法華経ほけきょう)” の例文
旧字:法華經
また放蕩ほうとうにふけっている者も同じことで、耽溺たんできしているあいだは『論語』をもっても『法華経ほけきょう』をもってもなかなか浮かびきれない。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
康頼 法華経ほけきょうの中にも入於大海仮使黒風吹其船舫飄堕羅刹鬼国其中一人称観世音菩薩名者是諸人等皆得解脱羅刹之難じゅおたいかいけしこくふうずいきせんぼうひょうだらせっきこくきちゅういちにんしょうかんぜおんぼさつみょうしゃぜしょにんとうかいとくげだつらせつしなんとかいてあります。
俊寛 (新字新仮名) / 倉田百三(著)
院は物怪の罪を救うために、日ごとに法華経ほけきょう一巻ずつを供養させておいでになった。そのほか何かと宗教的な営みを多くあそばされた。
源氏物語:35 若菜(下) (新字新仮名) / 紫式部(著)
非常に宗教心にあつく、法華経ほけきょうを信仰して、まるで菩薩ぼさつさまのような生活をおくっていました。仏さまといってもいい程です。
啄木と賢治 (新字新仮名) / 高村光太郎(著)
鶯声うぐいすのこえを聞きて「法華経ほけきょうとなく」と思えば法華経となりて聞こえ、鵑声ほととぎすのこえを聞きて「不如帰去ふじょききょとなく」と思えば不如帰去となりて聞こゆるなり。
妖怪学 (新字新仮名) / 井上円了(著)
彼が、その前後に最も心のよろこびとしたことは、四天王寺へまいって、寺蔵の聖徳太子の勝鬘経しょうまんぎょう法華経ほけきょうとを親しく拝観した一日であった。
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
しかし法華経ほけきょう信者の母は妻の言葉も聞えないように、悪い熱をさますつもりか、一生懸命に口をとがらせ、ふうふう多加志の頭を吹いた。………
子供の病気:一游亭に (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
臨湍寺りんたんじの僧智通ちつうは常に法華経ほけきょうをたずさえていた。彼は人跡じんせきれなる寒林に小院をかまえて、一心に経文読誦どくじゅを怠らなかった。
越して来た頃、暗がり横町を走ってでなければ、原稿用紙が買いに行けなかったあの通りにも、家が四、五軒も建ち、何か法華経ほけきょうのような家も出来た。
落合町山川記 (新字新仮名) / 林芙美子(著)
それじゃあお経を読んで上げようと言って、その翌日からチベット語の法華経ほけきょうを始めとして他のお経を読みました。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
法華経ほけきょう廿八品にじゅうはちほんを歌に詠じたり、維摩経ゆいまきょう十喩じゅうゆを詠んだりしているところを見ると、学問もあった人には相違ないが、夫のおもてわざにしている文章の事などに
連環記 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
針の先で自分の左の指を刺して、そこからにじみ上る血汐を筆に染めて、法華経ほけきょう序品じょぼんから写しはじめました。
大菩薩峠:19 小名路の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
火を点じて後、窓をひらきて屋外の蓮池れんちせなにし、涼を取りつつ机にむかいて、亡き母の供養のために法華経ほけきょうぞ写したる。そのかたわらに老媼ありて、しきりに針を運ばせつ。
妖僧記 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
私に話したくらいだから公々然と誰に話しても差支さしつかえない金であったのだろう。また大杉が警視庁に頼まれて仏訳の法華経ほけきょうの賃訳をした咄もやはり大杉から聞いた。
最後の大杉 (新字新仮名) / 内田魯庵(著)
法華経のこと ところで、この『華厳経』といつも対称的に考えられるお経は『法華経ほけきょう』です。
般若心経講義 (新字新仮名) / 高神覚昇(著)
太子たいしのおかくれになった日、シナの衡山こうざんからとっておいでになったふる法華経ほけきょうも、ふとえなくなりました。それもいっしょにっておいでになったのだろうということです。
夢殿 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
法華経ほけきょう勝鬘経しょうまんぎょう維摩経ゆいまぎょうの三つでありまして、大乗経典中の最も大乗的のものであります。
仏教人生読本 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
聖日蓮しょうにちれんの御遺徳の然らしむるところか、それとも浄魔秘経じょうまひきょう法華経ほけきょう御功徳ごくどくが然らしむるところか、谷を埋め、もりを閉ざしていた深い霧も、お山名代のその馬返しへ近づくにしたがって
その永眠えいみんの時には法華経ほけきょうを読んでいて、声の止んだのを居睡いねむりかと家人にあやまられたと聞いて、ただありがたいことと思ったのみ、これでふたりとも親が亡くなったのだなとは考えながら
落穂 (新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
鶯の鳴く声は、あれで、法華経ほけきょう法華経ほけきょうと言うのじやて——。
死者の書 (新字新仮名) / 折口信夫(著)
初夜から始めさせた法華経ほけきょうを続けて読ませていた。尊い声を持った僧の十二人のそれを勤めているのが感じよく思われた。
源氏物語:49 総角 (新字新仮名) / 紫式部(著)
鼻は依然として短い。内供はそこで、幾年にもなく、法華経ほけきょう書写の功を積んだ時のような、のびのびした気分になった。
(新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
鶯声うぐいすのこえを聞きて「法華経ほけきょうとなく」と思えば「法華経」となりて聞こえ、鵑声ほととぎすのこえを聞きて「不如帰去ふじょききょとなく」と思えば「不如帰去」となりて聞こゆるものなり。
妖怪玄談 (新字新仮名) / 井上円了(著)
わらむしろを持ちこんで、頼朝は尼がいいという日まで、じっと待っていた。その間、毎日毎日、そらんじる程よく聞いたのは、尼が朝暮に法華経ほけきょうの声であった。
源頼朝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
その時分じぶんいっしょにいたそうたちはたいていんだが、まだ三にんのこっているはずだから、そこへ行って、むかしわたしが始終しじゅうつかっていた法華経ほけきょうほんをさがしてってておくれ。
夢殿 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
その濡れたあとの付いた法華経ほけきょう、三部経のごときものは今なお私の手に記念物として保存してあるです。その記念物を見る度にどうしてあの時助かったろうかと不思議な感じが起る位です。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
わしはちかってもいい。きっと迎えをよこすことを。(無意識にふところより法華経ほけきょうを取り出す)誓いのしるしにこの法華経をあなたにのこします。わしのただ一つのなぐさめであったこの経を。
俊寛 (新字新仮名) / 倉田百三(著)
三界は火宅 あの有名な『法華経ほけきょう』は、またわれらに告げています。
般若心経講義 (新字新仮名) / 高神覚昇(著)
そして十月に法華経ほけきょうの八講が催されたのである。参列者の多く集まって来ることは昔のそうした場合のとおりであった。
源氏物語:14 澪標 (新字新仮名) / 紫式部(著)
天王寺てんのうじ別当べっとう道命阿闍梨どうみょうあざりは、ひとりそっと床をぬけ出すと、経机きょうづくえの前へにじりよって、その上に乗っている法華経ほけきょう八のまきあかりの下に繰りひろげた。
道祖問答 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
短いやいばを持って、山の端の月とも見える真白いおもて仰向あおむけたまま目をふさいだ夫人が、日頃、愛誦あいしょうしている法華経ほけきょうの五之巻の一章をしずかにそのくちからとなえているすがたを。
新書太閤記:06 第六分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
せんだって小野妹子おののいもこっててくれた法華経ほけきょうは、衡山こうざんぼうさんがぼけていたとえて、わたしのっていたのでないのをまちがえてよこしたから、たましいをシナまでやってってたよ。
夢殿 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
法華経ほけきょうにいわゆる「犛牛みょうごのその尾を愛するがごとし」とあるその犛牛みょうごである。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
日蓮上人は『法華経ほけきょう』を幾度なく色読せられたといっていますが、『法華経』を読誦どくじゅし、信仰する人は、ぜひとも『法華経』を口でよむばかりでなく、心でこれをよみ、さらにこれを身体で実行する
般若心経講義 (新字新仮名) / 高神覚昇(著)
俊寛 (法華経ほけきょうを引きく)
俊寛 (新字新仮名) / 倉田百三(著)
この時に加持をする僧が声を低くして法華経ほけきょうを読み出したのが非常にありがたい気のすることであった。
源氏物語:09 葵 (新字新仮名) / 紫式部(著)
そして、彼の跫音あしおとも耳へは入らないらしく朗々と、法華経ほけきょうしつづけていた。
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
帳台の四方のとばりを皆上げて、後ろのほうに法華経ほけきょう曼陀羅まんだらを掛け、銀の華瓶かへいに高く立華りっかをあざやかにして供えてあった。仏前の名香みょうこうには支那の百歩香ひゃくぶこうがたかれてある。
源氏物語:38 鈴虫 (新字新仮名) / 紫式部(著)
けれど釈尊しゃくそんは、目連もくれん尊者の女弟子の蓮華色ウッタラバルナと申す比丘尼びくにに、おまえこそ真の仏道を歩んだものだと仰っしゃったという話があるではございませぬか、法華経ほけきょうには女人は非器なりとございますが
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
中宮は院の御一周忌をお営みになったのに続いてまたあとに法華経ほけきょうの八講を催されるはずでいろいろと準備をしておいでになった。十一月の初めの御命日に雪がひどく降った。
源氏物語:10 榊 (新字新仮名) / 紫式部(著)
法華経ほけきょうを写経していることを、何より心の慰めとしているらしかった。
新編忠臣蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
六条院も中宮のお志をお助けになって、法華経ほけきょうの八講を近日行なわせられるそうである。
源氏物語:38 鈴虫 (新字新仮名) / 紫式部(著)
仏勤めもよくして法華経ほけきょうはもとより他の経なども多く読んだ。
源氏物語:55 手習 (新字新仮名) / 紫式部(著)
源氏は院の御為おんため法華経ほけきょうの八講を行なう準備をさせていた。
源氏物語:13 明石 (新字新仮名) / 紫式部(著)