チロルの秋(一幕)チロルのあき(ひとまく)
時一九二〇年の晩秋 処墺伊の国境に近きチロル・アルプスの小邑コルチナ。 人 アマノ ステラ エリザ ホテル・パンシヨンの食堂。午後七時。 ストーブの火が燃えてゐる。 ステラ、喪服、ヴエールで眼を覆つてゐる。珈琲を飲みながら、書物の頁を繰る。 …