猟人かりうど)” の例文
旧字:獵人
大蛇だいじやなどが出て来て頭の禿げた猟人かりうどむところをやると、児童らは大ごゑをあげて、アア! などといふのでひどく愉快である。
イーサル川 (新字旧仮名) / 斎藤茂吉(著)
と、その泉のぢきそばに、ある若い猟人かりうどが寝てゐました。三人はそれとは気がつかないでにこ/\よろこんで水を浴びてゐました。
星の女 (新字旧仮名) / 鈴木三重吉(著)
猟人かりうど鸚鵡あうむがゐないので「おまへはどこへいつた」とひますと、鸚鵡あうむ子供こどものポツケツトのなかで「わたしはこ〻にゐる」とこたへました。
「木曽あたりの猟人かりうどには、夜でも眼の見える猫眼梟眼ねこめふくろめというのがあるそうだ。たぶん、そんな手あいでも殺ったかも知れんな」
顎十郎捕物帳:23 猫眼の男 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
たまには木樵きこり猟人かりうどがその光る石の所在を知っておってもよかりそうに思われるが、それが必ず炭焼であるには理由がある。
『今昔物語』に鹿の命に代わろうとしたひじりが、猟人かりうど松明たいまつの光で見合わせたという類の遭遇で、ほとんど凡人の発心ほっしんを催すような目であった。
雪国の春 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
「チエツ! そんなら君はたつた一発で雀が落せるかい? 鳥が打てない猟人かりうどは、殿様から直ぐ免職されちまふぜ。」
周一と空気銃とハーモニカ (新字旧仮名) / 牧野信一(著)
村の百姓のうちから選抜されたZ伯爵家の猟人かりうどらが、最近にとなりの領地で殺人や窃盗をもって告訴されたジプシーの一団を捕縛して、男たちは鎖につなぎ
と唄いながら、一人が狐になり、二人が猟人かりうどになって輪を作ったひもの両端を持って遊ぶ狐釣りの遊戯である。
吉野葛 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
「親は代々猟人かりうどなら、鳥娘か轤轤首ろくろくびだが、鬼の重三郎の娘だけに、こいつは島田に結った赤鬼ですよ」
銭形平次捕物控:130 仏敵 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)
しかし、それも一人ではありません。寺に逗留とうりゅうしているうちに遊びに来た猟人かりうどの案内で、三日分ほどの食糧を携帯したままで、山を分けて入り込んでしまったのです。
大菩薩峠:21 無明の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
三国ヶ嶽のふもとに、木樵きこり猟人かりうどのみ知る無蓋自然の温泉いでゆで、里の人は呼んで猿の湯という。
煩悩秘文書 (新字新仮名) / 林不忘(著)
さういふなかには、肝腎の猟そのものよりも、甲斐々々しい猟服を着込むで霧の深い野路のみちを口笛を吹きながら急ぐ、猟人かりうどらしい気持が好きで/\溜らぬ人達が少くなささうだ。
ルピック氏は、年功を猟人かりうどだが、さすがに、胸を悪くして、どっかへ出て行く。
にんじん (新字新仮名) / ジュール・ルナール(著)
リゼットが始めて彼にとらえられてサン・ラザールのシャトウ——すなわ牢屋ろうやへ送り込まれるときには生鳥いけどりうずらのように大事にされた。真にりょうを愛する猟人かりうどものを残酷ざんこくに扱うものではない。
売春婦リゼット (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
また「尾花帽子おばなぼうし」といって猟人かりうどなどがかぶる帽子があります。尾花で作り色糸でかがり、山鳥の羽などをあしらって、それは美しく作ります。こんなものが今時あるのかと思うほどであります。
手仕事の日本 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
猟人かりうどのピレオ出て来る寒き影はたや向ひの尾に立つらむか
海阪 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
空想の猟人かりうどはやはらかいカンガルウの編靴あみぐつに。
藍色の蟇 (新字旧仮名) / 大手拓次(著)
猟人かりうどもあれでは草臥くたびれてしまうだろう。
みな 猟人かりうども盗人もゐなかつた
優しき歌 Ⅰ・Ⅱ (新字旧仮名) / 立原道造(著)
するとあるとき、ライオンが猟人かりうどつかまつてしばられたとこへれいねづみて「おぢさん、つといで」とつてしばつたなわ噛切かみきつてやりました。
ある猟人かりうどの生れた遠い町からはる/″\使つかひが来ました。猟人のお父さまが病気で死にかゝつてゐるといふ知らせです。猟人はびつくりして
星の女 (新字旧仮名) / 鈴木三重吉(著)
いのししを撃つ猟人かりうどのよく知っている言葉に、ヌタともノタともいうのはまた同じ語だったかと思うが、これだけは九州ではニタと言って区別している。
地名の研究 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
たまには木樵きこり猟人かりうどがあっても、或いは時に山越えの途に迷った商人が偶然発見した場合があってもよさそうに思われるが、それが必ず炭焼であるから面白い。
影像すがた猟人かりうどLe Chasseur d'images
博物誌 (新字新仮名) / ジュール・ルナール(著)
ほそあしのおかげではしるわ、はしるわ、よつぽどとほくまでげのびたが、やぶのかげでそのうつくしいつのめがさヽ引掛ひつかかつてとう/\猟人かりうどにつかまつたとさ。
村の猟人かりうどの某という者が、五葉山ごようざんの中腹の大きな岩の陰において、この女に行逢ゆきあって互いに喫驚びっくりしたという話である。
山の人生 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
男の子がかう言ひますと、猟人かりうどは、よろこんでだき上げて
星の女 (新字旧仮名) / 鈴木三重吉(著)
少年(猟人かりうどの注意を自分の方へ向けるようにあせりながら)「おじさん兎の毛は白いんでしょう」
(新字新仮名) / 竹久夢二(著)
白鹿はくろくかみなりというつたえあれば、もしきずつけて殺すことあたわずば、必ずたたりあるべしと思案しあんせしが、名誉めいよ猟人かりうどなれば世間せけんあざけりをいとい、思い切りてこれをつに
遠野物語 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
もっとも深山の奥に僅少の平和を楽む者が、いや猟人かりうどだの岩魚釣いわなつりだの、材木屋だの鉱山師だの、また用もない山登りだのと、毎々きて邪魔をすることは鬱陶うっとうしいには相違ない。
山の人生 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
扮装ふんそうは、少年少女は平常着ふだんぎのままでもい、そのほかは子供の空想の産物で好いが、先生は威厳を損じない程度にのどかな人物であること、猟人かりうどはずんぐりしていて意気なあわてもの
(新字新仮名) / 竹久夢二(著)
多分はこの書が成長をした足利時代中期に、まだ若干の物知りの間に、記憶せられていた口碑かと思う。しかも猟人かりうどの神を援助した話は、ここではこれと結びついていた痕跡こんせきがない。
山の人生 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
少女は猟人かりうどの方を見て笑っている。兎も出て来て見ている。
(新字新仮名) / 竹久夢二(著)
前後三たびまでかかる不思議にい、そのたびごとに鉄砲をめんと心に誓い、氏神うじがみ願掛がんがけなどすれど、やがて再び思い返して、年取るまで猟人かりうどの業をつることあたわずとよく人に語りたり。
遠野物語 (新字新仮名) / 柳田国男(著)