房々ふさふさ)” の例文
長い細やかな房々した髪に縁取られてる、そしてその髪は、縮れもせずにただ軽いゆるやかな波動をなして、顔にたれていた。
顔が天狗猿みたいに真赤で、頭の毛がテリヤみたいに銀色に光っている奴をマン中から房々と二つに別けている。太眉が真黒では無い。
超人鬚野博士 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
パッパッと馬をあおらせて、房々した髪の毛をかせて、お綺麗な顔一杯に汗ばんで……これも村中の大評判でございました。
墓が呼んでいる (新字新仮名) / 橘外男(著)
房々とした尻尾がひどくゆたかな穂のようにぴんと立って、それがついと闇に消えた。野の狐がまよいだしていたのであろう。
石狩川 (新字新仮名) / 本庄陸男(著)
死んだ少女の黒髪は房々として、額をって、両眼はすやすやと眠るように閉じている。顔色は、のように白かった。
(新字新仮名) / 小川未明(著)
祖母さんはもう好い年齢で、の上あたりは禿げ、髪もあらかた抜け落ちてしまったが、未だそれでも後の方には房々とした毛の残りを見せている人だ。
新生 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
男は三十四五歳の、髪の毛を房々と分けた好男子、女は二十五六歳であろうか、友禅長襦袢の襟もしどけなく、古風な丸髷のほつれめかしい美女。
悪魔の紋章 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
おじいさんのそばには、三才ばかりの、バラのような頬っぺたの、髪の房々した瞳の黒い子供がくっついていました。草は、その子の胸までもあるのでした。
曽我貞一の言葉につれて、女史は手を動かして、は腰のまわりに恐ろしそうに触れ、膝を押していたが、最後に両手をあげて、房々とした束髪えたときに
西湖の屍人 (新字新仮名) / 海野十三(著)
の山の竹藪を遠くから見ると、暗い杉やの前に、房々した緑が浮き上つて居る。まるで鳥の羽毛のやうになり。頭の中でへた幽篁とかとか云ふ気はしない。
雑筆 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
どちらかといえば小づくりで、色の白い、髪の房々した、この家でも売れるであった。眉と眉との遠いのが、どことなく美穂子をしのばせるようなところがある。
田舎教師 (新字新仮名) / 田山花袋(著)
蚊帳の中からして見ると、薄暗い洋燈の光が房々とした髪から横顔にかけてぽーッとしています
女難 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
都下砂村の有名な金魚飼育商の秋山が蘭鋳からその雄々しい頭の肉瘤を採り、琉金のような体容の円美と房々としたを採って、頭尾二つとも完美な新種を得ようとする
金魚撩乱 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
深目にかぶつた帽子もやはり純白で、そのかげからブロンドの房々した髪がのぞいてゐる。
灰色の眼の女 (新字旧仮名) / 神西清(著)
長靴でぶん殴られたり、房々とした実に見事な頬髯を挘り取られたりするのだ。
恐らく我国の薬種で無からう、天竺伝来か、蘭方か、近くは朝鮮、琉球あたりの妙薬に相違ない。へば房々とある髪は、なんと、物語にこそ謂へ目前いたらくであらう。
処方秘箋 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
山の餌をって、山の獣達と一緒に何んの苦労もなく生い立ったのですが、髪の毛が房々と延び、つの乳房が、こんもり盛上って、四肢に美しい皮下脂肪が乗り始める頃から、身を切られるような
裸身の女仙 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)
ふと見ると彼女の胸に小さなメタルががっている。何心なく手に取り上げて裏返して見ると、四十歳前後の立派な紳士と、中学校の制服を着、房々した髪の毛をした紅顔の美少年との写真があった。
水晶の栓 (新字新仮名) / モーリス・ルブラン(著)
の額のまろいの肉の垂れた、眼の柔和な、何か老いての、耳の蔽い毛の房々して、部厚い灰色の、凸凹の背の、気の弱い緬羊は密集して、誰から、どの列から誘うとも誘われるともなしに
フレップ・トリップ (新字新仮名) / 北原白秋(著)
女たちは、ごく浅黒いをし、ごく色のいいをして、房々とした髪を貝殻形にえ、派手な長衣や花の帽子をつけていた。白い手袋をはめ赤い袖口を見せていた。
彼は、軍帽を、床の上にげ捨てた。房々した頭髪が、軍人らしくもなく、ダラリと額にぶら下った。それから彼は、胸の金釦を一つ一つ外していって、上衣をスッポリ脱ぎすてた。
空襲葬送曲 (新字新仮名) / 海野十三(著)
島田ばかりが房々と、やあ、目も鼻も無い、のっぺらぼう。
陽炎座 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
きれいで、すっきりして、優雅で、小羊のような横顔、房々と縮れた金髪、婀娜っぽいやさしい眼、ルイニ流の微笑をもっていた。二人はよくいっしょに散歩した。
産毛えたような水田を網目形に区切ってる青っぽい運河、その運河の中に映ってる日の光。褐色の細葉を房々とつけ、れた面白い体躯せたしなやかさを示してる、秋の樹木。
またある者は、房々とした縮れ毛と、燃えるような果敢な眼とをもっていた。
頸筋の上にねてる房々とした金髪、日焼けのした顔色をもっていた。
丈夫な骨格にかかわらず多少せ形の高いすらりとした姿、多くはないがしかし房々として低く束ねられてる黒髪、それに縁取られてる顔、それにわれてる顳顬と骨だった金色の、多少の近視