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毀損
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きそん
ふりがな文庫
“
毀損
(
きそん
)” の例文
布団にして敷かれずんば、布団はまさしくその名誉を
毀損
(
きそん
)
せられたるもので、これを勧めたる主人もまた幾分か顔が立たない事になる。
吾輩は猫である
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
そういう発見が子供の魂を永久に
毀損
(
きそん
)
したのだ、もしくは生長さしたのだ。多くのものは
自棄
(
やけ
)
になってしまった。彼らはみずから言った。
ジャン・クリストフ:09 第七巻 家の中
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
啻
(
ただ
)
に一人の兄弟を失ふのみならず社会は何程
毀損
(
きそん
)
されるかも知れないと、——先生を殺すものは——
必竟
(
ひつきやう
)
先生の愛心だ——アヽ
火の柱
(新字旧仮名)
/
木下尚江
(著)
他人の商品を
毀損
(
きそん
)
したようで何となく気持が悪い。店の者が横で
睨附
(
にらみつ
)
けていはしないかと思わず赤い顔をすることもある。
書物の倫理
(新字新仮名)
/
三木清
(著)
嫁側はいよ/\憤慨して医者の証明を添へ、貞操
蹂躙
(
じうりん
)
、名誉
毀損
(
きそん
)
で離婚と共に慰藉料請求の訴訟を提訴したものであつた。
老残
(新字旧仮名)
/
宮地嘉六
(著)
▼ もっと見る
さればこの
中
(
うち
)
の一を改むれば
忽
(
たちまち
)
全体を
毀損
(
きそん
)
するに終る。俳優にして江戸演劇の
鬘
(
かつら
)
をつけ西洋近世風の背景中に立つが如きは最も
嗤
(
わら
)
ふべき事とす。
江戸芸術論
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
この一小事のみで既に私を終生、かりに一つ二つの幸福が胸に入つた瞬間でも、立所にそれを
毀損
(
きそん
)
するに十分であつた。
途上
(新字旧仮名)
/
嘉村礒多
(著)
此の方面に於ける成功は、人格
毀損
(
きそん
)
以外の如何なる結果をも
齎
(
もたら
)
さない、とさえ思う。…………私の政治的関心(この島に於ける)が減った訳ではない。
光と風と夢
(新字新仮名)
/
中島敦
(著)
今はこの画の
毀損
(
きそん
)
し
剥落
(
はくらく
)
した個所によって妨げられることなしにこの画を鑑賞している。しかしこの毀損し剥落した個所が眼にうつらないのではない。
古寺巡礼
(新字新仮名)
/
和辻哲郎
(著)
そうしたってプロテスタント教がその教義史と寺院史とで
毀損
(
きそん
)
せられないと同じ事で、祖先崇拝の教義や機関も、特にそのために危害を受ける
筈
(
はず
)
はない。
かのように
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
学者や芸術家がその純粋の自我を
毀損
(
きそん
)
しないで現代の紛々たる俗争の間に立ち得るとはどうしても想われない。
鏡心灯語 抄
(新字新仮名)
/
与謝野晶子
(著)
これを商人に
譬
(
たと
)
えていえば、物品を
廉
(
やす
)
く買って
貴
(
たか
)
く売りたいというのがその希望であろうが、時に相場が下がったり、品物が
毀損
(
きそん
)
したりして
甘
(
うま
)
く行かぬ事がある。
我輩は何故いつまでもすべてに於て衰えぬか
(新字新仮名)
/
大隈重信
(著)
予は「奉教人の死」に於て、発表の必要上、多少の文飾を
敢
(
あへ
)
てしたり。もし原文の平易雅馴なる筆致にして、甚しく
毀損
(
きそん
)
せらるる事なからんか、予の幸甚とする所なりと
云爾
(
しかいふ
)
。
奉教人の死
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
いま彼は自分の名誉を
毀損
(
きそん
)
されるというような安易な不幸に陥ろうとしているのではない。
あめんちあ
(新字新仮名)
/
富ノ沢麟太郎
(著)
名誉
毀損
(
きそん
)
、結婚
詐欺
(
さぎ
)
、財産横領、器物破壊、家宅侵入、損害賠償、暴力行為、傷害、印鑑・私文書偽造、貞操
蹂躙
(
じゅうりん
)
——あらゆる罪名が、にぎやかに、金五郎のうえにつけられた。
花と龍
(新字新仮名)
/
火野葦平
(著)
私の公の名誉を
毀損
(
きそん
)
し、特に銀行で私の地位をぐらつかせることになっていたのです。
審判
(新字新仮名)
/
フランツ・カフカ
(著)
憐愍
(
れんびん
)
から発した
峻厳
(
しゅんげん
)
の
毀損
(
きそん
)
、個人性の承認、絶対的裁断の消滅、永劫定罪の消滅、法律の目における涙の可能、人間に依存する正義とは反対の方向を取る一種の神に依存する正義。
レ・ミゼラブル:08 第五部 ジャン・ヴァルジャン
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
人間はいかほどに卑しく
拙
(
つた
)
なくありとも、天地至妙の調和は、之によりて
毀損
(
きそん
)
せらるゝことなきなり。あはれ、この至妙の調和より、万物皆な或一種の声を放ちつゝあるにあらずや。
万物の声と詩人
(新字旧仮名)
/
北村透谷
(著)
要するに、対伊丹城策は、なるべく味方の兵力を
毀損
(
きそん
)
せぬことを前提とし、時日は要しても、まず彼の
羽翼
(
うよく
)
を
殺
(
そ
)
ぐに全力をかけ、荒木村重をして孤立化せしめる——そういう方針であった。
新書太閤記:05 第五分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
もちろん標識柱に対しては、それを
毀損
(
きそん
)
したんだから、彼は加害者だけれど
狂い凧
(新字新仮名)
/
梅崎春生
(著)
前
(
まへ
)
には
此横穴
(
このよこあな
)
の
前
(
まへ
)
まで、
參詣人
(
さんけいにん
)
を
寄
(
よ
)
せたのであるが、それでは
線香
(
せんかう
)
で
燻
(
くす
)
べたり、
賽錢
(
さいせん
)
を
投付
(
なげつ
)
けたりするので、
横穴
(
よこあな
)
の
原形
(
げんけい
)
の
毀損
(
きそん
)
する
虞
(
おそ
)
れが
有
(
あ
)
る
爲
(
ため
)
に、
博士
(
はかせ
)
は
取調上
(
とりしらべじやう
)
の
必用
(
ひつよう
)
から、
先日
(
せんじつ
)
警察
(
けいさつ
)
に
交渉
(
かうしよう
)
し
探検実記 地中の秘密:29 お穴様の探検
(旧字旧仮名)
/
江見水蔭
(著)
その都度、旧藩士と称する者が太夫元に面会を申し込み、たとえ政岡という烈婦が実在していたとしても、この芝居全体の仕組みは、どうも伊達家の名誉を
毀損
(
きそん
)
するように出来ている、撤回せよ
惜別
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
今で言ふ屍體
毀損
(
きそん
)
、——昔は併しそんな罪名もなかつたのです。
銭形平次捕物控:322 死の秘薬
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
だから女なら女なり、馬鹿なら馬鹿なりに、その体面を
維持
(
いじ
)
して行きたいと思うんです。もしそれを
毀損
(
きそん
)
されると……
明暗
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
たとえ西洋文明を模倣するにしても今日の如く故国の風景と建築とを
毀損
(
きそん
)
せずに済んだであろうと思っている。
日和下駄:一名 東京散策記
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
どうもこれは
毀損
(
きそん
)
しやすい名画の取り扱い方ではない、大事にしようとする気が足りなさ過ぎるなどと思う。
古寺巡礼
(新字新仮名)
/
和辻哲郎
(著)
今王政一新、四海
属目
(
しよくもく
)
之時に当りて、
如此
(
かくのごとき
)
大奸要路に
横
(
よこたは
)
り、朝典を敗壊し、朝権を
毀損
(
きそん
)
し、朝土を惑乱し、堂々たる我神州をして犬羊に
斉
(
ひと
)
しき醜夷の属国たらしめんとす。
津下四郎左衛門
(新字旧仮名)
/
森鴎外
(著)
彼は世評を無視し得るほどの強者ではなかった。彼は自分の運命を
毀損
(
きそん
)
しただけにとどまらなかった。どこにも仕事を見出さなかった。何事も彼には閉ざされてしまった。
ジャン・クリストフ:11 第九巻 燃ゆる荊
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
風姿は
聊
(
いさゝか
)
も
毀損
(
きそん
)
するところなけれど、
自
(
おのづ
)
から痩弱にして顔色も光沢を欠けり。
国民と思想
(新字旧仮名)
/
北村透谷
(著)
内供の自尊心は、妻帯と云うような結果的な事実に左右されるためには、余りにデリケイトに出来ていたのである。そこで内供は、積極的にも消極的にも、この自尊心の
毀損
(
きそん
)
を
恢復
(
かいふく
)
しようと試みた。
鼻
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
何だか、構えている向うの体面を、わざと
此方
(
こっち
)
から
毀損
(
きそん
)
する様な気がしたからである。その上金の事に付いては平岡からはまだ
一言
(
いちげん
)
の相談も受けた事もない。
それから
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
孜々
(
しし
)
として東京市の風景を
毀損
(
きそん
)
する事に勉めているが、幸にも雑草なるものあって焼野の如く木一本もない閑地にも緑柔き
毛氈
(
もうせん
)
を
延
(
の
)
べ、月の光あってその上に露の
珠
(
たま
)
の
刺繍
(
ぬいとり
)
をする。
日和下駄:一名 東京散策記
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
もっとも
卑怯
(
ひきょう
)
な者こそ、もっとも激しく自殺を卑怯な行ないだと非難する。自殺者が人生からのがれながら、おまけに彼らの利益と
復讐
(
ふくしゅう
)
心とを
毀損
(
きそん
)
するときには、彼らは狂人のようになる。
ジャン・クリストフ:08 第六巻 アントアネット
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
本県の中学は
昔時
(
せきじ
)
より善良温順の気風をもって全国の
羨望
(
せんぼう
)
するところなりしが、
軽薄
(
けいはく
)
なる二
豎子
(
じゅし
)
のために
吾校
(
わがこう
)
の特権を
毀損
(
きそん
)
せられて、この不面目を全市に受けたる以上は
坊っちゃん
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
「イヤ、
彼奴
(
あいつ
)
はもう
止
(
や
)
めだ。君も知っているような始末で、ああ見さかいなしに誰でも御座れじゃ、全く名誉
毀損
(
きそん
)
だからな。すこし相談したい事があるんだ。とにかくぶらぶら出かけよう。」
つゆのあとさき
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
「僕の
毀損
(
きそん
)
された名誉が、回復出来る様な手段が、世の中にあり得ると、君は思っているのか」
それから
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
“毀損”の意味
《名詞》
毀 損(きそん)
ものを壊すこと。
人格や名誉をそこなうこと。
(出典:Wiktionary)
毀
常用漢字
中学
部首:⽎
13画
損
常用漢字
小5
部首:⼿
13画
“毀”で始まる語句
毀
毀誉褒貶
毀誉
毀傷
毀謗
毀蹄
毀釈
毀譽
毀却
毀壊