發作ほつさ)” の例文
新字:発作
御米およねなほした。宗助そうすけ途方とはうれて、發作ほつさをさまるのをおだやかにつてゐた。さうして、ゆつくり御米およね説明せつめいいた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
いやよ、厭よ、ヘレン!」私は胸が一杯になり、何も云へなくなつた。私が泣くまいと懸命になつてゐる間に、ヘレンにはせき發作ほつさが起つた。
うして人々ひと/″\刻々こく/\運命うんめいせまられてくおしな病體びやうたい壓迫あつぱくした。おしな發作ほつさんだときかすかな呼吸こきふとまつた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
人の心中には舌頭にのぼすべからざる發作ほつさあり、爭鬪あり。是れ吾人の清廉なる守護神の膝を惡魔の前に屈する時なり。
その夜、俵屋の主人孫右衞門は、二度も三度もくり返して起る發作ほつさに惱まされて、手代の金之助を呼びました。
銭形平次捕物控:311 鬼女 (旧字旧仮名) / 野村胡堂(著)
それは毎年夏の末から秋へかけて私を子供時分から苦しみなやませてゐた持病喘息ぜんそく發作ほつさであつた。
処女作の思い出 (旧字旧仮名) / 南部修太郎(著)
ほねから肉を噛み取らうとしさうな發作ほつさを起したときには、それを取り抑へたり、すぐ傍にゐて手を藉させるだらうからね——
電車でんしやなかでは、御米およね何時頃いつごろめたらう、めたあと心持こゝろもち大分だいぶくなつたろう、發作ほつさももうおこ氣遣きづかひなからうと、すべわるくない想像さうざうばかりおもうかべた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
幸ひ孫右衞門の發作ほつさも止んでスヤスヤと眠るのを、お春は辛抱強く眺めてゐたのです。その代り三萬兩の身代は、間違ひもなく、お春の手に握つたも同樣です。
銭形平次捕物控:311 鬼女 (旧字旧仮名) / 野村胡堂(著)
しな夕刻ゆふこくからにはかに痙攣けいれんおこつた。身體からだがびり/\とゆるぎながらあしめられるやうにうしろつた。痙攣けいれん時々ときどき發作ほつさした。そのたびごと病人びやうにんられないほど苦惱くなうする。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
けれども、或る夜は發作ほつさあへぎ迫る胸をおさへながら、私は口惜くやしさに涙ぐんだ。る日は書きつかへて机のまはりにむなしくたまつた原稿紙のくづを見詰めながら、深い疲れに呆然ばうぜんとなつてゐた。
処女作の思い出 (旧字旧仮名) / 南部修太郎(著)
御米およね發作ほつさやうやいた。いまでは平日いつもごとそとても、うちことがそれほどゝらないぐらゐになつた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
「まあ、いゝ氣持ちだこと!——先程さつきせき發作ほつさで少し疲れたわ。何だか眠れさうよ、でも行つてしまつては厭よ、ジエィン。私、あなたに側にゐてもらひたいの。」
になつて痙攣けいれん間斷かんだんなく發作ほつさした。熱度ねつど非常ひじやう昂進かうしんした。液體えきたいの一てきをも攝取せつしゆすることが出來できないにもかゝはらず、みだれたかみごとつたひておちるかとおもふやうにあせたまをなしてれた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
この三年ばかりは持病のしやく發作ほつさがひどく、その上強度のヒステリーで、蒼白く痩せ細つた顏も、針金のやうな手足にも、最早何んの魅力もなく、家の中の實權は、若くて綺麗で才氣走つて
その激しいヒステリーの發作ほつさのことは、平次も聽かないではありませんが、手踊りの師匠のお組と掴み合ひの喧嘩をした後の凄まじい發作は、恐らく因業で聞えた母親さへも、三しやを避ける外は
少し發作ほつさが收まると、孫右衞門は四方を見廻すのです。
銭形平次捕物控:311 鬼女 (旧字旧仮名) / 野村胡堂(著)