少女むすめ)” の例文
少女むすめはぬけろじを出るや、そっと左右を見た。月は中天にかゝっていて、南から北へと通った此町を隈なく照らして、しんとしている。
二少女 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
耳が動くといふと猫のやうだと、若い少女むすめは笑つてしまふかもしれなが、鬢でかくして來たくせがついて、とかく女の耳は愚圖のろまつたらしい。
夏の女 (旧字旧仮名) / 長谷川時雨(著)
そうしていて、なん容赦ようしゃもなく、このあわれな少女むすめを、砂漠さばく真中まんなかれてって、かなしみとなげきのそこしずめてしまいました。
村第一の立派な青年わかものと、村第一の美しい少女むすめですから、皆は最早自分達が取りに行くよりもずっと勢い付いて、直ぐに支度に取りかかりました。
白髪小僧 (新字新仮名) / 夢野久作杉山萠円(著)
巡「大方妾のおりゅうとお駒と申す少女むすめを辱かしめたる上に斬殺きりころし、死骸は河の中へほうり込んで、舟で逃げたものだろう」
霧陰伊香保湯煙 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
文答師は難波津なにわづに着いてこの由を官を経て奏上した。皇后がおおせられるに、わたくしは大臣の少女むすめ、皇帝の后宮である。どうして異国大王の賢使などに逢えよう。
古寺巡礼 (新字新仮名) / 和辻哲郎(著)
青田あをた畦畔くろには處々しよ/\萱草くわんさうひらいて、くさくとては村落むら少女むすめあかおびあつやさないでも、しぼんではひらいて朱杯しゆはいごと點々てん/\耕地かうちいろどるのである。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
寝転ろんで鏡を見ていると、歪んだ顔が少女むすめのように見えて、体中が妙にねつっぽくなって来る。
放浪記(初出) (新字新仮名) / 林芙美子(著)
路にをさおとの高く聞ゆる家ありければまなこを転じて見るに、花の如き少女むすめありてを用ゆること甚だはし、わが蓬莱曲の露姫が事を思ひ出でゝなつかしければ、能く其おもてを見んとするに
三日幻境 (新字旧仮名) / 北村透谷(著)
唯円 (いかる)あなたは一人の少女むすめの心をあまり見くびっていらっしゃいます。また僧だから尊い、遊女だから卑しいというような考え方は概念的ではありませんか。僧の心にでも汚れはあります。
出家とその弟子 (新字新仮名) / 倉田百三(著)
「少しはなし突然だしぬけですがね、まず僕の不思議の願というのを話すにはこの辺から初めましょう。その少女むすめはなかなかの美人でした」
牛肉と馬鈴薯 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
ラプンツェルは、世界せかい二人ふたりいくらいのうつくしい少女むすめになりました。少女むすめが十二さいになると、魔女まじょもりなかにあるとうなかへ、少女むすめ閉籠とじこめてしまった。
幸「今年十六才になりますお駒と云う少女むすめが見えません、尤も同人の寝衣、扱きとうが倉前に落ちて居りますから、賊が倉の中に隠れて居りまするかも知れません」
霧陰伊香保湯煙 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
今までこの湖のふちをぐるりと布告ふれてまわったが、まだ二人のような勇ましい青年わかもの少女むすめは一人も居なかったと千切ちぎりましたが、とにかくそれでは今から直ぐに支度をして
白髪小僧 (新字新仮名) / 夢野久作杉山萠円(著)
あれは松井の子だったのではないかしら、あんまりよく似ているというようなことを、今度その少女むすめも葬式に来たときに内部の人は言った。しかしその少女のことは遺書にはなかった。
松井須磨子 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
十四五の少女むすめ同志のはなし。
放浪記(初出) (新字新仮名) / 林芙美子(著)
「御壕の処まで送りましょうよ、」とお秀はかまわず同伴いっしょに来る。二人の少女むすめの影は、薄暗いぬけろじの中に消えた。
二少女 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
それから王子おうじつまになってくれないかとすと、少女むすめ王子おうじわかくって、うつくしいのをて、こころうち
僕はまだまだおおいなる願、深い願、熱心なる願をもっています。この願さえかなえば少女むすめは復活しないでもよろしい。復活して僕の面前で僕を売ってもよろしい。
牛肉と馬鈴薯 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
 すると或日少女むすめの母から電報が来ました、驚いて取る物も取あえず帰京してみると、少女むすめ最早もう死んでいました
牛肉と馬鈴薯 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
けないと言うに!」と自分は少女むすめを突飛ばすと、少女むすめは仰向けに倒れかかったので、自分は思わずアッと叫けんでこれをささえようとした時、さむれば夢であって
酒中日記 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
夏の初、月色ちまたに満つる夜の十時ごろ、カラコロと鼻緒のゆるそうな吾妻下駄あずまげたの音高く、芝琴平社しばこんぴらしゃの後のお濠ばたを十八ばかりの少女むすめ赤坂あかさかの方から物案じそうに首をうなだれて来る。
二少女 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)