いっ)” の例文
人はお嫁にいってから家政に苦労するのに、自分は反対に小娘の時から舅姑しゅうとしゅうとめのような父母に仕えてあらゆる気苦労と労働とをしていた。
私の貞操観 (新字新仮名) / 与謝野晶子(著)
れはこまった、今彼処あそこで飲むと彼奴等きゃつらが奥にいって何か饒舌しゃべるに違いない、邪魔な奴じゃと云う中に、長州せい松岡勇記まつおかゆうきと云う男がある。
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
==ねんねんよ、おころりよ、ねんねの守はどこへいた、山を越えて里へいった、里の土産に何貰うた、でんでん太鼓にしょうの笛==
夜叉ヶ池 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
あまりの不思議さにその道を辿っていったら、果然、夢に見馴れた景色のその土地に到着した。これは自分の友人が親しく実見じっけんした奇話である。
取り交ぜて (新字新仮名) / 水野葉舟(著)
少しずつしていってパセリをこまかく刻んでいれて塩胡椒で味をつけてい加減な固さになった時ブリキ皿へ盛って上をならしてバターを少し載せてパン粉を
食道楽:秋の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
そのうちに或日、町から人が来て、この家を取り壊して何処へか車に乗せて運んで持っていってしまった。
凍える女 (新字新仮名) / 小川未明(著)
と、しきりに画板を褒め立てますから、如何どうした事かといって見ますと、こわいかに、昨日まで四角であった画板わ、今朝けさわ八角に成って、意気揚々と歩行あるいております。
三角と四角 (その他) / 巌谷小波(著)
細やかではあるが葉に沢山な毛が生えて毛の本に硬い点床(ムラサキ科の植物には普通にそれがある)があって、嚥下えんかする時それが喉を擦っていって気持ちの悪るい感じがする。
植物記 (新字新仮名) / 牧野富太郎(著)
の武者は悠々ゆうゆうとして西の宮の方へいってしまったが、何がめに深夜こんな形相ぎょうそうをして、往来をするのか人間だろうか妖怪だろうか、思えば思うほど、不審が晴れぬと語りしは
枯尾花 (新字新仮名) / 関根黙庵(著)
あの部屋に這入はいって見たら、元のようで、一たんそこを出て山になんぞいっていなかったのも同じであろう。女は眠っているな。こんな時は眠っていて、物を言ってくれない方が好い。
みれん (新字新仮名) / アルツール・シュニッツレル(著)
青年と琅玉とは囁き乍ら、親しそうに腕を組み合わせて天幕の中へ這入っていった。
喇嘛の行衛 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
何と思ったか婢もまたたっいったので、この間にと皺のない紙へ皺をつけて、両女ふたりの坐って居た辺へ投出した、小歌は手水ちょうずに下りたので、帳場の前で箱丁はこやに何か云って居る処へ婢が来て
油地獄 (新字新仮名) / 斎藤緑雨(著)
その木像まで刻むというは恋に親切で世間にうと唐土もろこしの天子様が反魂香はんごんこうたかれたよう白痴たわけと悪口をたたくはおまえの為を思うから、実はお辰めにわぬ昔とあきらめて奈良へ修業にいって、天晴あっぱれ名人となられ
風流仏 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
私は『お国』という所はどんな所だろうと思いつつ辿っていった。
鳴雪自叙伝 (新字新仮名) / 内藤鳴雪(著)
尽しましたが是ほどうまいった事は有ません警
血の文字 (新字新仮名) / 黒岩涙香(著)
その人に頼んで教えてもらうがかろうと云うのでいった所が、松崎が abc を書いて仮名を附けてれたのにはず驚いた。
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
私は、たもとでその沸えたぎっている煎薬の土瓶を下して、周蔵の言うがままにそれを茶碗に移して枕許にもっいってやると、彼はむくりと起き上って、熱いやつをぷうぷうと吹き出した。
黄色い晩 (新字新仮名) / 小川未明(著)
そう察したら無闇むやみな菓子折なぞを見舞にられるものであるまい。しかるに何処どこの家へいってもあるいは病院の病室へ行っても病人の枕元には菓子折がうずたかい。実に言語同断といわざるを得ん。
食道楽:秋の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
その時広間の客は騒飽さわぎあきて帰る所で、送出す芸妓の一人が、小歌がこちらへ這入ろうとしてあけた障子の隙から、通りがゝりに振向いていったのを、貞之進はすでに見られてからなお顔を隠したが
油地獄 (新字新仮名) / 斎藤緑雨(著)
(筆)ナニ如何どうも仕てるものか、うそだと思うならいって見給え!
三角と四角 (その他) / 巌谷小波(著)
引き此処彼処見物するうち浅草観音に入りたるに思いも掛けず見世物小屋のほとりにて後より「お紺/\」と呼ぶものあり振向き見れば妾の母なり寧児も其傍にあり見違るほど成長したり「オヤ貴女は(母)お前はア私にも云わずに居無く成て夫切それきり便りが無いから何処へいったかと思ったらア東京へア、 ...
無惨 (新字新仮名) / 黒岩涙香(著)
私は今日も酒が飲みたい連れていっれないか、どうも行きたいと此方こっちからうながした処が、馬鹿うなとうような事で、お別れになって仕舞しまった。
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
私も別に下りていって話しかけたこともない。偶々たまたま便所に行く時など下へ降ると婆さんは暗いランプの下でじっ彼方あちらを向いて黙って坐っている。私も声をかけなければ婆さんも声をかけたことがない。
老婆 (新字新仮名) / 小川未明(著)
(三)そんならいって見よう。嘘だったら承知しないよ。
三角と四角 (その他) / 巌谷小波(著)
そうかと思うとまた聖書の一節を口早に叫んで、次の墓にいってまたその冷たな墓石を撫で、何か口の中で言っている。また気を揉むようにその次の墓石に行って、ひややかな石のおもてを撫でて頭を傾げた。
(新字新仮名) / 小川未明(著)