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羚羊
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かもしか
ふりがな文庫
“
羚羊
(
かもしか
)” の例文
河が少し開けて
磧
(
かわら
)
に下り立つと、水の流れた跡が箒で掃いたように残っている砂地には、鹿や
羚羊
(
かもしか
)
の足跡が無数に印せられている。
渓三題
(新字新仮名)
/
木暮理太郎
(著)
一見、黒白混血児とわかる浅黒い肌、きりっとひき締った
精悍
(
せいかん
)
そうな
面
(
つら
)
がまえ、ことに、
肢体
(
したい
)
の
溌剌
(
はつらつ
)
さは
羚羊
(
かもしか
)
のような感じがする。
人外魔境:01 有尾人
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
例の霧を吹くような、
羚羊
(
かもしか
)
のするどい声が、仙人山の木隠れに聞えて来て、とうとう幾頭か急斜を走る、というより飛ぶ姿が見られた。
ある偃松の独白
(新字新仮名)
/
中村清太郎
(著)
彼女が野原を踊りまはる時、さては山腹のあたりを足も軽げに歩く時、人々は彼女の美を劣等にしたものが
羚羊
(
かもしか
)
だと思つたであらうと思ふ。
吸血鬼
(新字旧仮名)
/
ジョン・ウィリアム・ポリドリ
(著)
ここへ残しておくってことは私には出来ないんだ。さあ、跳べ! 一跳びで外へ出られる。二人で
羚羊
(
かもしか
)
のように逃げ出そう。
宝島:02 宝島
(新字新仮名)
/
ロバート・ルイス・スティーブンソン
(著)
▼ もっと見る
遠くは
飛騨
(
ひだ
)
の山々から、中国辺に至るまで、二三百年来手広く取引をなし、山の猟師が熊、鹿、狸、狐、
羚羊
(
かもしか
)
、猿、山猫
たぬき汁
(新字旧仮名)
/
佐藤垢石
(著)
オリンピック競技では馬や
羚羊
(
かもしか
)
や魚の妙技に肉薄しようという世界中の人間の努力の成果が展開されているのであろう。
烏瓜の花と蛾
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
それほど喉が乾いて来た、小さな獣の足跡が、
涸谷
(
からたに
)
の方から、尾根の方へ、雨垂れのように印している、嘉代吉は
羚羊
(
かもしか
)
の足跡だと言って、穂高岳も
谷より峰へ峰より谷へ
(新字新仮名)
/
小島烏水
(著)
然らば何ぞ獣の皮を取りて身に纏はざるやと言ひしに、つく/″\と之を聞きて去れり。翌夜は忽ち
羚羊
(
かもしか
)
二
疋
(
ひき
)
を両の手に下げて来り、升山の前に置く。
山の人生
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
こう、目をつぶると
羚羊
(
かもしか
)
が三匹
氷桟
(
コリドオル
)
の上を走って行くのが、ありありと心眼に写るんだから不思議なもんです。
ノンシャラン道中記:07 アルプスの潜水夫 ――モンブラン登山の巻
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
蒼茫として暮れてゆくアルプスの群山を仰げば、あの氷の上を
羚羊
(
かもしか
)
のごとく跳び廻った日が夢のように遠い。
続スウィス日記(千九百二十三年稿)
(新字新仮名)
/
辻村伊助
(著)
羚羊
(
かもしか
)
のやうなすんなりした脚で、
何時
(
いつ
)
もネビイブルウのソックスに、白い靴をはいてゐた。腰の線がかつちりしてゐて、後から見る姿は
楚々
(
そゝ
)
とした美しさだつた。
浮雲
(新字旧仮名)
/
林芙美子
(著)
ほんの
僅
(
わず
)
かの
供廻
(
ともまわ
)
りを連れただけで二人は縦横に
曠野
(
こうや
)
を
疾駆
(
しっく
)
しては
狐
(
きつね
)
や
狼
(
おおかみ
)
や
羚羊
(
かもしか
)
や
鵰
(
おおとり
)
や
雉子
(
きじ
)
などを射た。
李陵
(新字新仮名)
/
中島敦
(著)
獅子が
羚羊
(
かもしか
)
を引き裂くように、あいての手足を一本一本引き裂くことまできた。しかし、ひどい病気にかかったみたいで心がめいったので、それも思いとどまった。
フランケンシュタイン:02 フランケンシュタイン
(新字新仮名)
/
メアリー・ウォルストンクラフト・シェリー
(著)
すると荒削りの山の肌が、頂に近く
偃
(
は
)
ひ松の暗い緑をなすつた所に、小さく一匹の獣が見えた。それが青猪と云ふ異名を負つた、日本アルプスに棲む
羚羊
(
かもしか
)
であつた。
槍ヶ岳紀行
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
あの野生の
羚羊
(
かもしか
)
を思はせる仕事帰りの農婦等の、仕事着の下に、脚絆・手甲・もんぺの下に軽々と律動的に動いてゐたその肉体は丁度銅色の娘のやうであらうかと思ひ
逃げたい心
(新字旧仮名)
/
坂口安吾
(著)
まだ陽に焼けぬ、
白絹
(
しらぎぬ
)
のようなクリーム色、
或
(
あるい
)
は早くも小麦色に焼けたもの、それらの皮膚は、
弾々
(
だんだん
)
とした健康を含んで、しなやかに伸び、
羚羊
(
かもしか
)
のように躍動していた。
鱗粉
(新字新仮名)
/
蘭郁二郎
(著)
漸くにして樹木のまばらなところへ来た。沢を隔てて遥かの木立に、カラカラと石の崩れ落ちる音がする。宗忠は木の切株に上って見つめている。
羚羊
(
かもしか
)
か猿だろうという。
白峰の麓
(新字新仮名)
/
大下藤次郎
(著)
僕は毎日の一瞬間、一瞬間が大切でたまらないのだ。この大陸の平原で太陽を浴びる火喰鳥、
羚羊
(
かもしか
)
を追ひかける
獅子
(
しゝ
)
、みんな出来合ひの日程で生きてゐるのではないんだ。
亜剌比亜人エルアフイ
(新字旧仮名)
/
犬養健
(著)
「あれが
羚羊
(
かもしか
)
です、あの獣は赤いものが好きで、赤いものさえ見せれば半日でも見ています」
大菩薩峠:27 鈴慕の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
「この人は變つてるのか? 皮肉なのか? 私は、この小さな英吉利の娘さん一人を、大トルコ帝の後宮全部、
羚羊
(
かもしか
)
の眼、極樂女神の姿にも、何にも換へようとは思はない!」
ジエィン・エア:02 ジエィン・エア
(旧字旧仮名)
/
シャーロット・ブロンテ
(著)
喜作は大正十一年の二月、爺ヶ岳裏の棒小屋沢に
羚羊
(
かもしか
)
猟に行ってた時に、
雪崩
(
なだれ
)
の下になって、その息子と、愛犬と一緒に死んだ。皆が、山人らしい死に方でこの世を去ったのだ。
案内人風景
(新字新仮名)
/
百瀬慎太郎
、
黒部溯郎
(著)
二人は
駱駝
(
らくだ
)
のうしろに馬、馬のあとには犬、それから羊、
驢馬
(
ろば
)
、牛、獅子、象、熊、
羚羊
(
かもしか
)
その他いろんなものをみんな長い行列に仕あげて、それを箱船までとどかしてしまふと
科学の不思議
(新字旧仮名)
/
ジャン・アンリ・ファーブル
(著)
いかにも、人間の通った道らしくない。大雨の折りに流下する水道か、熊や
羚羊
(
かもしか
)
どもの通う道だろう。喬木では、ツガ、モミ、シラベ、カツラ、サワグルミ、ニレ等混生している。
穂高岳槍ヶ岳縦走記
(新字新仮名)
/
鵜殿正雄
(著)
今日のわれわれの観念からすれば、
羚羊
(
かもしか
)
撃ちや地質探査は登山と呼ばれない。
ピークハンティングに帰れ
(新字新仮名)
/
松濤明
(著)
『其處にゐる軍人の
外套
(
まんと
)
からだに。私いさうだんべと思つて探したら、慥かにはあ四十一
留
(
ルーブル
)
と二十
哥
(
コペエク
)
ありましただあ。』言ひながら百姓は、分捕品でゝも有るかのやうに
羚羊
(
かもしか
)
の皮の財布を振り𢌞した。
我が最近の興味
(旧字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
汝
(
なんじ
)
穢
(
けがら
)
わしき物は何も
食
(
くら
)
う
勿
(
なか
)
れ。汝らが
食
(
くら
)
うべき
獣蓄
(
けもの
)
は
是
(
これ
)
なり
即
(
すなわ
)
ち牛、羊、
山羊
(
やぎ
)
、
牡鹿
(
おじか
)
、
羚羊
(
かもしか
)
、小鹿、
麣
(
やまひつじ
)
、
麞
(
くじか
)
、
麈
(
おおじか
)
、
麏
(
おおくじか
)
、など。
凡
(
すべ
)
て
獣蓄
(
けもの
)
の
中蹄
(
うちひづめ
)
の分れ割れて二つの蹄を成せる
反蒭獣
(
にれはむけもの
)
は汝ら
之
(
これ
)
を
食
(
くら
)
うべし。
正義と微笑
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
あたかも河馬が
羚羊
(
かもしか
)
を追っかけるようなものだった。二、三分とたたないうちに、彼女はマリユスの姿を見失い、息を切らして戻ってきた。
喘息
(
ぜんそく
)
のためにほとんど息をつまらして、ひどく怒っていた。
レ・ミゼラブル:06 第三部 マリユス
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
羚羊
(
かもしか
)
のように岩を飛び雪を踏んで、遮二無二に急ぐ。
可愛い山
(新字新仮名)
/
石川欣一
(著)
羚羊
(
かもしか
)
の足跡を見た。
樵夫
(
きこり
)
の歌を聞いた。
チロルの旅
(新字旧仮名)
/
岸田国士
(著)
斑
(
まだら
)
の牛と
羚羊
(
かもしか
)
は
泣菫詩抄
(旧字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
羚羊
(
かもしか
)
、猿、山猫、山犬などの毛皮を携えて
遙々
(
はるばる
)
前橋まで集まってきたが、明治になってからはこれを神戸の商館へ持ち込んで外国へ輸出している。
たぬき汁
(新字新仮名)
/
佐藤垢石
(著)
広い河原は
益
(
ますます
)
広くなって、水の流れた跡が箒目のように残っている細かい砂の上には、無数の
羚羊
(
かもしか
)
の足痕が印してある。
秋の鬼怒沼
(新字新仮名)
/
木暮理太郎
(著)
昔から御なじみの山岳が、今そのままに眼の前にそびえているのだから、
羚羊
(
かもしか
)
のように雪の上を飛びはねて、夢中になってうれしがったのは云うまでもない。
スウィス日記
(新字新仮名)
/
辻村伊助
(著)
百分の一近辺のものは
猩々
(
しょうじょう
)
、鹿、猫など、それから下って百分の一より千分の一の間にあるのが
麒麟
(
きりん
)
、象、
羚羊
(
かもしか
)
、獅子、袋鼠、鷲、白鳥、
雉
(
きじ
)
、鼠、蛙、鯉など
話の種
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
そこからは智的な熱情が、まるで
羚羊
(
かもしか
)
のような
敏
(
すば
)
しこさで
迸出
(
はしりだ
)
してくるのだけれども、それにはまた、彼女の精神世界の中にうずくまっているらしい、異様に病的な光もあった。
黒死館殺人事件
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
極目人煙を見ず、まれに訪れるものとては
曠野
(
こうや
)
に水を求める
羚羊
(
かもしか
)
ぐらいのものである。
李陵
(新字新仮名)
/
中島敦
(著)
噪
(
さわ
)
ぐ声がする、東の峡間に、一頭の
羚羊
(
かもしか
)
を見つけ出したのだ、なるほど一頭いるわいと気が
注
(
つ
)
くころ、中村宗義は銃を抱えて、岩蔭を岩蔭をと身を平ッたく伝わって、谷側まで下りた
白峰山脈縦断記
(新字新仮名)
/
小島烏水
(著)
その人は白い文明人がきらひで、
赤銅
(
しやくどう
)
いろのわれ/\がお好きだつた。巴里女の花模様の衣裳がきらひで、馬や
羚羊
(
かもしか
)
のつや/\した皮膚がお好きだつた。あの人は——不思議な人だつた。
亜剌比亜人エルアフイ
(新字旧仮名)
/
犬養健
(著)
そのあとが、
羚羊
(
かもしか
)
と栗……。
チロルの秋(一幕)
(新字旧仮名)
/
岸田国士
(著)
砂の上には生新らしい熊や
羚羊
(
かもしか
)
の足跡が縦横に印している。余り好い気持ではない。風が汗ばんだ体にひやりと冷いので、十分許り休んで出懸けた。
奥秩父の山旅日記
(新字新仮名)
/
木暮理太郎
(著)
信州のこの地方の深山には、猿も
羚羊
(
かもしか
)
も数多くおります。羚羊は禁獣ですから私は撃ちません。猿は十五、六頭から、三十頭くらいの群れをしています。
熊狩名人
(新字新仮名)
/
佐藤垢石
(著)
予の湖畔に於ける狩猟中に、朝食のため土人の一人が未明
羚羊
(
かもしか
)
猟をせり。
夢殿殺人事件
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
欧洲アルプスではこれが三百米突位な深さに達し、登山者のみならず、
羚羊
(
かもしか
)
までが踏み落ちると、そのまま氷漬けになり、自然の墳墓になるということであるが、日本ではそのように深奥なのはない。
高山の雪
(新字新仮名)
/
小島烏水
(著)
勿論
此
(
この
)
附近には
羚羊
(
かもしか
)
はいますが鹿はいません。
其
(
その
)
代りに熊は大分います。大日岳は越中でも有名な熊の産地です。
日本アルプスの五仙境
(新字新仮名)
/
木暮理太郎
(著)
栗鼠
(
りす
)
、木
鼬
(
いたち
)
、
羚羊
(
かもしか
)
、犬、鯨、
海狸
(
ビーバー
)
、熊、穴熊、猪、
土竜
(
もぐら
)
など、内地の獣類は、いろいろ食べたことがある。
香熊
(新字新仮名)
/
佐藤垢石
(著)
劒沢を
泝
(
さかのぼ
)
り、八時十三分、長次郎谷の出合。大なる
羚羊
(
かもしか
)
を見る。十時、別山裏の平地に達し、小憩して昼食。十時三十五分、出発。十一時、別山乗越着。
黒部川奥の山旅
(新字新仮名)
/
木暮理太郎
(著)
寛永三年御清の節の
食穢
(
しょくあい
)
には狸、狼、
羚羊
(
かもしか
)
を食った人に、五日間の
穢
(
けが
)
れありとしてあるが今晩は
鰊糟
(
にしんかす
)
にも劣る小片のみで、狸をたらふく食ったわけではないのだから
たぬき汁
(新字新仮名)
/
佐藤垢石
(著)
若干軽装してこの雪の上を
羚羊
(
かもしか
)
のように駈け廻る時の愉快は、到底筆や言葉にあらわせるものではない。
冬の山
(新字新仮名)
/
木暮理太郎
(著)
三間しか離れていない岩の上に
羚羊
(
かもしか
)
がのそりと立っているのを見付けて雄吉が杖で叩き倒そうとしたが
大井川奥山の話
(新字新仮名)
/
木暮理太郎
(著)
“羚羊”の意味
《名詞》
羚 羊(かもしか、れいよう)
(れいよう)ウシ族とヤギ亜科を除いたウシ科の動物の総称。
かもしかの漢字表記のひとつ。
(出典:Wiktionary)
羚
漢検1級
部首:⽺
11画
羊
常用漢字
小3
部首:⽺
6画
“羚羊”で始まる語句
羚羊角