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愜
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かな
ふりがな文庫
“
愜
(
かな
)” の例文
酒を注ぎながら、上さんは甘ったるい調子で云った、「でも営口で内に置いていた、あの子には、小川さんも
愜
(
かな
)
わなかったわね。」
鼠坂
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
とにもかくにも今一目見ずば動かじと始に
念
(
おも
)
ひ、それは
愜
(
かな
)
はずなりてより、せめて
一筆
(
ひとふで
)
の
便
(
たより
)
聞かずばと更に念ひしに、事は心と
渾
(
すべ
)
て
違
(
たが
)
ひて
金色夜叉
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
同じ真綿工場の持主であった彼の
嫂
(
あによめ
)
は、不断銀子の母親の働きぶりを見ていたので、その眼鏡に
愜
(
かな
)
い、彼を落ち着かせるために、彼女を
娶
(
めあわ
)
せた。
縮図
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
最も姫の心に
愜
(
かな
)
ひしはララなり。姫の宜給ふやう。アヌンチヤタは美しくもありしなるべく、
賢
(
さか
)
しくもありしなるべし。
即興詩人
(旧字旧仮名)
/
ハンス・クリスチャン・アンデルセン
(著)
ウィリアム
第
(
だい
)
一
世
(
せい
)
、
其人
(
そのひと
)
の
立法
(
りつぱふ
)
は
羅馬
(
ローマ
)
法皇
(
はふわう
)
の
御心
(
みこゝろ
)
に
愜
(
かな
)
ひ、
忽
(
たちま
)
ちにして
首領
(
しゆれう
)
の
必要
(
ひつえう
)
ありし
英人
(
えいじん
)
の
從
(
したが
)
ふ
所
(
ところ
)
となり、
近
(
ちか
)
くは
纂奪
(
さんだつ
)
及
(
およ
)
び
征服
(
せいふく
)
を
恣
(
ほしひまゝ
)
にするに
至
(
いた
)
りました。
愛ちやんの夢物語
(旧字旧仮名)
/
ルイス・キャロル
(著)
▼ もっと見る
私はおまえさんの
希望
(
のぞみ
)
というのが
愜
(
かな
)
いさえすれば、それでいいのだ。それが私への
報恩
(
おんがえし
)
さ、いいじゃないか。
義血侠血
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
来る客の望を
愜
(
かな
)
へるのは、クリストの意志を
充
(
みた
)
す
所以
(
ゆゑん
)
であるから、拒んではならない。折角来た客に隠れて逢はないでは残酷である。こんな風に云はれて見れば、一々道理はある。
パアテル・セルギウス
(新字旧仮名)
/
レオ・トルストイ
(著)
真の意義に於いての道徳に
愜
(
かな
)
つてゐるでせう。それに人間が皆絶大威力の自然といふ主人の前に媚び
諂
(
へつら
)
つて、軽薄笑ひをして、おとなしく羊のやうに屠所へ引いて行かれるのですね。
笑
(新字旧仮名)
/
ミハイル・ペトローヴィチ・アルチバシェッフ
(著)
但君ハカント派ノ哲学ヲ喜ビ余ハコムト氏ノ実学ヲ好メリ。故ニ円鑿方枘、論相
愜
(
かな
)
ハサルノ
憾
(
うらみ
)
ヲ免レザリキ。今余ガ唯物論ヲ唱フルモ其原ハ即此時ニ在リキ。爾来歳月ヲ経過セシコト茲ニ四十年。
西周伝:05 序
(新字旧仮名)
/
津田真道
(著)
ドリス自身には、
技芸
(
ぎげい
)
の発展が出来なくて気の毒だのなんのと云ったって、分からないかも知れない。結構ずくめの
境界
(
きょうかい
)
である。崇拝者に取り巻かれていて、望みなら何一つ
愜
(
かな
)
わないことはない。
世界漫遊
(新字新仮名)
/
ヤーコプ・ユリウス・ダビット
(著)
お前さん達のお
望
(
のぞみ
)
を
愜
(
かな
)
えることなら、わたしにも出来る
積
(
つもり
)
だ。875
ファウスト
(新字新仮名)
/
ヨハン・ヴォルフガング・フォン・ゲーテ
(著)
両性問題は
容易
(
たやす
)
く理を以て
推
(
すゐ
)
すべからざるものだとは云ひながら、品の人物に何か特別なアトラクシヨンがなくては
愜
(
かな
)
はぬやうである。
椙原品
(新字旧仮名)
/
森鴎外
(著)
昔より信仰厚き人達は、
現
(
うつつ
)
に
神仏
(
かみほとけ
)
の
御姿
(
おんすがた
)
をも
拝
(
をが
)
み候やうに申候へば、私とても此の一念の力ならば、決して
愜
(
かな
)
はぬ願にも
無御座
(
ござなく
)
と
存参
(
ぞんじまゐ
)
らせ候。
金色夜叉
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
蔦蘿
(
つたかづら
)
に包まれたる水道の
址
(
あと
)
とこれを圍める
橄欖
(
オリワ
)
の茂林とは、
黯澹
(
あんたん
)
たる一幅の圖をなして、わが刻下の情に
愜
(
かな
)
へり。われは
又前
(
さき
)
に過ぎたる門を出でたり。門外に大廢屋あり。
即興詩人
(旧字旧仮名)
/
ハンス・クリスチャン・アンデルセン
(著)
その外自分が誰にでも謙遜してゐると云ふ意識も、師匠たる長老に命ぜられて自分のするだけの事が一々規律に
愜
(
かな
)
つて
無瑕瑾
(
むかきん
)
だと云ふ自信も、ステパンに歓喜を生ぜさせるのである。
パアテル・セルギウス
(新字旧仮名)
/
レオ・トルストイ
(著)
「だからさ、私の所望はおまえさんの希望が
愜
(
かな
)
いさえすれば……」
義血侠血
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
ただ一つの、ただ一つの願も
愜
(
かな
)
えずに、1555
ファウスト
(新字新仮名)
/
ヨハン・ヴォルフガング・フォン・ゲーテ
(著)
こんな家にこうして住まわせて上げれば、平生の
願
(
ねがい
)
が
愜
(
かな
)
ったのだと云っても
好
(
い
)
いと、嬉しく思わずにはいられなかった。
雁
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
満枝が
手管
(
てくだ
)
は、今その
外
(
おもて
)
に
顕
(
あらは
)
せるやうに
決
(
け
)
して内に
怺
(
こら
)
へかねたるにはあらず、かくしてその人と
諍
(
いさか
)
ふも、また
愜
(
かな
)
はざる恋の内に
聊
(
いささ
)
か楽む道なるを思へるなり。
金色夜叉
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
我はわが辭退の理に
愜
(
かな
)
へる、友の腹立ちしことの我儘に過ぎざるを信じたりき。されど或時は無聊に堪へずしてベルナルドオなつかしく、我詞の猶
穩
(
おだやか
)
ならざるところありしを悔みぬ。
即興詩人
(旧字旧仮名)
/
ハンス・クリスチャン・アンデルセン
(著)
お
望
(
のぞみ
)
の
愜
(
かな
)
うような工夫をお
授
(
さずけ
)
しましょうか。
ファウスト
(新字新仮名)
/
ヨハン・ヴォルフガング・フォン・ゲーテ
(著)
しかしどちらも
可哀
(
かわい
)
い子であったので、間もなくわびが
愜
(
かな
)
って助太郎は表立ってかなを妻に迎えたのである。
渋江抽斎
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
拝謁
(
おめみえ
)
愜
(
かな
)
わざればとて、苦桃太郎
単身
(
ひとり
)
して
鬼桃太郎
(新字新仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
保は英語を
操
(
つか
)
い英文を読むことを志しているのに、学校の現状を見れば、所望に
愜
(
かな
)
う科目は
絶
(
たえ
)
てなかった。
渋江抽斎
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
拜謁
(
おめみえ
)
愜
(
かな
)
はざればとて、
苦桃太郎
(
にがもゝたらう
)
鬼桃太郎
(旧字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
それも
愜
(
かな
)
はで東に還り玉はんとならば、親と共に往かんは易けれど、か程に多き路用を何處よりか得ん。
舞姫
(旧字旧仮名)
/
森鴎外
(著)
それも
愜
(
かな
)
はで
東
(
ひんがし
)
に還り玉はんとならば、親と共に往かんは易けれど、か程に多き路用を
何処
(
いづく
)
よりか得ん。
舞姫
(新字旧仮名)
/
森鴎外
(著)
「我を救ひ玉へ、君。わが耻なき人とならんを。母はわが彼の言葉に從はねばとて、我を打ちき。父は死にたり。明日は葬らでは
愜
(
かな
)
はぬに、家に一錢の貯だになし。」
舞姫
(旧字旧仮名)
/
森鴎外
(著)
「我を救ひ玉へ、君。わが恥なき人とならんを。母はわが彼の言葉に従はねばとて、我を打ちき。父は死にたり。
明日
(
あす
)
は葬らでは
愜
(
かな
)
はぬに、家に一銭の
貯
(
たくはへ
)
だになし。」
舞姫
(新字旧仮名)
/
森鴎外
(著)
「どうです。こう天気続きでは、米が出来ますでしょうなあ」「さようさ。又米が安過ぎて不景気と云うような事になるでしょう」「そいつあ
愜
(
かな
)
いませんぜ。
鶴亀
(
つるかめ
)
鶴亀」
百物語
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
動植をきはむる學者の心は、世の常の用をばげに問はざるべけれど、進化説を唱ふる人は、微蟲を解剖するときも、おのれが
懷
(
いだ
)
ける説の旨に
愜
(
かな
)
はむことを願はざるにあらず。
柵草紙の山房論文
(旧字旧仮名)
/
森鴎外
(著)
この時李は
遽
(
にわか
)
に発した願が遽に
愜
(
かな
)
ったように思った。しかしそこに意外の
障礙
(
しょうがい
)
が生じた。それは李が身を以て、
近
(
ちかづ
)
こうとすれば、玄機は回避して、強いて
逼
(
せま
)
れば号泣するのである。
魚玄機
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
知人にたよろうとし、それが
愜
(
かな
)
わぬ段になって、始めて親戚をおとずれ、親戚にことわられて、亀蔵はようよう親許へ帰る気になったらしい。定右衛門の家には二十八日に帰った。
護持院原の敵討
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
お前様といふものある清さんとこのやうな身持の私が、すなほに
彼此
(
かれこれ
)
申し候とも願の
愜
(
かな
)
ふはずなければ、何事も三谷さんの酒の上から出た
戯
(
たわぶれ
)
のやうに
取成
(
とりな
)
し、一しよにさへ寝たならば
そめちがへ
(新字旧仮名)
/
森鴎外
(著)
畫工にはおの/\其特異なる眼あり、其特異なる性 tempérament ありて、これに
愜
(
かな
)
ひたる新しきものを製作するを其本分とす。要するに畫には個人的と實在的とあるべし。
柵草紙の山房論文
(旧字旧仮名)
/
森鴎外
(著)
われを狂人と罵る美術家ら、おのれらが狂人ならぬを憂へこそすべきなれ。英雄豪傑、名匠大家となるには、多少の狂気なくて
愜
(
かな
)
はぬことは、ゼネカが論をも、シエエクスピアが
言
(
げん
)
をも
待
(
ま
)
たず。
うたかたの記
(新字旧仮名)
/
森鴎外
(著)
或
(
ある
)
ひとのいはく。逍遙子はげに今の我文界に人間派なきを認めき。されど其言にいはずや。嘗て「ミツドル、マアチ」を見しに、ジヨルジ・エリオツト女史が作に人間派の旨に
愜
(
かな
)
へるところあり。
柵草紙の山房論文
(旧字旧仮名)
/
森鴎外
(著)
そうしたらあの人が又好い加減の事を言って、わたしを騙してしまっただろう。あんな利口な人だから、どうせ喧嘩をしては
愜
(
かな
)
わない。いっそ黙っていようか。しかし黙っていてどうなるだろうか。
雁
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
己
(
おれ
)
はその
何故
(
なにゆえ
)
なるを知らぬが、修養の足らざるのもまた一因をなしているだろう。比良野助太郎は才に短であるが、人はかえってこれに服する。賦性が
自
(
おのずか
)
ら絜矩の道に
愜
(
かな
)
っているのであるといった。
渋江抽斎
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
「
風邪
(
ふうじや
)
の
跡
(
あと
)
で持病の
疝痛
(
せんつう
)
痔疾
(
ぢしつ
)
が起りまして、
行歩
(
ぎやうほ
)
が
愜
(
かな
)
ひませぬ。」
大塩平八郎
(新字旧仮名)
/
森鴎外
(著)
愜
部首:⼼
12画