折檻せつかん)” の例文
の一のかはをがれたために可惜をしや、おはるむすめ繼母まゝはゝのために手酷てひど折檻せつかんけて、身投みなげをしたが、それのちこと
二た面 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
「二日二晩に及ぶ折檻せつかんの後、奧樣には、よく/\思ひさだめたものと相見え、昨夜、——深更しんかう、見事に生害してお果てなされた」
彼等が人々を折檻せつかんする時に、人々は無上の快楽を感ずるなり、我眼わがめ曇れるか、彼等の眼ひたる、之を断ずる者は誰ぞ。
我牢獄 (新字旧仮名) / 北村透谷(著)
とゞめられしや又藤三郎は幼少えうせうなるを非道ひだう折檻せつかん致さるゝこと我子すけ五郎の爲に行末ゆくすゑしかりなんと思ひ渠等かれら兄弟を殺さすとの心底しんていなるや然樣さやうの惡心を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
フラテは泥の上にすりつけられて折檻せつかんされて居たのであらう。何処からか凱歌のやうに人の笑声が聞えて来る……。
兄は母さへ止めなければ、この時もきつと二つ三つは折檻せつかんして居つたでございませう。が、母は枕の上に半ば頭をもたげながら、あへぎ喘ぎ兄を叱りました。
(新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
色々いろ/\折檻せつかんもしてたが無駄むだなので親父おやぢ持餘もてあまし、つひにお寺樣てらさま相談さうだんした結極あげくかういふ親子おやこ問答もんだふになつた。
怠惰屋の弟子入り (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
何處からともなく吹きまくつて來る一陣の呵責かしやくの暴風に胴震ひを覺えるのも瞬間、自らの折檻せつかんにつゞくものは穢惡あいあくな凡情にせ使はれて安時ない無明の長夜だ。
崖の下 (旧字旧仮名) / 嘉村礒多(著)
圭介の掌と楢雄の顔が両方からボトボトと血が落ちるまで、打つて打つて打ち続け、停めようとした寿枝まで突き飛ばされ、圭介の折檻せつかんはふと狂気じみてゐた。
六白金星 (新字旧仮名) / 織田作之助(著)
パヽだけが折檻せつかんをやつては、尚更怖がらせるばかりで、仕舞にはどう始末をしていゝか判らなくなる。男の児は七つ八つになれば、もう腕力では母から独立する。
An Incident (新字旧仮名) / 有島武郎(著)
私は以前あんなに幾度も折檻せつかん懲戒ちようかいの爲めに呼びつけられてよく知つてゐるあの部屋に案内してもらふ必要はなかつた。私はベシーの前に立つて急ぐと、そつとドアを開けた。
それで私ははっと気づいたのである。十歳にならない子供に、創作家たる父親の癇癪の起こるわけがわかるはずはない。創作家でなくとも父親は、しばしば子供に折檻せつかんを加える。
漱石の人物 (新字新仮名) / 和辻哲郎(著)
美しい娘をさらつてゐる大猿を一人のさむらひが来て退治したり、松前屋五郎兵衛ごろべゑ折檻せつかんされて血を吐いたり、若い女房がひとりの伴を連れて峠を上つて行くと、そこに山賊さんぞくが出て来たりした。
念珠集 (新字旧仮名) / 斎藤茂吉(著)
二千八百石取の旗本のすることで、其上有名な御用聞の錢形の平次が付いて居るのですから、そんな不法の折檻せつかんをとがめ立てる人もありません。
よびやりけるに六右衞門は何事やらんと打驚怖おどろきすぐに其使ひとともに來て見ればあにはからん久八が主人に折檻せつかんうける有樣に暫時しばしあきれて言葉もなし五兵衞は皺枯聲しわかれごゑ
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
毎週土曜の晩は各室の室長だけは一室に集合して、新入生を一人々々呼び寄せ、いはれない折檻せつかんをした。
途上 (新字旧仮名) / 嘉村礒多(著)
一歩いちぶに、のかはをかれたために、最惜いとしや、おあき繼母まゝはゝには手酷てひど折檻せつかんける、垣根かきねそとしたで、晝中ひるなかおびいたわ、と村中むらぢう是沙汰これざたは、わかをんな堪忍たへしのばれるはぢではない。
一席話 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
周囲の子供等を引率して学校の授業も何もかまはずに山や沢に出掛けるので、そのやり方が何処どこか猛烈なところがあつた。一度教員は忿怒ふんどして学校の梁木はりきにその童子をつるして折檻せつかんしたことがある。
念珠集 (新字旧仮名) / 斎藤茂吉(著)
いやがる私を父子二人で責め折檻せつかんして——この二、三年の間に支度金だけでも五百兩近い金をまうけました
にくみて種々折檻せつかんなしあまつさへ藤三郎の乳母お安と言女をも永のいとまを遣したり其わけは此乳母先代平助の時より奉公ほうこうに來り譜代ふだい同樣のきめにて藤三郎の乳母となせしかば藤三郎を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
主人が何と仰しやらうと暗闇くらやみの耻を明るみへ出し度くはないが、どての上から楊弓を射た疑ひが騷ぎの直ぐ後で船へ歸つた御女中のお町といふ者に懸つて、昨夜から恐ろしい折檻せつかん
娘を折檻せつかんしてゐたらしい半助は、あわてて素袷すあはせに膝つ小僧を包みました。
「殿樣の無體の折檻せつかん、女は言ふ事を聽かずに死んだ——可哀想に」