蒻 (新字新仮名) / 尾崎士郎(著)
彼の頭は高倉宮謀叛と頼政一味の蹶起けっき、この事件が影響を及ぼす政情の推移、あるいは諸国の治安の紊乱、一代にして築いたおのが地位など考えぬいたであろう。
ここに於てか諸君、余は奮然蹶起けっきしたのである。打倒蛸! 蛸博士を葬れ、然り、懲膺ちょうようせよ憎むべき悪徳漢! 然り然り。故に余は日夜その方策をつたのである。
風博士 (新字旧仮名) / 坂口安吾(著)
「江戸表においては、少将さまはじめ、松原郡太夫どのらが蹶起けっきしようとしております。ここは先手を打って御家老より県先生を直訴あそばすが必勝の策と存じます」
夜明けの辻 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
戦争中国内の有様ありさまさっすれば所在しょざい不平士族ふへいしぞくは日夜、けんして官軍のいきおい、利ならずと見るときは蹶起けっきただちに政府にこうせんとし、すでにその用意ようい着手ちゃくしゅしたるものもあり。
アメリカでも、イギリスでも坑夫は蹶起けっきしつゝあった。全世界に於て、プロレタリアートが、両手を合わすことをやめて、それをこぶしに握り締めだした。そういう頃だった。
土鼠と落盤 (新字新仮名) / 黒島伝治(著)
「そんなこともなかろうが、読み方によっては、千ざいのち懦夫だふ蹶起けっきせしめるかも知れない」
ガラマサどん (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
刺客ノ至ルヲ見テ大ニ驚キ蹶起けっきスルモ及バズ。すなわち呼ンデ曰ク、我罪ナシ。光明正大白日青天ナリト。語イマダおわラズ。遂ニ害ニ遇フ。時ニ文久三年五月十九日夜ナリ。年三十七。
下谷叢話 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
謹厚の人もまた絳衣こうい大冠すと驚かれたる劉郎りゅうろうの大胆、虎穴こけつに入らずんば虎子を得ずと蹶起けっきしたる班将軍が壮志、今やこの正直一図の壮年に顕われ、由々しくも彼を思い立たしめたり
空家 (新字新仮名) / 宮崎湖処子(著)
所謂いわゆる、朝寝坊が起さるる時にして、数回に亘る呼び声に応答しつつ、又も熟睡に陥り、日三竿さんかんに及びて蹶起けっきして、今日は唯一回の呼声にて覚醒したりなぞ主張する事珍らしからざるは
ドグラ・マグラ (新字新仮名) / 夢野久作(著)
心ある人々これを憂い、饅頭の中に回章を秘めて同志の間に配布し、八月十五日の夜志士ら蹶起けっきして喇嘛僧を鏖殺おうさつし、僅かに生き残った者は辛うじて蒙古に逃れ、支那には全く跡を絶った。
自分一人のことなんか考えず、落語家全部が一致団結して蹶起けっきするときだ。
寄席 (新字新仮名) / 正岡容(著)
交戦諸強は互いに利害の打算を外にして蹶起けっきしたのであるが、なかんずく、独逸ドイツの如きはルクセンブルグの中立を無視し、ベルギーの中立を無視し、非戦闘員を殺戮し、武装せざる都会を
文明史上の一新紀元 (新字新仮名) / 大隈重信(著)
と、ひたすら頼み入る、さすがのコン吉もここにおいて、憤然と蹶起けっき
蹶起けっきした罷工の勇壮を讃えよ。
プチロフ工場 (新字新仮名) / 今村恒夫(著)
二・二六の蹶起けっきは民衆の革命的エネルギーを暴動へと導くことをしなかった。事を上層で解決しようとした。その傲慢さが失敗の一因だった。
いやな感じ (新字新仮名) / 高見順(著)
その証拠には、やがて勅使が帰ると、すぐその後で、蜀の蹶起けっきをうながさんと、彼も直ちに成都へ上っている。
三国志:10 出師の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
第二第三のミミ族にも備えることが肝要です。成層圏飛行に成功したくらいで安心していては、間もなくミミ族のために、簡単にたべられてしまいますよ。さあ、蹶起けっきしてください
宇宙戦隊 (新字新仮名) / 海野十三(著)
労働者農民の窮乏に痛憤した青年将校の蹶起けっき、侵略戦争に反対し、陸軍内の閥と幕僚を排撃して、陸軍の自由を愛好する分子の挙げたこととして、こんにち語りはじめているのである。
素破すわこそと皆蹶起けっきして正座し、その方向に向って両手を支えた。
近世快人伝 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
慶三はふんどし一ツ、蹶起けっきして下へ降りた。
夏すがた (新字新仮名) / 永井荷風(著)
素破すわや! と右内は蹶起けっきした。
猫の蚤とり武士 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
と安部君も蹶起けっきした。
凡人伝 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
蹶起けっきに参加するはずの俺は、万一の場合、波子に対して巻きぞえを食わせるような目に会わせたくなかったのだ。
いやな感じ (新字新仮名) / 高見順(著)
おそらく、鎌倉で毒殺された直義ただよしのことは、彼をいからせ、彼を一ばい奮然と蹶起けっきさせたにちがいあるまい。
私本太平記:13 黒白帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
各新聞社の蹶起けっきを先頭として続々大仕掛けの捜査隊が派遣せられ、およそ一年半近くも蒙古もうこ新疆しんきょう西蔵チベット印度インドを始め、北極の方まで探し廻ったが、皆目かいもく消息がしれなかった、というのでしたね。
空中墳墓 (新字新仮名) / 海野十三(著)
と私は蹶起けっきした。
凡人伝 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
「願わくは、閣下の精練の兵武をもって、許都の曹賊そうぞく討平とうへいし、大きくは漢朝のため、小にはわが主玄徳のため、この際、平常のご抱負をのべ、奮勇一番、ご蹶起けっきあらんことを」
三国志:05 臣道の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
今ならば、革命分子の蹶起けっきとか、地方の騒擾そうじょう事件とか、いわれるであろう。
随筆 新平家 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
神戸信孝かんべのぶたかの岐阜軍が蹶起けっきの機の熟す日を待つこと久しいのであった。
新書太閤記:09 第九分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「寝ている場合ではありません。蹶起けっきすべき時です」
三国志:04 草莽の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
彼の蹶起けっきを熱願したのであった。
剣難女難 (新字新仮名) / 吉川英治(著)