おほ)” の例文
みんなは七つ森の機嫌きげんの悪い暁の脚まで来た。道がにはかに青々と曲る。その曲り角におれはまた空にうかぶおほきな草穂くさぼを見るのだ。
秋田街道 (新字旧仮名) / 宮沢賢治(著)
小雨を降らせて通り過ぎる真黒な雲のぱつくりと開けたおほきな口のファンタスティックな裂目から、月は彼等を冷え冷えと照して居た。
それゆゑ、主人が重病の間一日ぢゆう眺めてゐたものはこのおほきな額縁のなかに区切られた沙漠のわびしい風景であつたのです。
亜剌比亜人エルアフイ (新字旧仮名) / 犬養健(著)
ぶる/\と其のおほきい頭を振つてきばんで怒り、せめては伊豆一国の主になつて此恨を晴らさうと奮ひ立つたとある。
平将門 (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)
仏印の山林は、おほきな虎にとり組んでゐるやうなものだと思はなければならないと、マルコン氏はよく云つてゐた。
浮雲 (新字旧仮名) / 林芙美子(著)
にはかに夜も昼もかぐはしい夢を見る人となつて旦暮あけくれ『若菜集』や『暮笛集』を懐にしては、程近い田畔たんぼの中にある小さい寺の、おほきい栗樹くりのきの下の墓地へ行つて
葬列 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
南無大慈大悲なむだいじだいひ観世音菩薩くわんぜおんぼさつ……いやアおほきなもんですな、人が盲目めくらだと思つてだますんです、浅草あさくさ観音くわんおんさまは一すんだつて、虚言うそばツかり、おほきなもんですな。
心眼 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
はなしかの柳家なにがしらとお成道なりみちなる祇園ぎおん演芸場へ出演せしが席への途次みちすがら今年ことしの干支なる羊或は雪達磨の形せる狸に破れ傘あしらひたるなど、いとおほいなる雪人形をみいでたり。
滝野川貧寒 (新字旧仮名) / 正岡容(著)
一時しんとした後、猫を抱いた日本の女の小さい顔と、その上にのしかゝつた恐ろしくおほきな毛むくぢやらの男の顔とが現はれ、そして彼等は何かいがみ合ひ乍ら笑つて、赤いカーテンをおろした。
父親が非常におほきな身体をしてゐて、力もこの周囲をとりまいてゐる夜の深いおびやかすやうな印象をふせぐには十分だと云ふあの子供つぽい切ないやうな信頼の感じ、それをまざまざと思ひ出してゐた。
医師高間房一氏 (新字旧仮名) / 田畑修一郎(著)
かたむくと見つつ待つまをとどろかずおほなみ凄しあがりきりたる
海阪 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
わが前におほき河馬の尻むくつけく泰然として動かざりけり
河馬 (旧字旧仮名) / 中島敦(著)
かぐはしき、おほいな愛撫にぞくぞくしながら……
秋草に もだし伏すおほきいしずゑ
大和古寺風物誌 (新字新仮名) / 亀井勝一郎(著)
とてもおほきな
歌時計:童謡集 (旧字旧仮名) / 水谷まさる(著)
富岡は次々に転じてゆく焦点せうてんが、一つとして燃焼する事もなく、このおほきな社会の歯車の外にこぼれ落ちてゆく、淡い火の粉のやうな自分を感じてゐた。
浮雲 (新字旧仮名) / 林芙美子(著)
しかしその粟餅も、時節がら、ずゐぶん小さくなつたが、これもどうも仕方がないと、黒坂森のまん中のまつくろなおほきないはがおしまひに云つてゐました。
狼森と笊森、盗森 (新字旧仮名) / 宮沢賢治(著)
おほきい栗樹くりのきの下の墓地へ行つて、青草に埋れた石塔に腰打掛けて一人泣いたり、學校へ行つても、倫理の講堂でそつと『亂れ髮』を出して讀んだりした時代の事や
葬列 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
そりやア仁王門にわうもんだ、これから観音くわんおんさまのおだうだ。梅「道理だうりおほきいと思ひました……あゝ……あぶない。とおどろいて飛下とびさがる。近「フヽヽなんだい、みつともない、はとがゐるんだ。 ...
心眼 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
この汽船ふねおほき煙筒けぶりなびき渡島をしまの子らは此方こなた見てあらむ
海阪 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
それは人為のごとくして実はおほきな自然だつた。
医師高間房一氏 (新字旧仮名) / 田畑修一郎(著)
おれ一人だと黒坂森のまんなかのおほきないはが、ある日、威張つてこのおはなしをわたくしに聞かせました。
狼森と笊森、盗森 (新字旧仮名) / 宮沢賢治(著)
硝子のないおほきな建物の前へ来ると、あゝこゝが三越だつたのだと、ゆき子は高いビルを見上げた。
浮雲 (新字旧仮名) / 林芙美子(著)
十七夜の月惜みをればおどろしくしろきおほき雲の亂れ立ち蔽ふ
白南風 (旧字旧仮名) / 北原白秋(著)
「さあ、見附けたぞ。この足跡の尽きた所には、きっとこいつが倒れたまゝ化石してゐる。おほきな骨だぞ。まづ背骨なら二十米はあるだらう。巨きなもんだぞ。」
楢ノ木大学士の野宿 (新字旧仮名) / 宮沢賢治(著)
十七夜の月惜みをればおどろしくしろきおほき雲の乱れ立ち蔽ふ
白南風 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
そして二人が正面の、おほきなむねにはひつて行くと、もう四方から馬どもが、二十ぴきもかけて来て、ひづめをことこと鳴らしたり、頭をぶらぶらしたりして、将軍の馬に挨拶あいさつする。
北守将軍と三人兄弟の医者 (新字旧仮名) / 宮沢賢治(著)
夏すでに花穂立ちそろふおほき草西洋大葉子は吾子あこより高し
風隠集 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
いゝや、さうぢゃない、白堊はくあ紀のおほきな爬虫はちゅう類の骨骼こっかくを博物館の方から頼まれてあるんですがいかゞでございませう、一つお探しを願はれますまいかと、斯うぢゃなかったかな。
楢ノ木大学士の野宿 (新字旧仮名) / 宮沢賢治(著)
真上空まうへぞら飛ぶ雲はやしまさしくはおほきマストの揺れかしぎつつ
海阪 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
汗ですっかり寒天みたいに黒びかりする四匹か五匹のおほきな馬をがらんとくらいうまやのなかへ引いて入れ、なにかいろいろまじなひみたいなことをしたのち土間でこっそり飯をたべ
家長制度 (新字旧仮名) / 宮沢賢治(著)
ひだふかく光こもらふ黄金雲こがねぐも蒸すからにおほふたつ牡丹花
白南風 (旧字旧仮名) / 北原白秋(著)
さてもリンポー先生の、草木を治すそのへやは、林のやうなものだつた。あらゆる種類の木や花が、そこらいつぱいならべてあつて、どれにもみんな金だの銀の、おほきな札がついてゐる。
北守将軍と三人兄弟の医者 (新字旧仮名) / 宮沢賢治(著)
ひだふかく光こもらふ黄金雲こがねぐも蒸すからにおほふたつ牡丹花
白南風 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
おほきな波をあげたり、じっとしづまったり、たれも誰も見てゐない所でいろいろに変ったその巨きな鹹水かんすゐの継承者は、今日は波にちらちら火を点じ、ぴたぴた昔の渚をうちながら夜昼南へ流れるのです。
イギリス海岸 (新字旧仮名) / 宮沢賢治(著)
眞平またひらと根に湧きあがるおほき雲鐵鈷雲かなとこぐもぞ吹き亂れたる
白南風 (旧字旧仮名) / 北原白秋(著)
真平またひらと根に湧きあがるおほき雲鉄鈷雲かなとこぐもぞ吹き乱れたる
白南風 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
そのおほきな光る人が微笑わらって答へました。
ひかりの素足 (新字旧仮名) / 宮沢賢治(著)
火口のおほきなゑぐりを見ては
『春と修羅』 (新字旧仮名) / 宮沢賢治(著)
かげはありおほき戰車
新頌 (旧字旧仮名) / 北原白秋(著)
おほきな、がまの形の足あとは
楢ノ木大学士の野宿 (新字旧仮名) / 宮沢賢治(著)
かげはありおほき戦車
新頌 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)