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疲憊
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ひはい
ふりがな文庫
“
疲憊
(
ひはい
)” の例文
ボンバルダの家の前まで来ると、力つきて
疲憊
(
ひはい
)
した馬は、もうそれ以上進もうとしなかった。そのためまわりに大勢の人が集まった。
レ・ミゼラブル:04 第一部 ファンテーヌ
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
そこを、空腹と、過労と、
疲憊
(
ひはい
)
の極に達した彼等が、あてもなくふらついていた。靴は重く、寒気は腹の芯にまでしみ通って来た。……
橇
(新字新仮名)
/
黒島伝治
(著)
が、次の歴史の時間になつたら、私の頭は
疲憊
(
ひはい
)
し切つてゐた。それに一夜漬の諳記では迚も立派な答案が書ける譯はなかつた。
受験生の手記
(旧字旧仮名)
/
久米正雄
(著)
かかる
疲憊
(
ひはい
)
した文明を、この
瀕死
(
ひんし
)
の小さなギリシャを、一掃しつくすような大砲のとどろきが来るのを、クリストフは期待していたのである。
ジャン・クリストフ:07 第五巻 広場の市
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
それを
如何
(
いかん
)
というに、この時
洋中
(
ようちゅう
)
風浪
(
ふうろう
)
暴
(
あら
)
くして、予が
外
(
ほか
)
に伴いたる
従者
(
じゅうしゃ
)
は皆
昏暈
(
こんうん
)
疲憊
(
ひはい
)
して、一人も
起
(
た
)
つこと
能
(
あた
)
わず。
瘠我慢の説:05 福沢先生を憶う
(新字新仮名)
/
木村芥舟
(著)
▼ もっと見る
其
(
そ
)
の
時
(
とき
)
女房
(
にようばう
)
は
非常
(
ひじやう
)
に
疲憊
(
ひはい
)
して
居
(
ゐ
)
たが、
我慢
(
がまん
)
をするからといつたばかりに
卯平
(
うへい
)
はぐつと
力
(
ちから
)
を
入
(
い
)
れて
引
(
ひ
)
き
出
(
だ
)
した。
土
(旧字旧仮名)
/
長塚節
(著)
性質なのだろうか、習慣なのだろうか、いや性質と習慣を分けることはできないだろうが、明らかな
疲憊
(
ひはい
)
とその陽気さとのギャップはいささか異様でいたましかった。
如何なる星の下に
(新字新仮名)
/
高見順
(著)
というのは親子夫婦
共働
(
きょうどう
)
し、雪を
踏
(
ふ
)
んで家に帰れば身体すでに
疲憊
(
ひはい
)
し、夕食を終ればたがいに物語るだけの元気も
失
(
う
)
せ、わずかに拾った
薪
(
たきぎ
)
に身を
暖
(
あたた
)
め、
安
(
あん
)
を
貪
(
むさぼ
)
るがごとき
輩
(
はい
)
が
自警録
(新字新仮名)
/
新渡戸稲造
(著)
大都市は、海にむかって
漏泄
(
ろうせつ
)
の道をひらいている。その大
暗渠
(
あんきょ
)
は、社会の
穢粕
(
かす
)
と
疲憊
(
ひはい
)
とを吸いこんでゆく。その汚水は、都市の秘密、腐敗、醜悪を湛えてまんまんと海に吐きだす。
地虫
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
弟子達の
困憊
(
こんぱい
)
と
恐惶
(
きょうこう
)
との間に在って孔子は独り気力少しも
衰
(
おとろ
)
えず、平生通り絃歌して
輟
(
や
)
まない。従者等の
疲憊
(
ひはい
)
を見るに見かねた子路が、いささか色を
作
(
な
)
して、絃歌する孔子の
側
(
そば
)
に行った。
弟子
(新字新仮名)
/
中島敦
(著)
この有様と、友の
面
(
おも
)
に現われた
疲憊
(
ひはい
)
の色とから、予は彼が前夜中寝床に就かずにいたのだと判断した。その室の構造と装飾とにおける明らかな意匠は、人を
眩惑
(
げんわく
)
し驚倒させるということであった。
しめしあわせ
(新字新仮名)
/
エドガー・アラン・ポー
(著)
兵士と工人、これは同一運命を荷っている双生児ではないだろうか? 昼間の
憔々
(
いら/\
)
しい労働は、二人を共に極度の
疲憊
(
ひはい
)
へ追いこんでいた。
武装せる市街
(新字新仮名)
/
黒島伝治
(著)
病気になる前の異常な知的緊張は、今もなお彼を
疲憊
(
ひはい
)
さしていたが、そういう緊張のあとにおいては、回復期の
倦怠
(
けんたい
)
でさえ一つの休息であった。
ジャン・クリストフ:07 第五巻 広場の市
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
極度の努力に彼は
疲憊
(
ひはい
)
しつくしていた。今は身体に力がなくて、三、四歩進んでは息をつき、壁によりかかって休んだ。
レ・ミゼラブル:08 第五部 ジャン・ヴァルジャン
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
兩方
(
りやうはう
)
が
疲憊
(
ひはい
)
して
勢
(
いきほひ
)
を
消耗
(
せうまう
)
する
季節
(
きせつ
)
の
變化
(
へんくわ
)
を
見
(
み
)
るまでは
其
(
そ
)
の
爭
(
あらそ
)
ひは
止
(
や
)
むことがない。
土
(旧字旧仮名)
/
長塚節
(著)
それは、松木ばかりではなかった。同年兵が
悉
(
ことごと
)
く、ふさぎこみ、
疲憊
(
ひはい
)
していた。そして、女のところへ行く。そのことだけにしか興味を持っていなかった。
渦巻ける烏の群
(新字新仮名)
/
黒島伝治
(著)
それとほとんど同時に両軍の
疲憊
(
ひはい
)
を語る珍しい一致であるが、ネーもナポレオンに歩兵を求めてきた。
レ・ミゼラブル:05 第二部 コゼット
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
享楽的な
疲憊
(
ひはい
)
した多くの小大家らが使徒だなどとあえて自称してるのは、実におかしなことだ。も少し混ざり物の少ない酒を民衆に注いでやったほうが、はるかによいのだ。
ジャン・クリストフ:11 第九巻 燃ゆる荊
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
貧窮
(
ひんきう
)
な
生活
(
せいくわつ
)
の
間
(
あひだ
)
から
數年來
(
すうねんらい
)
漸
(
やうや
)
く
蓄
(
たくは
)
へた
衣類
(
いるゐ
)
の
數點
(
すうてん
)
が
既
(
すで
)
に
其
(
そ
)
の一
片
(
ぺん
)
をも
止
(
とゞ
)
めないことを
知
(
し
)
つてさうして
心
(
こゝろ
)
に
悲
(
かな
)
しんだ。
汗
(
あせ
)
がびつしりと
髮
(
かみ
)
の
生際
(
はえぎは
)
を
浸
(
ひた
)
して
疲憊
(
ひはい
)
した
身體
(
からだ
)
をおつぎは
少時
(
しばし
)
惘然
(
ぼんやり
)
と
庭
(
には
)
に
立
(
た
)
てた。
土
(旧字旧仮名)
/
長塚節
(著)
いにしえのパリーにおいては、下水道の中にあらゆる
疲憊
(
ひはい
)
とあらゆる企図とが落ち合っていた。社会経済学はそこに一つの
残滓
(
ざんさい
)
を見、社会哲学はそこに一つの
糟粕
(
そうはく
)
を見る。
レ・ミゼラブル:08 第五部 ジャン・ヴァルジャン
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
身をささげて
尽瘁
(
じんすい
)
し、みずから自分の身を
疲憊
(
ひはい
)
さし、四方から自分自身を焼きつくし、樹脂の
炬火
(
たいまつ
)
のようにしばらくのうちに燃えつくしているが、彼の友もその一人だった。
ジャン・クリストフ:09 第七巻 家の中
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
疲憊
(
ひはい
)
しきった白露兵は、銃声にも無関心だった。振りむきもしなかった。
武装せる市街
(新字新仮名)
/
黒島伝治
(著)
現代の芸術家らの力を
疲憊
(
ひはい
)
さしてる、繊細な技巧などに気をもまないようにしたまえ。君は万人に話しかけるのだ。万人の言葉を用いたまえ。言葉には高尚も下等もないのだ。
ジャン・クリストフ:10 第八巻 女友達
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
彼はもはや悲哀の流れも
涸
(
か
)
れつくしたという状態に、
疲憊
(
ひはい
)
の最後の一段にあった。悲しみも言わば凝結してしまっていた。人の魂についても、絶望の凝塊とでも言うべきものがある。
レ・ミゼラブル:08 第五部 ジャン・ヴァルジャン
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
数世紀来必要上精力を消費してきて
疲憊
(
ひはい
)
しつくし、不動心の境地を渇望しながらそれに到達し得ないでいるそれらの、東方から根こぎにされた人々のうちに、ただ一つのもののみが
ジャン・クリストフ:09 第七巻 家の中
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
疲憊
(
ひはい
)
の極にまたふと探りあてたその問題を、最後に今一度決定的に解決してみようと努めた。自首すべきか? 默しているべきか?——彼は何物をも
明瞭
(
めいりょう
)
に認めることができなかった。
レ・ミゼラブル:04 第一部 ファンテーヌ
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
じっと
椅子
(
いす
)
に腰をかけて、雨に
濡
(
ぬ
)
れ頭は重く胸はあえぎながらも、自分と同じように
疲憊
(
ひはい
)
しきった音楽の中に浸り込んだ。シューベルトの未完成交響曲の楽句が次々に聞こえてきた。
ジャン・クリストフ:07 第五巻 広場の市
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
瀕死
(
ひんし
)
の彼は、あたかも何者かを認めたがように、
恍惚
(
こうこつ
)
として身を震わしながら声高に、それらの最後の言葉を発した。言い終えた時に、彼の目は閉じた。努力のために
疲憊
(
ひはい
)
しつくしたのであった。
レ・ミゼラブル:04 第一部 ファンテーヌ
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
彼らは熱情に欠けてると言ってはいけない。諸君とても、すぐに
疲憊
(
ひはい
)
してしまうではないか。……否、予が説くのは諸君の秩序をではない。予の秩序は諸君のそれと同様のものではない。
ジャン・クリストフ:12 第十巻 新しき日
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
翌日、眼が
覚
(
さ
)
めると
眩暈
(
めまい
)
がしていた。飲酒のあとのように
疲憊
(
ひはい
)
していた。しかし心の底には、前夜彼を圧倒した陰惨強力な光明の反映が残っていた。彼はその光明をふたたび輝かせようとした。
ジャン・クリストフ:05 第三巻 青年
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
けれども彼女は、全然の孤独の中に引きこもってばかりいたし、また不眠の数週間を過ごしたため、心身は
疲憊
(
ひはい
)
し神経は荒立っていたので、きわめて不道理な恐怖をも想像しがちになっていた。
ジャン・クリストフ:11 第九巻 燃ゆる荊
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
積もり積もった疲労にとらえられ、意志の門口で永久にうろついてる奇怪な
妄想
(
もうそう
)
にとらえられるのである。クリストフはその未知の闇夜の中に埋もれ、焦慮し
疲憊
(
ひはい
)
しながら眼を覚まそうと欲した。
ジャン・クリストフ:11 第九巻 燃ゆる荊
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
精神はそれからそれへと飛び回って、
疲憊
(
ひはい
)
しつくさんとする焦燥のうちに漂っていた。たえず形象が眼にちらついて、
眩暈
(
めまい
)
がしていた。彼は初めそれを、過度の疲労と春の日の
憔悴
(
しょうすい
)
とのせいにした。
ジャン・クリストフ:05 第三巻 青年
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
姉よりもずっときれいで、はるかにそしてあまりに繊細すぎる貧血し
疲憊
(
ひはい
)
した類型に属していて、父親に似寄っていた。彼は
怜悧
(
れいり
)
で、悪い本能に富み、甘ったるい調子で、感情を外に現わさなかった。
ジャン・クリストフ:12 第十巻 新しき日
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
沈黙に飢えてるそういう精神
疲憊
(
ひはい
)
の状態にあっては
ジャン・クリストフ:09 第七巻 家の中
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
“疲憊”の意味
《名詞》
疲 憊(ひはい)
疲れて弱ること。
(出典:Wiktionary)
疲
常用漢字
中学
部首:⽧
10画
憊
漢検1級
部首:⼼
16画
“疲”で始まる語句
疲
疲労
疲勞
疲弊
疲労困憊
疲曳
疲瘠
疲切
疲果
疲癃