所為しわざ)” の例文
旧字:所爲
かゝる光景ありさまは雪にまれなるだん国の風雅人ふうがじんに見せたくぞおもはるゝ。およそちゞみをさらすには種々しゆ/″\所為しわざあれども、こゝには其大略たいりやくをしるすのみ。
末梢を論じ、枝葉をあげつらい、章句に拘泥こうでいして日を暮すは、世の腐れ儒者の所為しわざ。何で国を興し、民を安んずる大策を知ろう。
三国志:07 赤壁の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
……(焼撃やきうちをしたのも九十九折つづらおりの猿が所為しわざよ、道理こそ、柿の樹と栗の樹は焼かずに背戸へ残したわ。)……などと申す。
星女郎 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
◎無惨の死骸 昨朝六時頃築地三丁目の川中にて発見したる年の頃三十四五歳と見受けらるゝ男の死骸は何者の所為しわざにや総身に数多あまたの創傷、数多の擦剥すりむき
無惨 (新字新仮名) / 黒岩涙香(著)
それにはいずれも持て余してどうしたらよかろうと協議の末、井神何某と云う侍が、コリャ狐狸の所為しわざに相違ないから、恐嚇おどしに空鉄砲を撃って見るがいいと
池袋の怪 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
心の駒が狂ふての、所為しわざと御覧なされたか。下司の悲しさ、吉蔵が、これまで尽くした、御奉公。お気に済まぬと仰しやれば、どうも詮方はござりませぬ。
したゆく水 (新字旧仮名) / 清水紫琴(著)
「さればさ、城下の者が板女の噂をしておるにつけ込んで、人をもてあそぼうとする白痴しれもの所為しわざかも知れませんぞ」
女賊記 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
年中季節を問わず土曜の午後活溌な運動を好む輩の所為しわざだが余り動きがひどくてこれに堪えぬ者が多いという(ハツリット『信念および民俗フェース・エンド・フォークロール』一九〇五年版巻一、頁三〇五)
小「誠に何うも思い掛けないことで、これは実父が突落される臨終いまわの一念で放さずに居たものと見える、あゝ天命はのがれ難いもので、これは分りました……ウーム彼奴あいつ所為しわざであろう」
山川村庄さんせんそんしやうはさらなり、およそ物の名のよみかた清濁すみにごるによりて越後の里言りげんにたがひたるもあるべし。しかれども里言は多く俗訛ぞくなまりなり、いましばらく俗にしたがふもあり。本編には音訓おんくん仮名かなくださず、かなづけは所為しわざなり。
こは当楼の後ろの大薮に数年すねんすんでいる狸の所為しわざにて、毎度この高味うまいものをしてやらるると聞き、始めてばかされたと気がついて、はては大笑いをしたが、化物ばけものと直接応対したのは、自分ばかりであろうと
枯尾花 (新字新仮名) / 関根黙庵(著)
所為しわざいやしけれども芸術げいじゆつ極意ごくいもこゝにあるべくぞおもはるゝゆゑに、こゝにしるして初学しよがくの人げいすゝむ一端はししめす。
せめ盗坊どろぼう所為しわざにでも見せ掛け何か品物を盗んで置くとか此室を取散とりちらして置くとかそれくらいの事はそうなもの
血の文字 (新字新仮名) / 黒岩涙香(著)
兎にかく江戸時代には池袋の奉公人を嫌うとは不思議で、何か一家に怪しい事があれば、先ずきつねたぬき所為しわざといい、次には池袋と云うのが紋切形の文句であった。
池袋の怪 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
赤羽停車場ステエションの婆さんの挙動と金貨を頂かせた奥方の所為しわざとは不言不語いわずかたらずの内に線を引いてそれがお米の身に結ばれるというような事でもあるだろうと、聞きながら推したに
政談十二社 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
『経律異相』四五には牧牛児あり常に沙門の経むを歓び聞く、山に入りて虎に食われ長者の家に生まる、懐姙中その母能く経を誦む、父この子の所為しわざと知らず鬼病もののけおも
近世、江戸牛天神の社のほとりに貧乏神の禿倉ほこら有けり。こは何某なにのそれがしとかいいし御家人の、窮してせんかたなきままに、祭れるなりといい伝う。さるを何ものの所為しわざにやありけん。その神体を
貧乏神物語 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
新「狸の所為しわざか」
真景累ヶ淵 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
所為しわざいやしけれども芸術げいじゆつ極意ごくいもこゝにあるべくぞおもはるゝゆゑに、こゝにしるして初学しよがくの人げいすゝむ一端はししめす。
扨はいよいよ怪物の所為しわざだと、なおくよく四辺あたりを見ると、其の辺は一面の枯草に埋っていて、三間ばかり先は切ッたての崖になっているので、三人は思わず悸然ぎょっとして
東京トンキン人は月蝕を竜の所為しわざとす(一八一九年リヨン版『布教書簡集レットル・エジフィアント』九巻一三〇頁)。
雪ふかき所は雪中には山に入りてきこりする事あたはざるゆゑの所為しわざにて、我国雪のため苦心くしんするの一ツ也。
何がさて、その当時の事であるから、一同ただ驚き怪しんで只管いたずらに妖怪変化の所為しわざと恐れ、お部屋様も遂にこのやしき居堪いたたまれず、浅草並木辺の実家へ一先ひとまずお引移りという始末。
池袋の怪 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
支那やインドで竜王を拝して雨を乞うたはおもにこれに因ったので、それよりいて諸般の天象を竜の所為しわざとしたのは、例せば『武江年表』に、元文二年四月二十五日外山とやまの辺より竜出て
かくて其冬雪中にいたり、山のいたち狐などとぼしく人家にきたりて食をぬすむ事雪中の常なれば、此ものゝ所為しわざにや、かごはやぶれて白烏しろからすはねばかりゑんの下にありしときゝし。
私共の仲間では此れを一口に『怪物えてもの』と云いまして、猿の所為しわざとも云い、木霊こだまとも云い、魔とも云い、その正体は何だか解りませんが、兎にかく怪しい魔物が住んでいるに相違ありません。