トップ
>
流眄
>
ながしめ
ふりがな文庫
“
流眄
(
ながしめ
)” の例文
もう一遍、さも育ちきった若者らしく、じろりと私に
流眄
(
ながしめ
)
をくれ、かたりと岡持をゆすりあげ、頓着かまいのない様子で又歩き出す。
小景:ふるき市街の回想
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
法水は、
神学
(
セオロジイ
)
との観念上の対立以外に、嘲笑を浴びたような気がしたが、ジナイーダは相手の沈黙を
流眄
(
ながしめ
)
に見て、いよいよ冷静に
語
(
ことば
)
を続ける。
聖アレキセイ寺院の惨劇
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
と
莞爾
(
にっこり
)
した
流眄
(
ながしめ
)
の
媚
(
なまめ
)
かしさ。
熟
(
じっ
)
と見られて、青年は目を外らしたが、今は仕切の外に控えた、ボオイと
硝子
(
がらす
)
越に顔の合ったのを、手招きして
婦系図
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
老人は、皺だらけの顔を笑みくずして腰をのばすと、可愛くてたまらないというふうに、馬のほうへ
流眄
(
ながしめ
)
をつかいながら
キャラコさん:10 馬と老人
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
それから小光は顏を上げて三味線の調子を合せながらも尚時々三藏の方に
流眄
(
ながしめ
)
をくれる、其夜は醉うたやうな心持で歸つて來る。翌日又出掛ける。
俳諧師
(旧字旧仮名)
/
高浜虚子
(著)
▼ もっと見る
部屋の中のがらくたをチラと
流眄
(
ながしめ
)
で見たが、ふとその時、⦅徳行⦆だの⦅類い稀れなる人格⦆だのという言葉は止して
死せる魂:01 または チチコフの遍歴 第一部 第一分冊
(新字新仮名)
/
ニコライ・ゴーゴリ
(著)
と玄蕃の方へは、余計なことをと云わぬばかりの
流眄
(
ながしめ
)
を見せた。そして、雨龍へは顔の下からさし覗くようにして、甘い息に男を耐えなくまでした。
剣難女難
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
その半太夫は舞い乍ら、宗春の方を
流眄
(
ながしめ
)
に見た。そうして時々笑いかけさえした。媚に充ち充ちた態度であった。
天主閣の音
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
露西亜
(
ロシア
)
は地上のあらゆるものを乗越えて飛ぶ。他の国民と諸王国と諸帝国は傍へ寄って彼女に道を譲りながら、呆気にとられて
流眄
(
ながしめ
)
に見ている! ゴーゴリ
露西亜よ汝は飛ぶ
(新字新仮名)
/
百田宗治
(著)
そういって葉子はやせ細った顔にあらん限りの
媚
(
こ
)
びを集めて、
流眄
(
ながしめ
)
に岡を見やった。岡は思わず顔をそむけた。
或る女:2(後編)
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
慌てて追っても去りはしない、お
捻
(
ひね
)
りを献ずれば、じろりと
流眄
(
ながしめ
)
に見るばかり、また一段と声張り揚げて
釘抜藤吉捕物覚書:05 お茶漬音頭
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
もってむずかしいところへ理をつけたも実は敵を木戸近く引き入れさんざんじらしぬいた上のにわかの首尾
千破屋
(
ちはや
)
を学んだ秋子の
流眄
(
ながしめ
)
に俊雄はすこぶる勢いを得
かくれんぼ
(新字新仮名)
/
斎藤緑雨
(著)
ストーヴに暖められ、ピアノトリオに浮き立って、グラスが鳴り、
流眄
(
ながしめ
)
が光り、笑顔が湧き立っているレストランの天井には、物憂い冬の
蠅
(
はえ
)
が幾匹も舞っていた。
冬の日
(新字新仮名)
/
梶井基次郎
(著)
「あの灰色の牝馬は、俺に気があるんだよ。あいつは何時も俺に
流眄
(
ながしめ
)
ばかり遣つてる。ところで今日此の席で俺があいつに接唇してみせようが、皆の意見はどうだね。」
山間秘話
(新字旧仮名)
/
中原中也
(著)
男自慢の青年共の
流眄
(
ながしめ
)
も口説も、その他の微妙な挑発的手段も、彼女の心を惹くことが出来ない。
南島譚:02 夫婦
(新字新仮名)
/
中島敦
(著)
お春は微笑みの眼で鏡に
流眄
(
ながしめ
)
をくれながら、ふっくりと愛らしい
顎
(
あご
)
のあたりに
眉刷毛
(
まゆすりげ
)
をつかいつつ
艶容万年若衆
(新字新仮名)
/
三上於菟吉
(著)
北の方がなお気を付けて見ていると、左大臣はさっきから時々ちら/\と御簾の方へ
流眄
(
ながしめ
)
を使う。
少将滋幹の母
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
野性の持つあの大胆な、キラ/\となまめかしく光る
流眄
(
ながしめ
)
を送り、お綱はくるりとふりむいた。
禅僧
(新字旧仮名)
/
坂口安吾
(著)
妓
(
ぎ
)
の名を聞ける宮の
如何
(
いか
)
に言ふらん、と唯継は
陰
(
ひそか
)
に楽み待つなる
流眄
(
ながしめ
)
を彼の
面
(
おもて
)
に送れるなり。
金色夜叉
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
物を見る目はおのずから
流眄
(
ながしめ
)
になって、その末には軟らかい針をかけるようになりました。
大菩薩峠:14 お銀様の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
彼はちらっと
流眄
(
ながしめ
)
で調理人達が詰め寄り自分の方に目を注いでいるのを見やると、すっかりいい気になって、真黒く濡れて皺くちゃになった新聞紙をぽんと
鷹揚
(
おうよう
)
に卓の上へ投げた。
天馬
(新字新仮名)
/
金史良
(著)
この奇妙さがふたたびリゼットへ
稼業
(
かぎょう
)
に対しての、冒険の勇気を与えて彼女は
毎夜
(
まいよ
)
のような
流眄
(
ながしめ
)
を八方に配り出した。しかも今夜の「新らしい工夫」に気付くと
卒然
(
そつぜん
)
と彼女の勇気が
倍加
(
ばいか
)
した。
売春婦リゼット
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
隣の男を
流眄
(
ながしめ
)
に見る女か
ファウスト
(新字新仮名)
/
ヨハン・ヴォルフガング・フォン・ゲーテ
(著)
艶のある眼で、
流眄
(
ながしめ
)
ともつかず注目ともつかない眼ざしをすらりとさほ子の頬の赤い丸顔に投げ、徐ろに「はい」と応えるのであった。
或る日
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
この奇様な詩文の応答に、側の二人は
唖然
(
あぜん
)
となっていたが、熊城は苦々しく法水に
流眄
(
ながしめ
)
をくれて、事務的な質問を挾んだ。
黒死館殺人事件
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
時
(
とき
)
に、
若旦那
(
わかだんな
)
を
見
(
み
)
て、
露
(
つゆ
)
に
漆
(
うるし
)
したる
如
(
ごと
)
き、ぱつちりとした
瞳
(
ひとみ
)
を
返
(
かへ
)
して、
額髮
(
ひたひがみ
)
はら/\と
色
(
いろ
)
を
籠
(
こ
)
めつゝ、
流眄
(
ながしめ
)
に
莞爾
(
につこり
)
した。
みつ柏
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
「世間でよりより噂さにのぼつてることを聞かねえだかね?」と、額に瘤のある男がじろりと相手の顔へ不機嫌さうな
流眄
(
ながしめ
)
をくれながら、つづけた。
ディカーニカ近郷夜話 前篇:03 ソロチンツイの定期市
(新字旧仮名)
/
ニコライ・ゴーゴリ
(著)
といって、板壁に頭を凭らせて陰気に煙草の煙を吹上げている廿歳ばかりの中形美人の方へ
流眄
(
ながしめ
)
をし
魔都
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
野性の持つあの大胆な、キラキラとなまめかしく光る
流眄
(
ながしめ
)
を送り、お綱はくるりとふりむいた。
禅僧
(新字新仮名)
/
坂口安吾
(著)
検疫官の目は事務長への
挨拶
(
あいさつ
)
もそこそこに、思いきり
派手
(
はで
)
な装いを凝らした葉子のほうに吸い付けられるらしかった。葉子はその目を迎えて情をこめた
流眄
(
ながしめ
)
を送り返した。
或る女:1(前編)
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
此方の
隙
(
すき
)
を
窺
(
うかが
)
っては極めてこっそりと、繰り返し繰り返し
流眄
(
ながしめ
)
を使っているのであった。
細雪:03 下巻
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
お艶はすぐに取りあげもならず、はじらいを包んだ
流眄
(
ながしめ
)
を栄三郎へ送ってうつむいた。
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
高過ぎる程高い鼻、これだけが欠点といえば欠点と云え、その他は仇っぽくて美しい顔へ、意味ありそうな微笑を浮かべ、
流眄
(
ながしめ
)
に主水を眺めながら、前に坐っているお妻は云った。
剣侠
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
陽と時に許されて、如何に人に懐きかけようか、如何に人に馴れ寄ろうかと焦れながらも、あからさまということくらい
却
(
かえっ
)
て人に情を外ずさすものはないと知るや識らずや、自然は、
流眄
(
ながしめ
)
に
生々流転
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
満枝は
金煙管
(
きんぎせる
)
に
手炉
(
てあぶり
)
の
縁
(
ふち
)
を
丁
(
ちよう
)
と
拍
(
う
)
ちて、男の顔に
流眄
(
ながしめ
)
の
怨
(
うらみ
)
を注ぐなり。
金色夜叉
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
怨
(
えん
)
じて、一度、顔をそむけるようにして、激しく、
流眄
(
ながしめ
)
を送って
雪之丞変化
(新字新仮名)
/
三上於菟吉
(著)
と
裃
(
かみしも
)
の折目通りに手をつかえた。ジロリと
流眄
(
ながしめ
)
をくれた忠房は
剣難女難
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
そして、
虚
(
うつ
)
ろな、笑いをげらげらとやってみたり、ときどき嫌いなヤンへにッと
流眄
(
ながしめ
)
を送ったりする。彼女もだんだん、正気を失いはじめてきたのだ。
人外魔境:01 有尾人
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
余り意外な事の体に、答うる
術
(
すべ
)
なく、黙って
流眄
(
ながしめ
)
に見ていたが、果しなく
頭
(
こうべ
)
も
擡
(
もた
)
げず、突いた手に畳を
掴
(
つか
)
んだ
憂慮
(
きづかわ
)
しさに、棄ても置かれぬ気になって
婦系図
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
章子が、ふっとふき出しそうになるのを手で顎を撫で上げて胡魔化し、ひろ子へ
流眄
(
ながしめ
)
を使った。章子はひろ子の魂胆を感づいたのであった。ひろ子も笑い出したが
高台寺
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
といって乱痴気騒ぎの方に
流眄
(
ながしめ
)
をしながら、「ひょっとするともうここへやって来るかも知れない」
魔都
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
博士はてれて恥しげに縮こまり乍らモヂモヂと言訳を呟き——そしてチラリと僕に
流眄
(
ながしめ
)
を浴せて殆んど僕の死滅をも祈るかのやうな怖しい憎しみを強調してみせるのであつた。
霓博士の廃頽
(新字旧仮名)
/
坂口安吾
(著)
彼女の方へはチラリとそつけない
流眄
(
ながしめ
)
を与へたきりで、先づ出入口と押入の閾際へ行つて匂を嗅いで見、次ぎには窓の所へ行つてガラス障子を一枚づゝ嗅いで見、針箱、座布団、物差
猫と庄造と二人のをんな
(新字旧仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
聖
(
けだか
)
い隠者はそのやうな人間を見ると、初めは驚愕のあまり
後退
(
あとずさ
)
りをした。その男は白楊の葉のやうに全身をわなわな顫はせてゐた。不気味な
流眄
(
ながしめ
)
をしてゐる両の眼からは、物凄い火花が散つた。
ディカーニカ近郷夜話 後篇:03 怖ろしき復讐
(新字旧仮名)
/
ニコライ・ゴーゴリ
(著)
わたくしは額を押されてよろめく風を大げさに見せながら「ひどいわ」といった
流眄
(
ながしめ
)
をこの少年期から青年期へかけて育ち盛りの白痴の乞食に浴せます。それは相当色っぽい電気でもあります。
生々流転
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
と藤吉は事もなげに
流眄
(
ながしめ
)
に振り返って
釘抜藤吉捕物覚書:02 梅雨に咲く花
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
白痴
(
ばか
)
が泣出しそうにすると、さも
怨
(
うら
)
めしげに
流眄
(
ながしめ
)
に見ながら、こわれごわれになった
戸棚
(
とだな
)
の中から、
鉢
(
はち
)
に入ったのを取り出して手早く
白痴
(
ばか
)
の膳につけた。
高野聖
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
そのうち、セレナ夫人がチラと伸子に
流眄
(
ながしめ
)
をくれると、恐らく反射的に口を突いて出たものがあった。
黒死館殺人事件
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
緑色の仕着せを着た音楽隊はフィガロの婚礼を奏し、
飾棚
(
ショーケース
)
にロココの女の入黒子で
流眄
(
ながしめ
)
する。無数の下駄の歯の音が日本的騒音で石の床から硝子の円天井へ反響した。
未開な風景
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
彼女の方へはチラリとそつけない
流眄
(
ながしめ
)
を与へたきりで、
先
(
ま
)
づ出入口と押入の
閾際
(
しきいぎわ
)
へ行つて匂を嗅いで見、次ぎには窓の所へ行つてガラス障子を一枚づゝ嗅いで見、針箱、座布団、物差
猫と庄造と二人のをんな
(新字旧仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
流
常用漢字
小3
部首:⽔
10画
眄
漢検1級
部首:⽬
9画
“流”で始まる語句
流行
流
流石
流暢
流布
流行唄
流浪
流転
流連
流人