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痕迹
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こんせき
ふりがな文庫
“
痕迹
(
こんせき
)” の例文
しかもその修養のうちには、自制とか
克己
(
こっき
)
とかいういわゆる漢学者から受け
襲
(
つ
)
いで、
強
(
し
)
いて
己
(
おのれ
)
を
矯
(
た
)
めた
痕迹
(
こんせき
)
がないと云う事を発見した。
長谷川君と余
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
その詩人が、五日ばかりで帰ってしまうと、その時
齎
(
もたら
)
して来た
結婚談
(
けっこんばなし
)
が、笹村の胸に薄い
痕迹
(
こんせき
)
を留めたきりで、下宿はまた
旧
(
もと
)
の寂しさに
復
(
かえ
)
った。
黴
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
かつて赫々たる勲功を立て、かつて権謀術数の勢力を振った事があるも、もはやその事は過去に属し、今日なんらの
痕迹
(
こんせき
)
を留めなくなっても、なお恐るる。
勢力の中心を議会に移すべし
(新字新仮名)
/
大隈重信
(著)
何時晴れるともなく彼女の低気圧も晴れて行った後で、あれほど岸本の心を
刺戟
(
しげき
)
した彼女の憂鬱が
何処
(
どこ
)
にその
痕迹
(
こんせき
)
を
留
(
とど
)
めているかと思われるほど、その日は
冴
(
さ
)
え
冴
(
ざ
)
えとした眼付をしていた。
新生
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
天明の余勢は寛政、文化に及んで漸次に衰え、文政以後また
痕迹
(
こんせき
)
を留めず。
俳人蕪村
(新字新仮名)
/
正岡子規
(著)
▼ もっと見る
故伊能嘉矩氏の言には、陸中遠野地方でも山の頂の草原の間に、路らしいものの
痕迹
(
こんせき
)
あるところは、山男の往来に当っていると称して、露宿の人がこれを避けるのが普通だったとの話である。
山の人生
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
けれども
両人
(
ふたり
)
が十五六間過ぎて、又話を遣り出した時は、どちらにも、そんな
痕迹
(
こんせき
)
は更になかった。最初に口を切ったのは代助であった。
それから
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
十九から
中間
(
ちゆうかん
)
の六年間と云ふものを、不思議な世界の空気に
浸
(
ひた
)
つて、何か特殊な
忌
(
いま
)
はしい
痕迹
(
こんせき
)
が顔や挙動に
染込
(
しみこ
)
んででもゐるやうに、自分では気がさすのであつたが
或売笑婦の話
(新字旧仮名)
/
徳田秋声
(著)
天明の余勢は寛政、文化に及んで漸次に衰へ、文政以後
復
(
また
)
痕迹
(
こんせき
)
を留めず。
俳人蕪村
(新字旧仮名)
/
正岡子規
(著)
結婚後
今日
(
こんにち
)
に至るまでの間に、明らかな太陽に黒い斑点のできるように、思い違い
疳違
(
かんちがい
)
の
痕迹
(
こんせき
)
で、すでにそこここ
汚
(
よご
)
れていた。
明暗
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
そうした
劃期的
(
かっきてき
)
の悲しみは悲しみとしても、彼は何か小さい自身の人生の大部の
痕迹
(
こんせき
)
が、その質素な一室の
煙草
(
たばこ
)
の
脂
(
やに
)
に
燻
(
いぶ
)
しつくされた天井や柱、所々骨の折れた障子
仮装人物
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
彼の処置には少しも人工的な
痕迹
(
こんせき
)
を
留
(
とど
)
めない、ほとんど自然そのままの利用に過ぎないというのが彼の大いなる誇りであった。
行人
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
彼女は眼を
俯
(
ふ
)
せて、自分の
傍
(
そば
)
を
擦
(
す
)
り抜けた。その時自分は彼女の
瞼
(
まぶた
)
に涙の宿った
痕迹
(
こんせき
)
をたしかに認めたような気がした。
行人
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
何らの不自然に
陥
(
おち
)
いる
痕迹
(
こんせき
)
なしにその約束を履行するのは今であった。彼女はお秀の
後
(
あと
)
を
追
(
おっ
)
かけるようにして宅を出た。
明暗
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
また
歩行
(
ある
)
かねばならぬ。見たくもない叡山を見て、いらざる豆の数々に、役にも立たぬ登山の
痕迹
(
こんせき
)
を、二三日がほどは、苦しき記念と残さねばならぬ。
虞美人草
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
彼等顔面の構造は神の成功の紀念と見らるると同時に失敗の
痕迹
(
こんせき
)
とも判ぜらるるではないか。全能とも云えようが、無能と評したって差し支えはない。
吾輩は猫である
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
一致の意味は
固
(
もと
)
より明暸で、この一致した意識の連続が我々の心のうちに浸み込んで、作物を離れたる後までも
痕迹
(
こんせき
)
を残すのがいわゆる感化であります。
文芸の哲学的基礎
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
然
(
しか
)
しあまり自分の好尚に
溺
(
おぼ
)
れて
遣
(
や
)
り過ぎた
痕迹
(
こんせき
)
を残したのもないとは云われません。第一編の「
硝子
(
ガラス
)
問屋」の中にはその筆があまり濃く出過ぎてはいますまいか。
木下杢太郎『唐草表紙』序
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
彼
(
かれ
)
は
平凡
(
へいぼん
)
な
宗助
(
そうすけ
)
の
言葉
(
ことば
)
のなかから、
一種
(
いつしゆ
)
異彩
(
いさい
)
のある
過去
(
くわこ
)
を
覗
(
のぞ
)
く
樣
(
やう
)
な
素振
(
そぶり
)
を
見
(
み
)
せた。
然
(
しか
)
しそちらへは
宗助
(
そうすけ
)
が
進
(
すゝ
)
みたがらない
痕迹
(
こんせき
)
が
少
(
すこ
)
しでも
出
(
で
)
ると、すぐ
話
(
はなし
)
を
轉
(
てん
)
じた。
門
(旧字旧仮名)
/
夏目漱石
(著)
言葉を改めて云うと人類発展の
痕迹
(
こんせき
)
はみんな一筋道に伸びて来るものだろうかとの疑問であります。
創作家の態度
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
私は
根来
(
ねごろ
)
の
茶畠
(
ちゃばたけ
)
と
竹藪
(
たけやぶ
)
を
一目
(
ひとめ
)
眺めたかった。しかしその
痕迹
(
こんせき
)
はどこにも発見する事ができなかった。
硝子戸の中
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
彼は平凡な宗助の言葉のなかから、一種異彩のある過去を
覗
(
のぞ
)
くような
素振
(
そぶり
)
を見せた。しかしそちらへは宗助が進みたがらない
痕迹
(
こんせき
)
が少しでも出ると、すぐ話を転じた。
門
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
古代
希臘
(
ギリシャ
)
の彫刻はいざ知らず、
今世仏国
(
きんせいふっこく
)
の画家が命と頼む裸体画を見るたびに、あまりに
露骨
(
あからさま
)
な肉の美を、極端まで描がき尽そうとする
痕迹
(
こんせき
)
が、ありありと見えるので
草枕
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
私の眼にはよくそれが
解
(
わか
)
っていました。よく解るように振舞って見せる
痕迹
(
こんせき
)
さえ明らかでした。
こころ
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
ある
刹那
(
せつな
)
には彼女は忍耐の
権化
(
ごんげ
)
のごとく、自分の前に立った。そうしてその忍耐には苦痛の
痕迹
(
こんせき
)
さえ認められない
気高
(
けだか
)
さが
潜
(
ひそ
)
んでいた。彼女は
眉
(
まゆ
)
をひそめる代りに微笑した。
行人
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
花袋君は六年前にカッツェンステッヒを翻訳せられて、翻訳の当時は非常に感服せられたが、今日から見ると、作為の
痕迹
(
こんせき
)
ばかりで、全篇作者の
拵
(
こしら
)
えものに過ぎないと
貶
(
へん
)
せられた。
田山花袋君に答う
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
後から顧みると、自ら進んでその任に当ったと思われる
痕迹
(
こんせき
)
もあった。三千代は固より喜んで彼の指導を受けた。三人はかくして、
巴
(
ともえ
)
の如くに回転しつつ、月から月へと進んで行った。
それから
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
余が
寂光院
(
じゃっこういん
)
の門を
潜
(
くぐ
)
って得た
情緒
(
じょうしょ
)
は、浮世を歩む年齢が逆行して
父母未生
(
ふもみしょう
)
以前に
溯
(
さかのぼ
)
ったと思うくらい、古い、
物寂
(
ものさ
)
びた、憐れの多い、捕えるほど
確
(
しか
)
とした
痕迹
(
こんせき
)
もなきまで、淡く消極的な情緒である。
趣味の遺伝
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
端書に満足した僕は、彼の封筒入の
書翰
(
しょかん
)
に接し出した時さらに
眉
(
まゆ
)
を開いた。というのは、僕の恐れを
抱
(
いだ
)
いていた彼の手が、
陰欝
(
いんうつ
)
な色に巻紙を染めた
痕迹
(
こんせき
)
が、そのどこにも見出せなかったからである。
彼岸過迄
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
甘
(
うま
)
く行かんので所々不自然の
痕迹
(
こんせき
)
が見えるのはやむをえない。
倫敦塔
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
「よほど苦心をなすった
痕迹
(
こんせき
)
が見えます」
吾輩は猫である
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
痕
常用漢字
中学
部首:⽧
11画
迹
漢検1級
部首:⾡
10画
“痕”で始まる語句
痕
痕跡
痕形
痕々