森々しん/\)” の例文
立て下りけりあとには彼の十歳ばかりなる三吉小僧のみ彌々いよ/\一人殘され其上そのうへはやくれて白洲へはあかりがつき四邊あたり森々しん/\としてなにとやら物凄ものすごく成しかば三吉は聲を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
かは可恐おそろしさに氣落きおちがして、ほとんこしたないをとこを、女房にようばういて、とほくもない、ゑんじゆ森々しん/\つた、青煉瓦あをれんぐわで、藁葺屋根わらぶきやねの、めう住居すまひともなつた。
みつ柏 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
起す松唐松からまつ杉檜森々しん/\として雨ならずとも樹下このしたうるほひたり此間このあひだに在りて始めて人間の氣息ゆるやかなるべきを
木曽道中記 (旧字旧仮名) / 饗庭篁村(著)
其百万の一をも成すことあたはざる耻かしさを、月よ、なんじ如何いか甲斐かひなしと照らすらん、森々しん/\として死せるが如き無人の深夜、彼はヒシと胸を抱きて雪に倒れつ、熱涙混々こん/\
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
有合ありあいの鋤をかついで是から二十丁もある根本の聖天山へあがって見ると、四辺あたり森々しん/\と樹木が茂って居り、裏手は絹川のながれはどう/\と、此のごろ雨気あまけに水増して急におとす河水の音高く
真景累ヶ淵 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
やがて、かははゞぱいに、森々しん/\淙々そう/\として、かへつて、またおともなくつる銚子口てうしぐち大瀧おほたきうへわたつたときは、くももまたれて、紫陽花あぢさゐかげそらに、釣舟草つりぶねさうに、ゆら/\と乗心地のりこゝちゆめかとおもふ。
十和田湖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
森々しん/\と致して鼻をつままれるのも知れません。
業平文治漂流奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
風もね雪も眠りて夜は只だ森々しん/\たり
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
こめたりける此所は名におふ周智郡すちごほり大日山のつゞき秋葉山の絶頂ぜつちやうなれば大樹だいじゆ高木かうぼく生茂おひしげり晝さへくら木下闇このしたやみ夜は猶さらに月くら森々しん/\として更行ふけゆく樣に如何にも天魔てんま邪神じやしん棲巣すみかとも云べきみねには猿猴ましらの木傳ふ聲谷には流水滔々たう/\して木魂こだまひゞき遠寺ゑんじかねいとすごく遙に聞ば野路のぢおほかみほえて青嵐颯々さつ/\こずゑ
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)