踏切ふみきり)” の例文
東海道線とうかいだうせんやませんがつして鐵道線路てつだうせんろ右手みぎて臺地だいちがそれで、大井おほゐ踏切ふみきりからけば、鐵道官舍てつだうくわんしやうらから畑中はたなかるのである。
もっと幼少の頃は、女中の背に乗って、毎日々々梅田うめだ難波なんばの停車場や踏切ふみきりへ、汽車を眺めるべく、弁当を持って出張に及んだものである。
めでたき風景 (新字新仮名) / 小出楢重(著)
「ほんの蝋燭おてらしだ、旦那だんな。」さて、もつと難場なんばとしたのは、山下やました踏切ふみきりところが、一坂ひとさかすべらうとするいきほひを、わざ線路せんろはゞめて、ゆつくりと強請ねだりかゝる。
麻を刈る (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
それでただ氣が悶々して、何等の踏切ふみきりが付かぬ。そして斷えず何か不安におそはれて、自分でも苦しみ、他からはしぼむだ花のやうに見られてゐるのであツた。
平民の娘 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
鉄道の踏切ふみきりを通る時、番人が白い旗を出していたが、それを通ってしまうと、上り汽車がゴーと音を立てて過ぎて行った。かれは二三度路で中田へのわたのありかをたずねた。
田舎教師 (新字新仮名) / 田山花袋(著)
昨十八日(五月)午前八時四十分しじっぷん奥羽線上おううせんのぼり急行列車が田端駅たばたえき附近の踏切ふみきりを通過する際、踏切番人の過失にり、田端一二三会社員柴山鉄太郎しばやまてつたろうの長男実彦さねひこ四歳しさい)が列車の通る線路内に立ち入り
(新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
くるま踏切ふみきりを、かはづこゑうへした。一昨日おととひとほしたあめのなごりも、うすかはまいつたやうにみちかはいた。
続銀鼎 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
しか大概たいがい蛇窪へびくぼ踏切ふみきりだい二のせんして、ぐと土手どてのぼつてくのである。
伊達だて停車場ていしやぢやうもなく踏切ふみきりして、しばらくして、一二軒いちにけんむら小家こいへまへに、ほそながれ一際ひときはしげつてたけののびたのがあつて、すつとつゆげて薄手うすでながら
飯坂ゆき (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
をりからせなに、御新造ごしんぞ一人いちにん片手かたて蝙蝠傘かうもりがさをさして、片手かたて風車かざぐるまをまはしてせながら、まへとほきぬ。あすこが踏切ふみきりだ、徐々そろ/\出懸でかけようと、茶店ちやてんす。
弥次行 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
おもしろいことは、——停車場ていしやば肱下ひぢさがりに、ぐる/\と挽出ひきだすと、もなく、踏切ふみきりさうとして梶棒かぢぼうひかへて、目當めあて旅宿りよしゆくは、とくから、心積こゝろづもりの、明山閣めいざんかくふのだとこたへると、うかね、これ
飯坂ゆき (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)