トップ
>
生甲斐
>
いきがい
ふりがな文庫
“
生甲斐
(
いきがい
)” の例文
それゆえ貴女ほど信実の貴い味を、ほんとに味わったものは少ないであろう。その点で貴女は、真に
生甲斐
(
いきがい
)
ある生活をして来たといわれる。
マダム貞奴
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
ただ何とはなしに
生甲斐
(
いきがい
)
があるというような心持、女としての充実した喜びが海の潮のように迫るを感ぜずにはいられません。
大菩薩峠:41 椰子林の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
殊
(
こと
)
に、
既成
(
きせい
)
政治家の張り
廻
(
めぐ
)
らした
奸悪
(
かんあく
)
な組織や習慣を一つ一つ
破砕
(
はさい
)
して行くことは、子路に、今まで知らなかった一種の
生甲斐
(
いきがい
)
を感じさせる。
弟子
(新字新仮名)
/
中島敦
(著)
そしてずうっとこんにちに及んでいる。いまのメリイ・カルヴィンは、闘牛によってのみ
生甲斐
(
いきがい
)
を感じているといっても、過言ではあるまい。
踊る地平線:07 血と砂の接吻
(新字新仮名)
/
谷譲次
(著)
その話から又三郎が受けた感じは、かれらの生活の困難さではなくて、困難のなかにある
生甲斐
(
いきがい
)
、困難にうち
克
(
か
)
ってゆく緊張の力づよさだった。
野分
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
▼ もっと見る
私
(
わたくし
)
は
生前
(
せいぜん
)
何事
(
なにごと
)
も
皆
(
みな
)
気随
(
きずい
)
気侭
(
きまま
)
に
押
(
お
)
しとおし、
自分
(
じぶん
)
の
思
(
おも
)
いが
協
(
かな
)
わなければこの
世
(
よ
)
に
生甲斐
(
いきがい
)
がないように
考
(
かんが
)
えて
居
(
お
)
りました。
小桜姫物語:03 小桜姫物語
(新字新仮名)
/
浅野和三郎
(著)
なんのよろこびも、
生甲斐
(
いきがい
)
もないまま、ぼくには、すでにはっきりと無意味だとわかったその日常をくりかえすことのほかに、できることがなかった。
煙突
(新字新仮名)
/
山川方夫
(著)
彼女は旦那の忘れ形見ともいうべきお新と共に、どうかしてもっと
生甲斐
(
いきがい
)
のあることを探したいと心に思っていた。
ある女の生涯
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
ええ、
生甲斐
(
いきがい
)
の
無
(
な
)
い
生活
(
せいかつ
)
だ、
如何
(
いか
)
にも
残念
(
ざんねん
)
なことだ、この
苦痛
(
くつう
)
な
生活
(
せいかつ
)
がオペラにあるような、アポテオズで
終
(
おわ
)
るのではなく、これがああ
死
(
し
)
で
終
(
おわ
)
るのだ。
六号室
(新字新仮名)
/
アントン・チェーホフ
(著)
江戸へつれて行ってやる、——加州領へ入ってから、いやな事ばかりだったが、お通さん、——お前に逢ってからは、この私も
生甲斐
(
いきがい
)
があるように思った
天保の飛行術
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
彼はこれでこそ、
生甲斐
(
いきがい
)
があると信じていたのだから、彼の健康は、彼に取って、他人の倍以上に価値を有っていた。彼の頭は、彼の肉体と同じく確であった。
それから
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
ああいう虹にうつしとめて置くということは——何だか分らないが、一生の
生甲斐
(
いきがい
)
になるように思える
百喩経
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
そして唯一の
生甲斐
(
いきがい
)
のある仕事は、晩寝る時に、ミンナが帰って来るまでの数多い日数の一つを、あたかも小学生徒のように、自分の
暦
(
こよみ
)
の上に塗り消すことであった。
ジャン・クリストフ:04 第二巻 朝
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
意気地のない亭主の事などは、永久にお前の記憶から抹殺して、
生甲斐
(
いきがい
)
のある生き方をして呉れ
罠に掛った人
(新字新仮名)
/
甲賀三郎
(著)
友「止めてはいけません、
何卒
(
どうぞ
)
離しておくんなさい、
生甲斐
(
いきがい
)
のない身体、殺しておくんなさい」
業平文治漂流奇談
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
毎日の日常がピリピリと緊張して、そのことがむしろ
生甲斐
(
いきがい
)
を感じさせるほどでした。放って置けない相手が同じ屋根の下にいることは、実際張り合いがあるものですねえ。
ボロ家の春秋
(新字新仮名)
/
梅崎春生
(著)
併し、彼女達を目の前に愛することによって、その開墾地の生活に明るい華やかな
生甲斐
(
いきがい
)
を見出していた若者達は、それでは
鎮
(
しずま
)
らなかった。彼等は開墾地を飛び出して行った。
熊の出る開墾地
(新字新仮名)
/
佐左木俊郎
(著)
卑屈になって、何の
生甲斐
(
いきがい
)
もない自分の身の置き場が、妙にふわふわとして浮きあがってゆく。胴体を荒繩でくくりあげて、空高く起重機で吊りさがりたいような疲れを感じる。
新版 放浪記
(新字新仮名)
/
林芙美子
(著)
社会的に地位と名誉のある方の御言葉は、たといウソでもホントになり、何も知らない純な少女の言葉は、たとい事実でもウソとなって行く世の中に、何の
生甲斐
(
いきがい
)
がありましょう。
少女地獄
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
兵馬
(
へいば
)
はすでに遠い昔の物語である。世の中はのんびりしている。こういうことにでも大げさな儀礼をつくし、式例を立てて騒ぐのでなければ
生甲斐
(
いきがい
)
がないと言っているように見えるのである。
魔像:新版大岡政談
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
こんな
辛
(
つら
)
い時勢に生れて、などと悔やむ気がない。かえって、こういう世に生れて
生甲斐
(
いきがい
)
をさえ感ぜられる。こういう世に生れて、よかった、と思う。ああ、誰かと、うんと戦争の話をしたい。
十二月八日
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
それまでに疑われ
疎
(
うと
)
まれたる身の
生甲斐
(
いきがい
)
なし、とてもの事
方様
(
かたさま
)
の手に
惜
(
おし
)
からぬ命
捨
(
すて
)
たしと
云
(
いう
)
は、正しく木像なり、あゝら怪しや、
扨
(
さて
)
は一念の恋を
凝
(
こら
)
して、作り
出
(
いだ
)
せしお辰の像に、我魂の
入
(
いり
)
たるか
風流仏
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
いつも養子は
口癖
(
くちぐせ
)
にして、女性の
生甲斐
(
いきがい
)
なさを嘆いていた。
九月一日
(新字新仮名)
/
水上滝太郎
(著)
汗くさく
生甲斐
(
いきがい
)
ありと人に群れ
六百五十句
(新字新仮名)
/
高浜虚子
(著)
ところで、男というものは、一片の鉄を
鍛
(
きた
)
えるにしてからが、人と違った働きをしてみせなけりゃあ、
生甲斐
(
いきがい
)
が
無
(
ね
)
えのだ。
大菩薩峠:26 めいろの巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
自分にとっては
生甲斐
(
いきがい
)
も希望も、すべてこの家と良人のなかにあること、女としてはこれからほんとうの生活が始まるのだということを、考えるのだった。
日本婦道記:藪の蔭
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
鬼
(
おに
)
の
心
(
こころ
)
になり
切
(
き
)
った
私
(
わたくし
)
は、
両親
(
りょうしん
)
の
好意
(
こうい
)
に
背
(
そむ
)
き、
同時
(
どうじ
)
に
又
(
また
)
天
(
てん
)
をも
人
(
ひと
)
をも
怨
(
うら
)
みつづけて、
生甲斐
(
いきがい
)
のない
日子
(
ひにち
)
を
算
(
かぞ
)
えていましたが、それもそう
長
(
なが
)
いことではなく
小桜姫物語:03 小桜姫物語
(新字新仮名)
/
浅野和三郎
(著)
母の歿したのちは男の手一つで女中や婆あやや書生を使い、私を育てて来た父には
生甲斐
(
いきがい
)
として考証詮索の楽しみ以外には無いように見えたが、やはり寂しいらしかった。
東海道五十三次
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
八つ刺した串が一本
大洋
(
タイヤン
)
の一銭とかで、終日砂ほこりにさらされて真っ白になっているのを、売れても売れなくても一向平気に、彼は
呶鳴
(
どな
)
ることそれ自身に
生甲斐
(
いきがい
)
を感じているらしく
踊る地平線:01 踊る地平線
(新字新仮名)
/
谷譲次
(著)
どこまでも半陰半晴の姿で、どこまでも片づかぬ不安が立て
罩
(
こ
)
めている。これでは
生甲斐
(
いきがい
)
がない、さればと云って死に切れない。何でも人のいない所へ行って、たった一人で住んでいたい。
坑夫
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
そして彼女のはなはだしい道楽——彼女が
生甲斐
(
いきがい
)
あるものとして、生きいるうちは一日も止めることの出来ないように思っていた、芸人を集めて、かるた遊びをしたり、
弄花
(
ろうか
)
の
慰
(
なぐさ
)
みにふけることは
明治美人伝
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
四苦八苦を百苦に重ねて死ぬならば、
生甲斐
(
いきがい
)
のない本人はもとより、
傍
(
はた
)
に見ている親しい人も殺すが慈悲と
諦
(
あき
)
らめられるかも知れない。しかしすやすやと寝入る児に死ぬべき何の
科
(
とが
)
があろう。
草枕
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
出来ぬと云わば
生甲斐
(
いきがい
)
のない男である。
草枕
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
生
常用漢字
小1
部首:⽣
5画
甲
常用漢字
中学
部首:⽥
5画
斐
漢検準1級
部首:⽂
12画
“生”で始まる語句
生
生命
生憎
生活
生涯
生々
生垣
生物
生温
生死