越中ゑつちう)” の例文
これは能登のと越中ゑつちう加賀かがよりして、本願寺ほんぐわんじまゐりの夥多あまた信徒しんとたちが、ころほとん色絲いろいとるがごとく、越前ゑちぜん——上街道かみかいだう往來ゆききしたおもむきである。
麻を刈る (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
どんな山の中でもきます、わたし生国しやうこく越中ゑつちう富山とやまで、反魂丹売はんごんたんうりですから、荷物にもつ脊負せおつて、まだくすりひろまらない山の中ばかりつて歩くのです、さうしてまた翌年よくねんの山の中をつて歩くので
塩原多助旅日記 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
過れば木曾川に沿ふての崖道にて景色いふばかりなくよしともゑ御前山吹やまぶき御前の墓あり巴は越中ゑつちうにて終りしとも和田合戰ののち木曾へ引籠りしとも傳へて沒所さだかならず思ふにこゝは位牌所なるべし宮の腰に八幡宮あり義仲此の廣前ひろまへにて元服せしといふ宮の腰とは
木曽道中記 (旧字旧仮名) / 饗庭篁村(著)
座頭ざとうまをすは、しからばしつぺい張競はりくら仕候つかまつりさふらはんまゝ、わが天窓あたま御張おんはさふらへとふ。越中ゑつちうしからばうけさふらへとて、座頭ざとう天窓あたまへしたゝかにしつぺいをる。
怪力 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
越中ゑつちう藥賣くすりうりふくろれていてく、くすりながら、やさしいからませるやうにはからつたのである。
一席話 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
また様子やうすては、たれあやしまずにはられない。——越中ゑつちううまひかへ、坐頭ざとうばうなにをする、とふ。
怪力 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
とて越中ゑつちうかしらでゝしたあかくニヤリとわらひ、ひとさしゆび鼻油はなあぶらひいて、しつぺいはらんと歯噛はがみをなし立上たちあがりし面貌つらがまへ——と云々うんぬんかくてこそ鬼神きじん勇士ゆうし力較ちからくらべも壮大そうだいならずや。
怪力 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
わし一體いつたい京都きやうともので、毎度まいど金澤かなざはから越中ゑつちうはう出懸でかけるが、一あることは二とやら、ふねで(一人坊主ひとりばうず)になつて、乘合のりあひしうきらはれるのは今度こんどがこれで二度目どめでござる。
旅僧 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
上京じやうきやうするのに、もうひとつの方法しかたは、金澤かなざはから十三里じふさんり越中ゑつちう伏木港ふしきかうまで陸路りくろたゞ倶利伽羅くりからけんす——伏木港ふしきかうから直江津なほえつまで汽船きせんがあつて、すぐに鐵道てつだうつゞいたが、まをすまでもない、親不知おやしらず
麻を刈る (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)