わっぱ)” の例文
「それみい。面白うないというが、庄司しょうじの七郎ほどな侍を、そう驚かしたことなら面白いにちがいない。——何じゃ一体、あのわっぱは?」
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
晩のおかずに、煮たわ、喰ったわ、その数三万三千三百さるほどにじいの因果が孫にむくって、渾名あだな小烏こがらすの三之助、数え年十三の大柄なわっぱでござる。
海異記 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
ひとつ、自分もわっぱの群れに入り交じって、まっ裸な五体に水しぶきを感じてみたい。正成の答えた声には、そんな意欲がこもっていた。
私本太平記:03 みなかみ帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「叔母御。——この腕白をご存じじゃろが。これは、二寺ふたつでらの宿で、桶屋おけやなどしていた遠縁の新左衛門が小伜こせがれで、市松というわっぱだが」
新書太閤記:03 第三分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「盗賊は、まだつかまらぬか。はて、のろまな警吏やくにんだ」と、後ろへ供につれているわっぱのような小男——蜘蛛太くもたを顧みてにやりと笑っていた。
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「そんな、利巧者ぶるやつに、ろくなわっぱはないぞよ。第一、まだ乳くさいくせに、仏いじりなどする餓鬼がきは、この寿童丸じゅどうまる、大ッ嫌いじゃ」
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
と、わっぱの頬でもるような平手の一てきを食らわせた。なんでたまろう、二つの体は仲よく躍ッてたまりの中へ飛んでいった。刹那。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
たとえば、ここにある一個の人間の子、相馬そうま小次郎こじろうなども、そうした“地の顔”と“天の気”とを一塊の肉に宿して生れ出たようなわっぱだった。
平の将門 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「はい。どうして知れたか、わっぱたちと遊ぶと、唐人子とうじんこ唐人子とからかわれるとかで、この頃は、ちっとも外に出ませぬわい」
新書太閤記:01 第一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ほど近い吉田山の法師の庵から、いつものように、ほかのわっぱと、高野川の落ち口へ、夜網を懸けに行っていた命松丸も、その中に交じっていた。
私本太平記:05 世の辻の帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
思うに、天皇御自身は、後宮制度という百花の園においてのみ、その人間性をほしいままにできる天然のわっぱのようなものだった。
私本太平記:01 あしかが帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「なります。父のいいつけで、初めて上がった頃は、私はまだはなたれのわっぱ、兄の定綱さえ、まだ小冠者でござりました」
源頼朝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「去年から仔細しさいあって、わしの手に引き取っておるが、これがまた、一通りなわっぱではない。……ここでは、きつう羞恥はにかんで、神妙に畏まっておるが」
新書太閤記:03 第三分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「このわっぱめッ。そげな悪性あくしょう真似まねしさらすと、れが父者ててじゃのように、れも今に、闇討ち食ってくたばりさらすぞ」
剣の四君子:03 林崎甚助 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「もう十二にもなれば、どこのわっぱでも、家業の手助けは当りまえだ。親の目ばかりぬすんで、遊びたがってばかりいると、腰骨をぶち折ってくれるぞ」
新書太閤記:01 第一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
と、耳ぶくろへ入れては、ひとりのわっぱに、大団扇おおうちわで汗をあおがせながら、筆を執っていたという。まことに、おかしな風格をもっていた人物であった。
「浅井の臣、前波まえなみしんろうッ。織田殿にこそ、この槍を見参にと参ったるに、邪魔だてする小面憎こづらにくわっぱめ。何奴なにやつだ」
新書太閤記:04 第四分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
車副くるまぞいの侍から、牛飼うしかいわっぱまで、みな気が立っているのである。そしてみな戦勝のおごりに酔っているのでもある。
私本太平記:10 風花帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
それは為定の家で茶菓子に出た粉熟ふずくであったが、甘葛あまずらと餅で作った美しい五色の菓子は、彼がまだ手を合せているうちから、そこらにいた貧しげなわっぱたちが
私本太平記:01 あしかが帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
走りわっぱの幼時から、俊基に可愛がられて来て、このおあるじに仕えること、形影けいえいもただならぬ侍童の菊王は
私本太平記:02 婆娑羅帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「いやいやとがめ立てではない。——そのわっぱとやら、おもしろそうな奴。徒然つれづれの話し相手には、ちょうどよい。菓子でもらせよう。これへ、呼んでおくれぬか」
宮本武蔵:06 空の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「ふんじばってつれてきた、じゃおれは、梅雪とかけあいをつけるから、きさまが縄尻なわじりを持っていろ。なかなかわっぱのくせに強力ごうりきだから、ゆだんをしてがすなよ」
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「やいっわっぱ。おのれがお犬を撃ち殺したように、お犬に代って、おのれを撃ち殺してやるから起て。——きゃんとでもわんとでも吠えて来い、噛みついて来いっ」
宮本武蔵:03 水の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
白旗しらはたの森にいる、竹童ちくどうというわたしより五歳いつつばかり下のわっぱにたのまれたんです。その者にやりました」
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「やかましいっ。いくらわっぱでも、犬と人間のけじめがつかぬ年ごろではあるまい。犬に仇討ちをしかけるとは何事だ。——処分するぞっ、こらっ、お犬のとおりに」
宮本武蔵:03 水の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
小面こづらの憎いわっぱめと、何か仕返しでもしてやりたいくらいに思ったが、そう苦り切っている間にすぐ
源頼朝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「兵法者が、第一に重んじるのは礼儀作法である。土百姓のわっぱとはいえ、今の仕方は堪忍ならぬ」
宮本武蔵:08 円明の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「これこれ又八またはち、とにかくふしぎなわっぱ、おれが素性すじょうをただしてみるから、これへ引きずってこい」
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
わっぱよ。おぬし、伊織とかいうたの。——いつぞやはこの婆に、ようもきびしいまねをしやったな」
宮本武蔵:07 二天の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「旅の者。——仔細は知らぬが、何でこのようなわっぱを、大人げもなく打ちのめそうといたすか」
宮本武蔵:08 円明の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「そうか。足手まといなどと申すな。戦陣に加えてさえおけば、武者だましいは自然と備わる。小さいほどいいわさ。幼少のうちほどいい。……これわっぱ於四郎おしろうというか」
新書太閤記:07 第七分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
きょとんとして、まるで涎くりのわっぱみたいな顔つきなのが、登子には少し情けなく見えた。
私本太平記:02 婆娑羅帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
わっぱッ)と一声呶鳴られるとへそがもんどり打ったように、縮み上がって逃げたものである。
宮本武蔵:04 火の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「このわっぱは、当家の小僧か。子どもとはいえ、ゆるし難いやつ。——番頭っ、ひっ捕えろ」
宮本武蔵:08 円明の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
わっぱよ。いいつけておいたかきはまだか。——客人まろうどに、柿なともいで来て、もてなさぬか』
小柳生城の中へ、わっぱひとりを連れて、堂々と、入り込んでござった不敵さは、曲者くせものながらよいつらがまえ。それに、一せき好誼よしみもある。——腹を切れ、支度のあいだは待ってやろう。
宮本武蔵:03 水の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
このわっぱは、三木の陣中で拾った敵将の子じゃ。敵将とて卑怯者の子ではない。よい血を
黒田如水 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
この辺のわっぱは、生れた時から、それを見、それを聞きして、育って来たのである。
新書太閤記:01 第一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そうそう山では遮那王しゃなおうとか名づけられているそうだが……あの牛若うしわかというわっぱじゃ
源頼朝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「こらっ、わっぱッ! そんなところへ立ってお客様のお居間をのぞいてはならん」
宮本武蔵:06 空の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
わっぱどもっ。遊ぶなら河原で遊べ、寺内へ入って来て乱暴するじゃないっ」
宮本武蔵:06 空の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「女子供と思って理由ことをわけていうのに、わっぱめ、つけ上がって何をいうか」
宮本武蔵:04 火の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「わしの馬の尻について、よく駈けてくるわっぱはだれだ、どこの童武者わらべむしゃだ」
私本太平記:10 風花帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
と、わっぱには枕もとまで運んでやり、自分も炉べりで喰べはじめている。
私本太平記:04 帝獄帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
なさるのです。もう村のわっぱみたいな駄々を仰っしゃってはいけません
私本太平記:07 千早帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「又左。連れて来い。そう手荒うすな。——わっぱは、おことの小姓か」
新書太閤記:09 第九分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
兄高氏にもおおいえないものが今日はみえるが、彼の方はもっと若い、またもっと正直に昂奮していた。家中二百六、七十人という数は厩仲間うまやちゅうげんから若党、わっぱの端までをいれた大蔵屋敷の総人員であった。
私本太平記:07 千早帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
どこ一軒、起きている灯もみえない真夜半まよなかを、三、四人のわっぱ
私本太平記:05 世の辻の帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「お供といったらわっぱひとり連れたきりでよ。ねえ御老臣さま」
私本太平記:11 筑紫帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ただ年齢こそ少し違うが、この命松丸のわっぱぶりを見るにつけ
私本太平記:05 世の辻の帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)