足下そっか)” の例文
『ええ只今ただいま足下そっか御関係ごかんけいのある事柄ことがらで、申上もうしあげたいとおもうのですが。』と、市役所員しやくしょいん居並いなら人々ひとびと挨拶あいさつむとこうした。
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
これを要するに諸人才器齷齪あくさく、天下の大事を論ずるに足らず、が長人をして萎薾いびせしめん。残念々々。足下そっか久坂をのみ頼むなり。
吉田松陰 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)
「イヤ御遠慮あるな伯父ごとは莫逆ばくぎゃくの友なり、足下そっかの事は書中にて承知致したり、心置きなくまず我方に居られよ」と快濶かいかつなる詞有難く
良夜 (新字新仮名) / 饗庭篁村(著)
足下そっからが善後策を講じる間もなく不意を衝いて、敵の荒胆あらぎもひしぐという——この行き方が、つまり軍学の極意と申すもの
宮本武蔵:06 空の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
うっかり舁夫が向川岸むこうがしを見る隙をねらいすまし、腰を居合にひねって不意に舁夫の胴腹へ深く斬りかけ、アッと声を立てる間もなくドンと足下そっかにかけたから
はたしてしからば、刑事部捜査課長たる足下そっかが当然陣頭に立って捜査せらるべき筋合のものであると確信いたします
鞄らしくない鞄 (新字新仮名) / 海野十三(著)
財産なり、学問なり、技能なり、何か人より余計に持っている人は、其余計に持っている物をさしはさんで、傲然として空嘯そらうそぶいていても、人は皆其足下そっかに平伏する。
平凡 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
さありては師家に対して信義の相立たざる次第なれば、なにとぞ足下そっかにおいてお焼きすて相なりたきものなり
迷信と宗教 (新字新仮名) / 井上円了(著)
或人(同)曰く、足下そっかの理窟として排斥するものはこの善なるべし。しからば足下はこの倫理的の思想をてて、美の一方より歌をよむべしと強ふるものなり。
人々に答ふ (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
朶雲拝誦だうんはいしょうまずもって老兄足下そっか御勝常賀し奉候。したがつて小官無異勤学、御省念これ祈る。然れば御草稿拝見感吟の処少からず。仰せに従ひ僭評せんぴょうならびに枕山評つかまつるべく候。
下谷叢話 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
「うん。一通ひととおりわからぬこともないが、これでは平井の気には入るまい。足下そっかは気がかないのだ。」
渋江抽斎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
外賓に供するに現なまのトルーフルと緑色の海亀肉を用いたらそっちもよろこびこちらも儲けると、今更気付いた人あって、足下そっかは当世の陶朱子房だから何分播種はしゅしくれと
なんらの罪を犯した覚えもないのに、これは何事だ、と一人の侍が捕縛に向かって来たものに尋ねると、それは自分らの知った事ではない。足下そっからを引致いんちするのが役目であるとの答えだ。
夜明け前:02 第一部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
篠田しのだと云う同窓の友がありまして、いつでもその口から、足下そっかもし折があって北陸道を漫遊したら、泊から訳はない、小川の温泉へ行って、柏屋と云うのに泊ってみろ、於雪おゆきと云って、根津や
湯女の魂 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
足下そっかを探しに参ったが——」
南国太平記 (新字新仮名) / 直木三十五(著)
綺堂君、足下そっか
飛騨の怪談 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
「さもあらば、蜀勢はまたようの二郡へ攻めかかるだろう。張郃、足下そっかはこの長安を守れ、われは郿城びじょうを固め、雍城ようじょうへは孫礼をやって防がせよう」
三国志:11 五丈原の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
炯眼けいがんなる金先生足下そっか。まず何よりも、先生の御予言ごよげんが遂に適中てきちゅうしたことを御報告し、つ驚嘆するものです。
足下そっかは在獄なればせん方なし。僕においては苦しからざる事には候えども、諸友の踈濶そかつは志の薄き故かと大いに懸念けねん致し候。この事兄出牢せば一論あるべし。
吉田松陰 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)
小前こまえの分らぬ者などには理解をも云い聞けべき名主役では無いか、それがこと武士さむらいの腰の物を足下そっかにかけて黙ってくと云う法が有るか、とがめたらこそ詫もするが
真景累ヶ淵 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
五翁の子息に相頼み讃州へも遣し度候得共そうらえどもこれは七月に足下そっか御曳杖有之ごえいじょうこれあり候はゞ其節御話し申上く候。
下谷叢話 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
『決して欺きたることなし。足下そっかは某月某日に必ず死すべきはずなることは天運の定まりなり。しかるにその日に死せざりしは、けだしほかに原因あるべし。足下は人を救助せしことなきや』
迷信解 (新字新仮名) / 井上円了(著)
「いや、外につないであるのは、自分の乗用ではない。足下そっかに進上するために、わざわざ従者に曳かせて来たのだ。気に入るかどうか、見てくれ給え」
三国志:02 桃園の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
足下そっかは川路三左衛門に親しきよし、川路または岡本忠次郎などいえるものは元来勘定所より出身せり。
吉田松陰 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)
なんで…それはいいませぬ、足下そっかとちゃんとお約束を致したかどがありますから、仮令たとえ脊骨をどやされて骨が折れてもそれは云わん、云わぬにってこんな苦しい目を致したから
真景累ヶ淵 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
『決して欺きたることなし。足下そっかは某月某日に必ず死すべきはずなることは天運の定まりなり。しかるにその日に死せざりしは、けだしほかに原因あるべし。足下は人を救助せしことなきや』
迷信と宗教 (新字新仮名) / 井上円了(著)
「ところで、孝高よしたか。——足下そっか御著ごちゃくの城へ入って住め。幸いに、小寺政職が捨てて逃げたからそのあとへ」
新書太閤記:06 第六分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
足下そっかにかけられ、如何にも残念に心得ます、御両親より受けました遺体をけがせし不孝の罪、いかに盲目なればとて口惜くちおしながら手出しも出来ず、此の儘に何時まで長らえ居りましても
「君と、予とだ。今、天下の英雄たり得るものは大言ではないが、予と足下そっかの二人しかあるまい」
三国志:05 臣道の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
百姓はキャーと悲鳴を上げる間もなくドンと足下そっかに掛けたから、百姓もモンドリを打ってドブンと落入りました様子を見て、懐から小菊を取出し、大刀ののりを拭って鐘ヶ淵へ投げ込み
「——これで、身どもも主家の使命を見事仕遂げ、面目をもって都へ帰ることができる。いずれ帰府のうえは、高家より足下そっかたちへご褒美ほうびの沙汰もあろうが、では、これで」
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
たれゝば金を貸してやると仰しゃったから打たせたのに、打った上に土足に掛けて金も貸さず、わたくしも武士の禄をんだもの、見ず知らずの土民に足下そっかに掛けられましては捨ておかれません
塩原多助一代記 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
「あらためて問うが、足下そっかは蜀の説客として、この孫権に、何を説こうとして来たか」
三国志:10 出師の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
安「誠にお気の毒だが勘弁は致されんて、勘弁致しがたい訳があるからで、勘弁しないというは武士の腰物こしのものを女の足下そっかに掛けられては此の儘に所持もされぬから浄めて返せと先刻さっきから申してるのだ」
真景累ヶ淵 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
真の勇者は慷慨こうがいせずといいます。また、大事はありの穴より漏るというたとえもある。ゆるゆるはなすとしましょう。しかし、足下そっかが偽ものでないことはよく認めました。偉丈夫の心事を
三国志:02 桃園の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
周「それはいかんよ足下そっかなどは悪事に掛けてはまだ青いからね」
「やあ、足下そっかは実に運がいい。いくさにも、運不運があるものでな」と、いった。
三国志:02 桃園の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
足下そっかに掛けてドブーンと溜り水の中に落して仕舞いました。
業平文治漂流奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
「願わくは、足下そっかの船をからん。それがしらのために、便船を発せられい」
三国志:06 孔明の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
侍「足下そっかが喋ってばかり居っては拙者は話が出来ぬ」
菊模様皿山奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
しかるに、蒋門神のため、その素地したじ蹂躪じゅうりんされ、しかも軍権力もあるため、無念をのんでいた折です。そこへはからず高名な足下そっかをここに見いだして、まさに雲をはらッて陽を見るの思いです。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
大「足下そっかを何うした、穴が開いているようだが」
菊模様皿山奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
「えっ。では宋押司おうし足下そっかがやった仕業しわざだと仰っしゃるのか」
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「やあ。孫堅か。足下そっかも陣地へ引揚げるところか」
三国志:03 群星の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)