まわ)” の例文
「とにかく、これはただごとじゃないよ。わしらだけであけるのはやめて、おまわりさんにきてもらったうえでのことにしようや」
金属人間 (新字新仮名) / 海野十三(著)
しかしそのうちうちの外側を七分通りまわって、ちょうど台所の裏手に当っている背戸せどの井戸ばたまで来ると、草川巡査はピタリと足をめた。
巡査辞職 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
一つの神さまのおやしろへ、百度二百度のお参りをする代りに、つづけて数多くの宮をまわってあるくというふうも、大分だいぶ前からはじまっている。
母の手毬歌 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
昔のいわゆるおまわりさんは別にそれをとがめなかったので、私たちは泥草鞋をふりまわして夏のゆうぐれの町を騒がしてあるいた。
綺堂むかし語り (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
まだおまわりさんや、刑務所のごやっかいにならずともよいのです。宗教家や教育家の力でどうともする事ができるのです。
般若心経講義 (新字新仮名) / 高神覚昇(著)
「国は多いよ、海は広いよ、けれど何千何万里、まわってみたって、日本のような国は、ありはしない。唐天竺からてんじくといったって、ありはしない」
新書太閤記:06 第六分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
棟が幾個いくつにも別れていて、それらの幾個かの棟をまわって、石垣が厳重につくられてあり、植込が繁く茂っていました。
まわりさんが、よっぱらいかと思ったのも、むりはありません。しかし、よく見ると、よっぱらいともちがいます。
青銅の魔人 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
「です、は、いかんよ。おい、増田、おまわりなんぞになりやがつて、いつたいどういう量見だ。まず、それを言え」
この握りめし (新字新仮名) / 岸田国士(著)
「今ぐるぐるまわって、休もうと思ったが、どこもいていない。駄目だめだ、ただで掛けられる所はみんな人が先へかけている。なかなか抜目ぬけめはないもんだな」
野分 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
鶴さんの出ていった後から、自身で得意先を一循まわって見て来たりするお島は、時には鶴さんと二人で、夜おそく土産みやげなどを提げて、好い機嫌で帰って来た。
あらくれ (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
迷子まいごは、おまわりさんにつれられて、あちらへゆきました。そのあとから、ぞろぞろと人々ひとびとがついてゆきます。
銅像と老人 (新字新仮名) / 小川未明(著)
父に訴えても、母に訴えても、おまわりに訴えても、政府に訴えても、結局は世渡りに強い人の、世間に通りのいい言いぶんに言いまくられるだけの事では無いかしら。
人間失格 (新字新仮名) / 太宰治(著)
町をまわりすました後では、揃ってこの演芸館へ練込んで、すなわち放楽の乱舞となるべき、仮装行列を待顔に、掃清はききよめられたさまのこのあたりは、軒提灯のきぢょうちんのつらなった中に
怨霊借用 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
フィンランド人のおまわりさんが一人、上から下までやはり灰色の服を着け、つぼみたいな格好かっこうの、おそろしく大きな古くさい筒形帽子つつがたぼうしをかぶり、ほこ形の警棒を小脇こわきにして
はつ恋 (新字新仮名) / イワン・ツルゲーネフ(著)
大恩のある御主人様の身辺あたりへ気を付けて、警護をしていることを遠慮は出来ませんよ、無理な話だ、まわったにちがえねえ、それでもまだ遠慮して外庭ばかり巡って居りました
菊模様皿山奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
栄二 兄さん、此奴こいつ、泥棒なんだ。あすこから入って来て、櫛とろうとしたんだ。僕がお母さんに上げる櫛持っていこうとしたんだ。おまわりさん呼んで、警察にわたしてやるんだ。
女の一生 (新字新仮名) / 森本薫(著)
将軍と吾輩は駐在所へ行って、巡査に依頼してようやく、一井いちいという旅館へ宿とまることとなった。いかさま、おまわりさんでも頼まなければ、どの家でも泊めてくれなかったかも知れぬ。
安達君は弼君がボールをやっているところへ行ってお相手を勤めた。その中に弼君の方から誘いに来た。そこへ吉川君が加わった。往来でやってはならんとおまわりさんに叱られたことがある。
求婚三銃士 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
「そうです、そうです。おまわりさん、さあ、つかめえてくだせえ」
「おまわりか、このおっさんが。よせやい」
いやな感じ (新字新仮名) / 高見順(著)
だから僕はね、すこしでもはやく海軍の軍人さんかおまわりさんかにあいたいんだよ。いそがないと、たいへんなことになるんだ。ねえ、お爺さん。
怪塔王 (新字新仮名) / 海野十三(著)
にぎやかな浅草観音の境内の、五重の塔の中に、こんな泥坊が忍び込んでいようとは、そこから一町とはへだたぬ交番のおまわりさんでも、気がつかなんだ。
一寸法師 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
数日にわたって、雪なお深い山村、渓谷、高地などを歩きまわりながら、秀吉は、杖にしていた竹のさきで、折々、要地を指しては、こう指図して歩いた。
新書太閤記:09 第九分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
とうとう四返繰り返したが、四返目に半分ほどまわりかけたら、隣の屋根から烏が三羽飛んで来て、一間ばかり向うに列を正してとまった。これは推参な奴だ。
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
深夜、保護室の隣りの宿直室で、寝ずの番をしていた年寄りのおまわりが、間のドアをそっとあけ
人間失格 (新字新仮名) / 太宰治(著)
「あ、時どきお顔をみて知つています。おまわりさんはどこにいてもすぐにわかるから変だな」
この握りめし (新字新仮名) / 岸田国士(著)
家々では篝火かがりびを焚き、夜になると、その火で松明たいまつを燃やし、諏訪神社の境内をまわった。
血曼陀羅紙帳武士 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
忠義というものは誠だ誠の遠慮は何うしても出来ません、よるまわることは別段誰にも言付かったことはない、役目のほかだ、私も眠いからうちで眠れば楽だ、楽だが、それでは済みませんや
菊模様皿山奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
「おまわりさんが助けられるなんて、前代未聞でございますからね」
求婚三銃士 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
深さは立って乳の辺まであるから、運動のために、湯の中を泳ぐのはなかなか愉快ゆかいだ。おれは人の居ないのを見済みすましては十五畳の湯壺を泳ぎまわって喜んでいた。
坊っちゃん (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
交番も焼けてしまって、わずかに残ったのは立番所の箱小屋の外がわだけで中にはおまわりさんの姿もない。焼けた電話機の鈴とマグネットが下にころがっている。
一坪館 (新字新仮名) / 海野十三(著)
そのふたりが出て行って、しばらくすると、また、秘密戸が開いて、黒い詰襟つめえりの服を着た男が、はいってきました。おまわりさんのような帽子を手に持っています。
電人M (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
「わかりました。君はなかなか話せるおまわりさんだ。またちよいちよい、それこそ、個人の資格で遊びに来てください。時々は退屈してるから、粗茶でも差し上げましよう」
この握りめし (新字新仮名) / 岸田国士(著)
せて小柄のおまわりが玄関で、帳簿の私の名前と、それから無精髯ぶしょうひげのばし放題の私の顔とを、つくづく見比べ、おや、あなたは……のお坊ちゃんじゃございませんか? そう言うお巡りのことばには
黄金風景 (新字新仮名) / 太宰治(著)
孔明は白い羽扇うせんを持ってそれに乗り、味方の陣々をまわった。
三国志:11 五丈原の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
茅野雄はまわった! 木立を巡った。もう一本の木立へ来た。
生死卍巴 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
だから、その証人にはパトロールのおまわりさんが一番いいというわけね。そうすると、あたしはここにいたことになるけれど、かよわい女だからどうにもできなかった。
月と手袋 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
かけて、おまわりさんにきてもらうんだ。さっき小玉君のお父さんにいわれたろう。自分が子供であることを忘れちゃいけないって。だからお巡りさんに電話をかけて猫女と小男を
少年探偵長 (新字新仮名) / 海野十三(著)
まあ一ぱい、おや僕が飲めと云うのに……などと呂律ろれつまわりかねるのも一人二人ひとりふたり出来て来た。少々退屈たいくつしたから便所へ行って、昔風な庭を星明りにすかしてながめていると山嵐が来た。
坊っちゃん (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
杯もまわりはじめる。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
すると、そのときボートが浜べについて中から水兵さんが、どやどやと下りてきましたが、そのうちの一人が、警戒に来ているおまわりさんのところへやってきて、話をはじめました。
怪塔王 (新字新仮名) / 海野十三(著)
それで殺されたい人間は門口かどぐちへ張札をしておくのだね。なにただ、殺されたい男ありとか女ありとか、はりつけておけば巡査が都合のいい時にまわってきて、すぐ志望通り取計ってくれるのさ。
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
莫迦ばか、そんなことを大きな声で云うと、おまわりさんに叱られるぞ。お前なんか、そんな余計な心配なぞしないで、それよか工場がひけたら、ちと早く帰って来て、お湯にでも入りなさい」
空襲葬送曲 (新字新仮名) / 海野十三(著)
国道には、おまわりさんが、交番の中から、じっと夜の番をしていました。
豆潜水艇の行方 (新字新仮名) / 海野十三(著)