トップ
>
襤褸
>
つづれ
ふりがな文庫
“
襤褸
(
つづれ
)” の例文
老婆は大きな眼鏡をかけて冬の仕事に取かかって
襤褸
(
つづれ
)
を
縫
(
ぬっ
)
ている……鳥籠の上に
彼方
(
かなた
)
の
家根
(
やね
)
の上から射し下す日は
温
(
あたた
)
かに落ちて
不思議な鳥
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
四歳にしかなるまいと思われる小娘であって
襤褸
(
つづれ
)
てはいるが
金襴
(
きんらん
)
らしい幅のせまい鉢の木帯をしめ、
袂
(
たもと
)
のまるい着物を着ているのである。
宮本武蔵:02 地の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
そこで、あの
容貌
(
きりょう
)
のよい、
利発者
(
りはつもの
)
の娘が、お
籠
(
こも
)
りをするにも、
襤褸
(
つづれ
)
故に、あたりへ気がひけると云う始末でございました。
運
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
女性に
殊
(
こと
)
に著しい美的
扮装
(
ふんそう
)
(これは
極
(
きわ
)
めて外面的の。女性は
屡〻
(
しばしば
)
練絹
(
ねりぎぬ
)
の外衣の下に
襤褸
(
つづれ
)
の肉衣を着る)、本能の如き
嬌態
(
きょうたい
)
惜みなく愛は奪う
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
貧苦と、
襤褸
(
つづれ
)
と、死と、絶望の満ちたこの部屋の中に、彼女が突然姿を現わしたのは、不思議な思いがするほどであった。
罪と罰
(新字新仮名)
/
フィヨードル・ミハイロヴィチ・ドストエフスキー
(著)
▼ もっと見る
夕陽の砂浜に立って、その
襤褸
(
つづれ
)
からも後光が射しそうで、増屋の佐五兵衛が爪を磨ぐのも無理のない美しさです。
銭形平次捕物控:092 金の茶釜
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
そしてあのこおろぎの鳴くのは、「
襤褸
(
つづれ
)
針
(
さ
)
せつづれさせ」と言って鳴くのだ、貧しいものはあの声を聞いて冬の着物の用意をするのだと言って聞かせました。
出家とその弟子
(新字新仮名)
/
倉田百三
(著)
娘のほうは十六か七であろう、
襤褸
(
つづれ
)
の野良着こそ着ているが、色の白い丸ぽちゃの愛くるしい顔だちで、星のように潤みをもった眼がじっと男の横顔をみつめている。
暗がりの乙松
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
ぼろぼろの
襤褸
(
つづれ
)
を着て、青い
鼻洟
(
はな
)
を
垂
(
た
)
らして、結う油もない頭髪を
手拭
(
てぬぐ
)
いで広く巻いて、叔父の子を背負いながら、村の鎮守で終日
田舎唄
(
いなかうた
)
を唄うころは無邪気であった。
ネギ一束
(新字新仮名)
/
田山花袋
(著)
後
(
うしろ
)
見られぬ
眼
(
め
)
を
恨
(
うら
)
みし
別離
(
わかれ
)
の様まで胸に
浮
(
うか
)
びて
切
(
せつ
)
なく、娘、ゆるしてくれ、今までそなたに苦労させたは
我
(
わが
)
誤り、もう是からは花も
売
(
うら
)
せぬ、
襤褸
(
つづれ
)
も着せぬ、荒き風を
其
(
その
)
身体
(
からだ
)
にもあてさせぬ
風流仏
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
お花は心の
様
(
さま
)
さして悪しからず、ただ貧しき家に生れて、
一年
(
ひととせ
)
村の祭礼の折とかや、兄弟多くして
晴衣
(
はれぎ
)
の用意なく、遊び友達の良き着物着るを見るにつけても、わが
纏
(
まと
)
える
襤褸
(
つづれ
)
の
恨
(
うら
)
めしく
妾の半生涯
(新字新仮名)
/
福田英子
(著)
「聞いたような名だがどこが珍しい」——「〽泉嘉門の珍しさは、なんにたとえん
唐衣
(
からごろも
)
、錦の心を持ちながらも、
襤褸
(
つづれ
)
に劣る身ぞと、人目に見ゆる情けなや、ころは
神無月
(
かんなづき
)
の夜なりしが、酒を ...
娘煙術師
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
その事の
体
(
てい
)
を見てあれば、
不具者
(
かたわもの
)
も、五体満足なのも取交ぜて、老若男女の乞食という乞食が、おのおのその盛装を凝らし、
菰
(
こも
)
を着るべきものは別仕立のきたないのを着、
襤褸
(
つづれ
)
の満艦飾を施し
大菩薩峠:24 流転の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
と打って変って喜悦の涙、
襤褸
(
つづれ
)
の袖を分ちけり。
貧民倶楽部
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
腐
(
くさ
)
れゆく
襤褸
(
つづれ
)
のにほひ
邪宗門
(新字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
襤褸
(
つづれ
)
の袖をかいさぐり
駱駝の瘤にまたがつて
(旧字旧仮名)
/
三好達治
(著)
青地
(
あをぢ
)
襤褸
(
つづれ
)
の
乞食
(
かたゐ
)
らが
泣菫詩抄
(旧字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
思い出もいまは古い、
小紋
(
こもん
)
の小切れやら、
更紗
(
さらさ
)
の
襤褸
(
つづれ
)
や、赤い
縮緬
(
ちりめん
)
の片袖など、
貼板
(
はりいた
)
の面には、彼女の丹精が、
細々
(
こまごま
)
と
綴
(
つづ
)
られて、それは
貼
(
は
)
るそばから、春の陽に乾きかけていた。
日本名婦伝:小野寺十内の妻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
何の
情
(
じょう
)
を含みてか
吾
(
わが
)
与
(
あた
)
えし
櫛
(
くし
)
にジッと見とれ居る美しさ、アヽ
此処
(
ここ
)
なりと
幻像
(
まぼろし
)
を写して
再
(
また
)
一鑿
(
ひとのみ
)
、
漸
(
ようや
)
く二十日を越えて最初の意匠誤らず、花漬売の時の
襤褸
(
つづれ
)
をも
著
(
き
)
せねば子爵令嬢の錦をも着せず
風流仏
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
側
(
かたわ
)
らに引き添った一老人、すなわち薬草道人で腰ノビノビと
身長
(
せい
)
高く、鳳眼鷲鼻白髯白髪、身には
襤褸
(
つづれ
)
を纒っているが、火光に映じて錦のようだ、
白檀
(
びゃくだん
)
の杖を片手に突き、土を踏む足は
跣足
(
はだし
)
である。
任侠二刀流
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
襤褸
(
つづれ
)
素脚
(
すあし
)
の樣にして
泣菫詩抄
(旧字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
「そうです。よい名でしょう。もうしばらくは、この
茅屋
(
あばらや
)
と
襤褸
(
つづれ
)
の御辛抱をねがいますが、母上も、もっとお心を、
確
(
しか
)
と大きく持ってください。——木下藤吉郎の母であるぞと」
新書太閤記:01 第一分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
身には粗末な
襤褸
(
つづれ
)
を着、手に薬草を持っている。
任侠二刀流
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
と、さっき
渡船
(
わたし
)
の中へ忘れてしまうところだった
襤褸
(
つづれ
)
の巾着を、武蔵の手に預けた。
宮本武蔵:06 空の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
すると関興は夜更けて、ただ一騎、満身血と
襤褸
(
つづれ
)
になって引き揚げてきたが
三国志:11 五丈原の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
あの
襤褸
(
つづれ
)
にひとしい古小袖が、生れ代ったように、仕立て直してあった。
宮本武蔵:05 風の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
襤褸
(
つづれ
)
た袖口をあてたまま、彼女は顔を上げ得なかった。
新書太閤記:01 第一分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
襤
漢検1級
部首:⾐
19画
褸
漢検1級
部首:⾐
16画
“襤褸”で始まる語句
襤褸切
襤褸屑
襤褸片
襤褸布
襤褸錦
襤褸屋
襤褸布団
襤褸船
襤褸巾
襤褸市