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跼
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かが
ふりがな文庫
“
跼
(
かが
)” の例文
そして今迄縮み
跼
(
かが
)
んでゐた力が一齊に地下上天、周圍に對して目ざましい程ずんずん伸び出した。自分は新しく生きる。新しく育つ。
太陽の子
(旧字旧仮名)
/
福士幸次郎
(著)
幾分
(
いくぶん
)
明るい空をバックにしているんで割合に見えるし——夜道で道に迷ったら
跼
(
かが
)
んで見ろ、というのはこの辺を指した言葉だよ……
鱗粉
(新字新仮名)
/
蘭郁二郎
(著)
道の上から掴みとった
砂礫
(
されき
)
を即座の眼つぶしに使ったのだ。秀之進は予期したことのように身を
跼
(
かが
)
め、さっと相手の腰へ打を入れた。
新潮記
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
そこからまだ半道も行かぬ
中
(
うち
)
に二人は忽ち鶏卵中毒を起し、猛烈な腹痛と共に代る代る道傍に
跼
(
かが
)
み始めたので、道が一向に
捗
(
はかど
)
らない。
近世快人伝
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
仙太が地上に散らばった金貨を拾おうと
跼
(
かが
)
んだところを、二階からカンカン寅が
消音
(
しょうおん
)
ピストルを
乱射
(
らんしゃ
)
して殺してしまったのだった。
疑問の金塊
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
▼ もっと見る
屍体はちょうど
跼
(
かが
)
んだような
恰好
(
かっこう
)
になり、傷口も床の滴血の上へ垂直に降りて、流血の状態に不自然な現象は現われなかったのだ。
聖アレキセイ寺院の惨劇
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
この頃は眉がつり上ったきりになったような表情で、そこに
跼
(
かが
)
んでいるまきに小皿をさし出した。まきは、音たかくその味噌汁を吸った。
小祝の一家
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
私はその目を避けるような
恰好
(
かっこう
)
をしながら、彼女の上に
跼
(
かが
)
みかけて、その額にそっと接吻した。私は心から
羞
(
はず
)
かしかった。……
風立ちぬ
(新字新仮名)
/
堀辰雄
(著)
彼は惰力で前面の壁へ突きあたった。オルガは階段の下で廻転すると、参木の足元へぶっ倒れた。参木はオルガを起そうとして身を
跼
(
かが
)
めた。
上海
(新字新仮名)
/
横光利一
(著)
しかしそれにしては
跼
(
かが
)
むこともしない、足で砂を分けて見ることもしない。満月でずいぶん明るいのですけれど、火を点けて見る様子もない。
Kの昇天:或はKの溺死
(新字新仮名)
/
梶井基次郎
(著)
ところどころに娘をみつけた父母が
跼
(
かが
)
んでなにかを飲ませてい、枕もとの
金
(
かな
)
ダライに梅干をうかべたうすい粥が、蠅のたまり場となっている。
原爆詩集
(新字新仮名)
/
峠三吉
(著)
「砂に居る」という言葉は多少不十分であるが、砂の上に
跼
(
かが
)
んでいるとか、腰を下しているとか、とにかく極めて砂に親しい感じと思われる。
古句を観る
(新字新仮名)
/
柴田宵曲
(著)
兄はよく草履ばきでその石の上に
跼
(
かが
)
んで、そこらを見ていられました。明治二十九年の句に、「亡父を
憶
(
おも
)
ふ」として
鴎外の思い出
(新字新仮名)
/
小金井喜美子
(著)
そして、新しい相手がどうかしたはずみにチョークを取り落して、それを拾うために身を
跼
(
かが
)
めた。チョークは球台の暗い真下の方へ転んで行ったらしい。
撞球室の七人
(新字新仮名)
/
橋本五郎
(著)
腰を
跼
(
かが
)
めて見物するところまでは、
蒲鉾
(
かまぼこ
)
は板にはり付いて泳いでいるもの、
鰊
(
にしん
)
は頭がなく乾いたままで生活するもの、鮭の塩引きは切り身のままで糸に
食べもの
(新字新仮名)
/
佐藤垢石
(著)
百松は、
万筋
(
まんすじ
)
の
単衣
(
ひとえ
)
を
端折
(
はしょ
)
って、舞台の上に
跼
(
かが
)
みました。蝋燭をかかげると、縛られたお村の顔よりは、自分の醜怪な顔の方が、
灯
(
あかり
)
の真ん中へヌッと出ます。
銭形平次捕物控:016 人魚の死
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
石垣の石につかまり
跼
(
かが
)
みながら一呼吸いれると、あれほど閉じていたやつが少量ではあったが、黒い土のうえをもっと黒く沁みこんで放出されることを知った。
われはうたえども やぶれかぶれ
(新字新仮名)
/
室生犀星
(著)
船長はいかにも穏かな温顔の人で、先ずは無口に近い。やや前
跼
(
かが
)
みでいつも黙々としてナイフとフオクとを使っている。それに向って事務長が末座に位置する。
フレップ・トリップ
(新字新仮名)
/
北原白秋
(著)
人と云っては只一人、宴会帰りの学生らしいのが、
朴歯
(
ほおば
)
の下駄をカラコロ/\と引摺って、刑事の
跼
(
かが
)
んでいる暗闇を薄気味悪そうに透して見て通ったきりだった。
支倉事件
(新字新仮名)
/
甲賀三郎
(著)
容貌は
魁偉
(
かいい
)
でありながら色は生白かったり、新型の洋服を着ていながら猫背で腰を
跼
(
かが
)
めていたり、鼻の下に
髭
(
ひげ
)
をつけながら前垂れをかけていたり、これ等の人々は
生々流転
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
菜の花のそれが眼に浮ぶ、菜の畑の中に
跼
(
かが
)
んで、
虻
(
あぶ
)
のブンブン
呻
(
うな
)
るのを聴きながら、本を読んだり
菜の花
(新字新仮名)
/
小島烏水
(著)
おとなしいレオは、喜んでするに任せて居る——太陽に祝福された野面や、犬や、そこに身を
跼
(
かが
)
めて居る働く農夫などを、彼はしばらく
恍惚
(
くわうこつ
)
として眺めた。日は高い。
田園の憂欝:或は病める薔薇
(新字旧仮名)
/
佐藤春夫
(著)
追っ手は遠くで鯨波をあげている。また近寄って来るらしいのだ。蜜柑の根もとに
跼
(
かが
)
んで息を殺す、とたんに頭上でげらげらと笑う声がする。はっと見上げると佐柄木がいる。
いのちの初夜
(新字新仮名)
/
北条民雄
(著)
立ったり
跼
(
かが
)
んだり、女どもは何か
喚
(
わめ
)
き散らしていた。輪を描くように、自分の一家族はお互いの身体を寄せあって、少くともそれだけは肌身の
温
(
ぬく
)
もりをしっかり感じ合っていたかった。
石狩川
(新字新仮名)
/
本庄陸男
(著)
傍
(
そば
)
に大きな石の
手水鉢
(
ちょうずばち
)
がある、
跼
(
かが
)
んで手を洗うように出来ていて、
筧
(
かけひ
)
で
谿河
(
たにがわ
)
の水を引くらしい……しょろ、しょろ、ちゃぶりと、これはね、座敷で枕にまで響いたんだが、風の声も聞こえない。
古狢
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
岩蔭に身を
跼
(
かが
)
めて暫くその浪と島と風とに見入って居ると、駿河湾を距てた遥かな空には沖かけての深い
汐煙
(
しおけぶり
)
のなかに駿河路一帯の雪を帯びた山脈がほの白く浮んで見えて居る。富士は見えなかった。
みなかみ紀行
(新字新仮名)
/
若山牧水
(著)
のっそりと
跼
(
かが
)
んで
顎十郎捕物帳:01 捨公方
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
りゅうは歯を
剥
(
む
)
きだしたが、なにも云わなかった。栄二は向き直り、身を
跼
(
かが
)
めて丸薪の一本を拾うと、右手で握って、義一に見せた。
さぶ
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
彼は
跼
(
かが
)
んで、しばらくストーブの中をいろいろな角度から覗きこんでいたが、ややあって、ひどく愕いたような声をだした。
蠅男
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
三人が自動車に乗り込まれるとほとんど同時に夕暗に
紛
(
まぎ
)
れながら、スペヤ・タイヤの処へ飛付いて、小さく
跼
(
かが
)
まりながら揺られて行きました。
少女地獄
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
相当離れて半円形を作っていたが、独りレヴェズのみは、半円形の頂点に当るセレナ夫人の前面で、やや
跼
(
かが
)
み加減に座を占めていたのである。
黒死館殺人事件
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
それでも、注意深く、あたりに人気のないのを見澄ますと、こそこそと体を
跼
(
かが
)
めながら、いまにも崩れそうに積上げられた座蒲団の隙間へ、潜り込んで行った。
夢鬼
(新字新仮名)
/
蘭郁二郎
(著)
かげを持つ人は間もなく花桐の屋敷の土の塀を乗り越え、
跼
(
かが
)
むようにして樹木のあいだをくぐって来た。
花桐
(新字新仮名)
/
室生犀星
(著)
その台の方へ行ってしきりに二つのレシーバーを耳に
嵌
(
は
)
めては、針を動かして見たり、
跼
(
かが
)
んだり、透かしたりして見ていたが、それも諦めたように、耳のをはずして
フレップ・トリップ
(新字新仮名)
/
北原白秋
(著)
ひろ子は、下駄をはいて、
杏
(
あんず
)
の樹の陰から台所へまわった。小枝が、一方に柴木を積み上げた土間に
跼
(
かが
)
んで、茶の間のやりとりに耳を傾けながら馬鈴薯の皮をむいていた。
播州平野
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
深みに続いた瀞の浅場の汀に
跼
(
かが
)
んで、夏の夕方を涼んで居ると、最初水面を
鮠
(
はや
)
の子や、
鰔
(
うぐい
)
の子が跳ね上り、空中を弾道を描いて、ピョンピョンピョンと汀へ向って逃げて来る。
河鱸遡上一考
(新字新仮名)
/
佐藤垢石
(著)
炎天の下にじっと
跼
(
かが
)
んで見入ったような小さな世界が、この句に収められているのである。
古句を観る
(新字新仮名)
/
柴田宵曲
(著)
「伴奏、伴奏。」と誰かが云うと、真紀子が再度ピアノの傍へ沖氏に引っ立てられたが、三島は突然真紀子の傍へよっていって、「靴、靴。」と云いながら裾の方へ
跼
(
かが
)
み込んだ。
旅愁
(新字新仮名)
/
横光利一
(著)
母親は、片手の襦袢の袖口を袖に納め、ほっと一息入れた恰好をしていましたが、何に気が付いたか、今度はたちまち物凄い眼であたりを
睨
(
ね
)
め廻しまして、背を
跼
(
かが
)
めて一層声を低め
生々流転
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
「だってあにいは」と云いながら、政は文次の脇へ
跼
(
かが
)
んだ、「いまあにいは、こんなところでぐずぐずしていちゃ危ねえんじゃあねえか」
あすなろう
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
そして
跼
(
かが
)
んで、なにかゴソゴソやっていたが、なかなか立ち上ろうとしなかった。そのうちに、課長は不審そうな
面持
(
おももち
)
で一同をジロリと眺めまわし
流線間諜
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
その時にやっと気がついて振り返って見ますと、背広を着た人と、サアベルを引きずった巡査とが母の枕元に
跼
(
かが
)
まって、何か調べているようでした。
ドグラ・マグラ
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
よく見ればいかにも女だ。しかし、すぐ
浴
(
ゆあ
)
みをするように
跼
(
かが
)
んだかと思うと、その姿が水中に消えてしまったのだ。
人外魔境:05 水棲人
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
他人を騙すように私はいまおしっこなぞしたくないのだと
呟
(
つぶや
)
く、おしっこがしたい奴はべつに庭の中をうろついていて、犬のように昨日自分でしたところに
跼
(
かが
)
んで
われはうたえども やぶれかぶれ
(新字新仮名)
/
室生犀星
(著)
女生徒の体操の時間で、
肋木
(
ろくぼく
)
につかまった生徒達が、教師の号令で、
跼
(
かが
)
んだり起きたりしています。二階の窓ぎわにいた景岡秀三郎が、フト、その一
群
(
むれ
)
に、眼をやった時でした。
足の裏
(新字新仮名)
/
蘭郁二郎
(著)
畠の中の
茄子
(
なす
)
、
唐黍
(
とうもろこし
)
、南瓜の実にとり包まれた別家の主婦は、そう云って
跼
(
かが
)
み込んだ。背中に射した日光が秋の色で、浮雲がゆるく沼の上に流れている。一日一日と頭を垂れていく稲の穂。
夜の靴:――木人夜穿靴去、石女暁冠帽帰(指月禅師)
(新字新仮名)
/
横光利一
(著)
穴の北側の壁の真中辺を掘っていた中学生が、オヤ、と叫んでシャベルの手を止め、井上さアーンと、もう一つの穴の中に
跼
(
かが
)
んでいる若い男を呼ばわった。ちょっと! 何かあるらしいですよ。
昔の火事
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
声を揃え恐縮し、腰を
跼
(
かが
)
めて恐る恐る七面鳥の傍らへ近寄っていった。
『七面鳥』と『忘れ褌』
(新字新仮名)
/
佐藤垢石
(著)
頭の禿げ上った乳っぽい赤ら
面
(
づら
)
の、眼の柔和な、農民風の五十男の
露助
(
ろすけ
)
が、何か
羞恥
(
はにか
)
んだような驚きと親しさを見せながら、立ちあがると私たちへ笑いかけた。ペチカの前にでも
跼
(
かが
)
んでいたのらしい。
フレップ・トリップ
(新字新仮名)
/
北原白秋
(著)
九月にはいって、夕刻になると風はもう肌に寒かったが、彼は木綿縞の色の
褪
(
あ
)
せた
半纒
(
はんてん
)
に
股引
(
ももひき
)
、古い草履ばきで、少し背中が
跼
(
かが
)
んでいた。
榎物語
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
跼
漢検1級
部首:⾜
14画
“跼”を含む語句
跼蹐
前跼
蹲跼
心跼
踞跼