こゝろみ)” の例文
転輪てんりん王此玉をこゝろみに高きはたかしら挙著あげおきけるに、人民等じんみんら玉の光りともしらず夜のあけたりとおもひ、おの/\家業かせぎをはじめけりとしるせり。
こゝろみに思へ、糞汁ふんじふはいかむ、その心美なるにせよ、一見すれば嘔吐おうとを催す、よしや妻とするの実用に適するも、たれか忍びてこれを手にせむ。
醜婦を呵す (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
こゝろみに東京の市街と水との審美的関係を考ふるに、水は江戸時代より継続して今日こんにちに於ても東京の美観を保つ最も貴重なる要素となつてゐる。
水 附渡船 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
彼名をフィアルテといふ、巨人等が神々の恐るゝところとなりし頃大いなるこゝろみをなし、その腕を振へるも、今や再び動かすによしなし 九四—九六
神曲:01 地獄 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
僕も本当に左様さう思ひますよ、川地さん、貴官あなたは篠田を悪党だの何のと言ひなさるけれど、こゝろみに一度つて御覧なさい
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
こゝろみに書目を検すれば、説郛せつふけんの二十九、古今説海の説略、学海類篇の集余しふよの四記述、稗海はいかい第三かん等に収められてゐる。
伊沢蘭軒 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
柱列のあひだなる廣き處は、今税關となり、演戲場の中央には、板を列ね幕を張りて、假に舞臺を補理しつらひ、旅役者の興行に供せり。夜に入りて我はこゝろみに往きて看つ。
いな大いに世の文明を進め人の智識を加うるに稗益あり、かつそれこゝろみ言語げんぎょと文章の人の感情を動かすの軽重に就て爰に一例を挙んに、韓退之かんたいし蘇子瞻そしせんの上に駕する漢文の名人
松の操美人の生埋:01 序 (新字新仮名) / 宇田川文海(著)
... 睡魔すゐまです! 左樣さやう!』と、イワン、デミトリチは昂然かうぜんとして『貴方あなた苦痛くつう輕蔑けいべつなさるが、こゝろみ貴方あなたゆびぽんでもはさんで御覽ごらんなさい、うしたらこゑかぎさけぶでせう。』
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
こゝろみに人間の子が母親の乳を含んでゐる時、シンパンジイが来てその母親を殺したと思へ。我等は必ずや「ひどい獣だ」と罵るであらう。人間はどうかすると実にひどい獣になる。
(新字旧仮名) / ジュール・クラルテ(著)
その光被するところ、べてを化石となす、こゝろみに我が手をぐるに、あきらけきこと寒水石をり成したる如し、我が立てる劒ヶ峰より一歩の下、窈然えうぜんとして内院の大窖たいかうあり、むかし火をきたるところ
霧の不二、月の不二 (新字旧仮名) / 小島烏水(著)
こゝろみに余をして簡約に情死に就きて余が見るところを言はしめよ。
おきなびし「」の知りてむ世のこゝろみぞかやうなる。
海潮音 (旧字旧仮名) / 上田敏(著)
転輪てんりん王此玉をこゝろみに高きはたかしら挙著あげおきけるに、人民等じんみんら玉の光りともしらず夜のあけたりとおもひ、おの/\家業かせぎをはじめけりとしるせり。
いとよわき我等の力を年へし敵のこゝろみにあはせず、巧みにこれをそゝのかす者よりねがはくは救ひ出したまへ 一九—二一
神曲:02 浄火 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
こゝろみに菩提樹の花を見てよく北欧の牧野田家ぼくやでんかの光景を想像し、橄欖樹の花に南欧海岸の風光を思ひ、リラの花香くわかう巴里パリー庭園の美を眼前に彷彿たらしむることを得べしとせんか。
来青花 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
しかしこゝろみに推測すればかうである。眞志屋ましやの菓子店は新石町にあつて、そこに壽阿彌の五郎作は住んでゐた。此家が文政九年七月九日に松田町から出て、南風でひろがつた火事に燒けた。
寿阿弥の手紙 (旧字旧仮名) / 森鴎外(著)
いでや、この今日けふこゝろみ
牧羊神 (旧字旧仮名) / 上田敏(著)
火燧ひうちをもて発燭つけぎに火をてんこゝろみに池中になげいれしに、池中ちちゆう火をいだせし事庭燎にはびのごとし。水上に火もゆるは妙法寺村の火よりも也として駅中えきちゆうの人々きたりてこれをる。
路地を通り抜ける時こゝろみに立止つて向うを見れば、此方こなたは差迫る両側の建物に日を遮られて湿しめつぽく薄暗くなつてゐる間から、彼方かなたはるかに表通の一部分だけが路地の幅だけにくつきり限られて
路地 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
酉陽雑俎いうやうざつそいふ熊胆ゆうたん春はくびり、夏ははらに在り、秋は左の足にあり、冬は右の足にありといへり。こゝろみ猟師かりうどにこれをとひしに、くまきもは常にはらにありて四時しじ同じといへり。
酉陽雑俎いうやうざつそいふ熊胆ゆうたん春はくびり、夏ははらに在り、秋は左の足にあり、冬は右の足にありといへり。こゝろみ猟師かりうどにこれをとひしに、くまきもは常にはらにありて四時しじ同じといへり。