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真正面
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まとも
ふりがな文庫
“
真正面
(
まとも
)” の例文
旧字:
眞正面
そう
真正面
(
まとも
)
にいわれた川島は、又あわてて笑いを浮べたのだが、それは片頬が
纔
(
わず
)
かに顫えただけの、我れながら卑屈なものであった。
植物人間
(新字新仮名)
/
蘭郁二郎
(著)
手を振ったり、足をふんばったり、勝手なことをわめく艦長のために、水兵は何度も
真正面
(
まとも
)
から自分の顔に「唾」を吹きかけられた。
蟹工船
(新字新仮名)
/
小林多喜二
(著)
「あらッ!」とお宮は、入って来るからちょうど
真正面
(
まとも
)
にそっち向きに
趺座
(
あぐら
)
をかいていた柳沢の顔を見て
燥
(
はしゃ
)
いだように笑いかかった。
うつり香
(新字新仮名)
/
近松秋江
(著)
神伝流で言う水枕、溺死人引揚げの奥の手だ。藁をも掴むというくらいだから
真正面
(
まとも
)
に向っては抱き付かれて
同伴
(
みちづれ
)
にされる。
早耳三次捕物聞書:02 うし紅珊瑚
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
沢崎に対して始終左半面を
晒
(
さら
)
すような角度になっており、
眩
(
まぶし
)
いような初夏の庭の反射が、その顔の上に
真正面
(
まとも
)
に照っていた。
細雪:03 下巻
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
▼ もっと見る
ひたと
真正面
(
まとも
)
に彼を見ながら、のろのろとあとずさりに隅の方へさがり出したが、叫ぼうにも空気が足りないように、声は少しも立てなかった。
罪と罰
(新字新仮名)
/
フィヨードル・ミハイロヴィチ・ドストエフスキー
(著)
西から
真正面
(
まとも
)
に吹き颪したのが、暫らくして北の方から落して来た。やがて、風は山を離れて、平野の方から、山に向つてひた吹きに吹きつけた。
死者の書:――初稿版――
(新字旧仮名)
/
折口信夫
(著)
探偵と
真正面
(
まとも
)
に視線を触れ合わせずに、ペンを握ったその指先だけに眼を留めているということが、どんなに私の心をしてこの言いにくいことをも
陰獣トリステサ
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
妾
(
わたし
)
を
生命
(
いのち
)
がけの旅行に連れ出して行った男にソックリなんですもの……
背
(
せ
)
の高さと色が違うだけで、
真正面
(
まとも
)
から見ているとホントに兄弟かと思う位よ。
支那米の袋
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
「つまり心の
何処
(
どこ
)
かにちよつと忍ばせて置いた小つちやなことから大きな秘密が生れることにもなるのだわね。」と云つて今度は
真正面
(
まとも
)
に彼を凝視した。
静物
(新字旧仮名)
/
十一谷義三郎
(著)
それは雪洞の灯を掻き立てようとしたのであろう、お筆は雛段の方に少しにじり寄っていて、半ば開いた口が、
紅
(
べに
)
の灯を
真正面
(
まとも
)
にうけていたからだった。
絶景万国博覧会
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
向うから小さな人影が来た、生きて動いて、何か帽子に幽かな円光を
発
(
た
)
てて。陽を
真正面
(
まとも
)
に受けたのであった。
フレップ・トリップ
(新字新仮名)
/
北原白秋
(著)
子供は
此方
(
こっち
)
へ振りむいた。今まで炉の前にしゃがんでいたのが、
燈火
(
あかり
)
を
真正面
(
まとも
)
にうけてひょいと
起
(
た
)
ちあがったところを見ると、それが
背高
(
のっぽう
)
のジャッケに
酷似
(
そっくり
)
ではないか。
生さぬ児
(新字新仮名)
/
モーリス・ルヴェル
(著)
烈しい日の光は
真正面
(
まとも
)
に射して、飛んで来る球のかたちすら仙太の目には見えなかつたのである。
破戒
(新字旧仮名)
/
島崎藤村
(著)
すると
霊岸町
(
れいがんちょう
)
の手前で、田舎丸出しの十八、九の色の
蒼
(
あお
)
い娘が、突然
小間物店
(
こまものみせ
)
を
拡
(
ひろ
)
げて、避ける間もなく、私の外出着の
一張羅
(
いっちょうら
)
へ
真正面
(
まとも
)
に浴せ懸けた。私は
詮
(
せん
)
すべを失った。
深川の散歩
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
いっそ馬鹿とか
白痴
(
たわけ
)
とか云われたのならば、清吉も左ほどには感じなかったかも知れないのですが、ふだんから自分も苦に
患
(
や
)
んでいる自分の弱味を
真正面
(
まとも
)
から突かれたので
三浦老人昔話
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
てれ隠しに
恐々
(
こは/″\
)
それをも窺いてみると三畳位ゐで、而かも日が
真正面
(
まとも
)
に当つてゐる。
岬の端
(新字旧仮名)
/
若山牧水
(著)
あの白帆が、だんだんこちらへ風に追われて来て、
真正面
(
まとも
)
にこの村の
岬
(
みさき
)
へ吹きつけられ、岩の上に打ちあげられて、そこに難破するのではなかろうかと為吉は自分で作った恐怖におそわれるのでした。
少年と海
(新字新仮名)
/
加能作次郎
(著)
昼の怖い
小父
(
おじ
)
さんの顔を、
真正面
(
まとも
)
に見たからである。
新書太閤記:04 第四分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
庄三郎はその様子を
真正面
(
まとも
)
から見やったが
神州纐纈城
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
草履取の中間が
真正面
(
まとも
)
から賞め立てた。
仇討三態
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
何日
(
いつ
)
であったか寝床を出て鉢前の処の雨戸を繰ると、あの
真正面
(
まとも
)
に北を受けた縁側に落葉交りの雨が顔をも出されないほど吹付けている。
別れたる妻に送る手紙
(新字新仮名)
/
近松秋江
(著)
合理化の一つの条件として、例えば労働時間の延長を断行しようとする場合、それが職工たちの反感を
真正面
(
まとも
)
に買うことは分り切っている。
工場細胞
(新字新仮名)
/
小林多喜二
(著)
そして、何気なく彼女がこちらに向けた顔と、レンズを透してばったり
真正面
(
まとも
)
に会った時、中野は思わず、低くはあったが
地図にない島
(新字新仮名)
/
蘭郁二郎
(著)
西から
真正面
(
まとも
)
に吹きおろしたのが、暫らくして北の方から落して来た。やがて、風は山を離れて、平野の方から、山に向ってひた吹きに吹きつけた。
死者の書
(新字新仮名)
/
折口信夫
(著)
こんな話を聞かされて私たらずとも
真正面
(
まとも
)
に信じ得る人間が幾人あったであろうか? 気品が高いとか眼鼻が整っているとかいうのならばともかくも
ナリン殿下への回想
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
けれどももし
真正面
(
まとも
)
に顔を合わせて、又悪魔と間違えられでもしては大変と思いましたから、そっと扉に隙間を作ってそこからそっと眼ばかり出して様子を見ておりました。
白髪小僧
(新字新仮名)
/
夢野久作
、
杉山萠円
(著)
不気味な死人には慣れっこになっているわしでさえ、
真正面
(
まとも
)
に見られんくらいですからね。
見開いた眼
(新字新仮名)
/
モーリス・ルヴェル
(著)
ちやうど
真正面
(
まとも
)
にその光線の方へ向つて走つてゐる庄造は、鋼鉄のやうにぴか/\光る舗装道路の眩しさを避けて、俯向き加減に、首を真横にしながら、森の公設市場前を過ぎ
猫と庄造と二人のをんな
(新字旧仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
この次郎左衛門に意趣遺恨があったら、どうぞ遠慮なしに
真正面
(
まとも
)
からぶつかって来て下さい。ようござんすか。なんでもまともから男らしく……薄っ暗い所で卑怯な真似をしないで
籠釣瓶
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
すると
忽
(
たちま
)
ち
河岸
(
かし
)
の方から
颯
(
さっ
)
とばかり
真正面
(
まとも
)
に吹きつけて来る川風の涼しさ。
散柳窓夕栄
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
親分藤吉一流の手だ、こう
真正面
(
まとも
)
にどやしつけられては、江戸っ子の手前勘次と彦兵衛、即座に
仏頂面
(
ぶっちょうづら
)
を忘れて、勇みに勇んで駈け出さざるを得ない。彦の合羽の裾を
銜
(
くわ
)
えて、甚右衛門が先に立った。
釘抜藤吉捕物覚書:08 無明の夜
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
春はいま梅花の盛り七面鳥が風おこるたびに
真正面
(
まとも
)
向きて来る
風隠集
(新字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
その入り込んだ蔭になっていたボートの
艫
(
とも
)
に、これこそ全く思いもかけなかった少女が独り、
真正面
(
まとも
)
にこちらを向いたまま腰をおろしているのである。
植物人間
(新字新仮名)
/
蘭郁二郎
(著)
しかも探偵はまだ凝乎と
真正面
(
まとも
)
に私と眼を見合ったままなかなか容易に口を開かぬのであった。
陰獣トリステサ
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
初めは誰だってピストルを
真正面
(
まとも
)
に見る勇気もあるまいが、一度決心がつくと、おそらくそのピストルから眼が離せなくなって、魅せられたようにじっとそれを見つめるだろう。
ピストルの蠱惑
(新字新仮名)
/
モーリス・ルヴェル
(著)
ちやうど
真正面
(
まとも
)
にその光線の方へ向つて走つてゐる庄造は、鋼鉄のやうにぴか/\光る舗装道路の眩しさを避けて、俯向き加減に、首を真横にしながら、森の公設市場前を過ぎ
猫と庄造と二人のをんな
(新字旧仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
死人のような青い顔をして、私の寝台の前に突立った彼は、私の顔を
真正面
(
まとも
)
に見得ないらしく、ガックリと頭を
低
(
た
)
れた。間もなく長い房々した
髪毛
(
かみのけ
)
の蔭からポタポタと涙を
滴
(
た
)
らし初めた。
冥土行進曲
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
春まひる
真正面
(
まとも
)
の塔の照りしらむ
廻縁
(
ゆか
)
高うしてしづかなる土
白南風
(新字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
女あるじは
真正面
(
まとも
)
に私の顔を見て
霜凍る宵
(新字新仮名)
/
近松秋江
(著)
途端にもし私が身をねじらなかったならば、私は風を切って飛んで来たその重い物体を
真正面
(
まとも
)
に身に受けて向うより先にこちらが
仰
(
の
)
け反らなければならなかったであろう。
陰獣トリステサ
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
ちょうど
真正面
(
まとも
)
にその光線の方へ向って走っている庄造は、鋼鉄のようにぴかぴか光る舗装道路の
眩
(
まぶ
)
しさを避けて、
俯向
(
うつむ
)
き加減に、首を真横にしながら、森の公設市場前を過ぎ
猫と庄造と二人のおんな
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
すると、男はゆったりと女房の方へ向き直り、その眼の中を
真正面
(
まとも
)
に見すえて
生さぬ児
(新字新仮名)
/
モーリス・ルヴェル
(著)
呉一郎は
真正面
(
まとも
)
に太陽に向けた顔をニッコリとさせながら、その玉を黒い
兵児帯
(
へこおび
)
の中にクルクルと捲き込んだが、大急ぎで裾をからげて前に
屈
(
かが
)
みながら、両手でザクザクと焼けた砂を掘返し初めた。
ドグラ・マグラ
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
山は暮れぬましぐらに
駛
(
はし
)
る自動車の
真正面
(
まとも
)
の空の宵の満月
海阪
(新字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
確かに私と
真正面
(
まとも
)
に顔を合わせながら、懐かしむどころか! 涼しい
眸
(
ひとみ
)
に、憤りとも
怨
(
うら
)
みとも付かぬ非難の色をうかべて、涙ぐみながら唇を
噛
(
か
)
み締めて、じっと
睨
(
にら
)
み付けているのです。
墓が呼んでいる
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
が、それきり声が聞えて来る様子がないので、書きさしの日記帳を卓の上に置き、立って病室に行ってみた。病人は静かに仰向いて、顔を
真正面
(
まとも
)
に天井に向けて寝ているようであった。
鍵
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
事務員風の男は頭蓋骨をメチャメチャに砕かれていたが、その悽惨な死に顔は、
真正面
(
まとも
)
に眼を当てられない位であった。その枕元に突立った三人は、無表情に弛んだ真青な顔を見交すばかりであった。
オンチ
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
提
(
さ
)
げて伏戸に
闖入
(
ちんにゅう
)
し鉄瓶の口を春琴の頭の上に
傾
(
かたむ
)
けて
真正面
(
まとも
)
に熱湯を
春琴抄
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
真正面
(
まとも
)
にカ氏の顔を眺めているにも忍びぬ気がしたのであった。
ナリン殿下への回想
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
“真正面”の意味
《名詞》
正しく正面を向くこと。その方向や位置。
相手や物事に相対すること。そのような姿勢や位置づけ。
(出典:Wiktionary)
真
常用漢字
小3
部首:⽬
10画
正
常用漢字
小1
部首:⽌
5画
面
常用漢字
小3
部首:⾯
9画
“真正”で始まる語句
真正
真正直
真正中
真正直者
真正真銘
真正証銘