確乎しつか)” の例文
みつつにつてたおしな卯平うへいしたうて確乎しつかうちめたのはそれからもないことである。へびはなし何時いつにか消滅せうめつした。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
譯もなく歔欷すゝりあげてゐる新坊を、吉野は確乎しつかと懷に抱いて、何か深い考へに落ちた態で、その後にいた。
鳥影 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
吉村忠雄氏又は次郎生は、さも知つたふりをして「君が專門に修めたものでも確乎しつかりとやつたがいゝ」
おのゝに、をんなむね確乎しつかせば、ふくらかなゑりのあたりも、てのひらかたつめたいのであつた。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
一人の屠手は赤い方の鼻面を確乎しつかおさへて、声をはげまして制したり叱つたりした。畜生ながらに本能むしが知らせると見え、逃げよう/\と焦り出したのである。黒い佐渡牛は繋がれたまゝ柱を一廻りした。
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
ちひさなくひ毎日まいにちみづためやはらかにされてつちへぐつとふかくはひつた。かぎふか釣瓶つるべ内側うちがはのぞいてたので先刻さつきよりも確乎しつか釣瓶つるべめた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
訳もなく歔欷すすりあげてゐる新坊を、吉野は確乎しつかと懐に抱いて、何か深い考へに落ちたさまで、そのあといた。
鳥影 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
洋杖ステツキ紙入かみいれと、蟇口がまぐち煙草入たばこいれを、外套ぐわいたうした一所いつしよ確乎しつかおさへながら、うや/\しく切符きつぷ急行劵きふかうけん二枚にまいつて、あまりの人混雜ひとごみ、あとじさりにつたるかたちは、われながら、はくのついたおのぼりさん。
大阪まで (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
しなつた勘次かんじのするまゝにそれを確乎しつかめて、ほねばかりのほゝが、ぴつたりとりつけられた。葬式さうしき赤口しやくこうといふであつた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
おそろしいより、ゆめれて、うれしさがさきつた。暫時しばし茫然ばうぜんとしてたが、膚脱はだぬぎにつて大汗おほあせをしつとりいた、手拭てぬぐひむか顱卷はちまきをうんとめて、確乎しつか持直もちなほして、すた/\と歩行出あるきだす。
二た面 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
確乎しつかとおさへてまくらながらかすかにわなゝく小指こゆびであつた。
雪の翼 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)