)” の例文
なんゆえ私宅教授したくけふじゆの口がありても錢取道ぜにとるみちかんがへず、下宿屋げしゆくやに、なにるとはれてかんがへることるとおどろかしたるや。
「罪と罰」の殺人罪 (旧字旧仮名) / 北村透谷(著)
聟どのの家から大事に消えぬように持って来た脂燭ししょくともしを、すぐ婚家のが、その家の脂燭に移しともして、奥へかけこんでゆく。
新書太閤記:02 第二分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
かれは清川お通とて、親も兄弟もあらぬ独身ひとりみなるが、家を同じくする者とては、わずかに一にん老媼おうなあるのみ、これそのなり。
妖僧記 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
もっとも抽斎をして不平に堪えざらしめたのは、栄玄が庶子とまを遇することの甚だ薄かったことである。苫は栄玄が厨下ちゅうかに生せたむすめである。
渋江抽斎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
姉も妹も並んで一所に額付ぬかづいた……二人の白羽二重の振袖ふりそでが、二人がなよやかな首を延べて身をかゞめようとするその拍子に、丸いの肩を滑つて
老主の一時期 (新字旧仮名) / 岡本かの子(著)
とうしょうさいというて、盗み食いする味は、また別じゃというほどに、人の女房とても捨てたものではない。
藤十郎の恋 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
彼らの召し使いとしては、バティスティーヌ嬢と同年配のマグロアールというが一人いたきりだった。
片岡中将はさんぬる五月に遼東より凱旋しつ。一日浪子の主治医を招きて書斎に密談せしが、その翌々日より、浪子を伴ない、の幾を従えて、飄然ひょうぜんとして京都に来つ。
小説 不如帰  (新字新仮名) / 徳冨蘆花(著)
ここの二階で毎朝寝巻のままで窓前にそびゆるガスアンシュタルトの円塔をながめながらのヘルミーナの持って来る熱いコーヒーを飲み香ばしいシュニッペルをかじった。
コーヒー哲学序説 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
はなして席間に周旋せしめ、番語で申し付くると俄に一はちを捧げ至る、また番語で詈れば一碗をえて来る、驚いて問うと答えて、それがしあり、子を生んだが弥月びげつにして死んだ。
同月どうげつ十七にち、いよ/\發掘はつくつこととしたが家人かじん其状態そのじやうたいたいといふので、らば其用意そのえういしてくべしとて、さいとに糧食れうしよくたづさへさせ、あいする親族しんぞくの六さい幼女えうぢよ
しづを、再び屋内をくないに入り、倉皇さうくわう比呂志をいだいて出づ。父また庭をめぐつて出づ。このかん家大いに動き、歩行甚だ自由ならず。屋瓦をくぐわ乱墜らんつゐするもの十余。大震漸く静まれば、風あり、おもてを吹いて過ぐ。
あり別れを惜みて伏水ふしみに至る。兵士めぐつて之をる。南洲輿中より之を招き、其背をつて曰ふ、好在たつしやなれと、金を懷中くわいちゆうより出して之に與へ、かたはら人なき若し。兵士はなはだ其の情をかくさざるに服す。
が書斎の六樹園の許に刺を通じて
仇討たれ戯作 (新字新仮名) / 林不忘(著)
手をたゝきを呼びづめや風邪かぜの妻
五百五十句 (新字旧仮名) / 高浜虚子(著)
父が北千住に居った時、家に一があった。肥白ひはくにして愛想好く、挙止もまた都雅であった。然るにこの婢の言う所は、一々わたくし共兄弟姉妹の耳を驚かした。
細木香以 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
かくてこそ一家は円滑に、その営みはよく治まって参りますが、仮に、その家の主が、ともなりともなり、独りですべてをなそうとしたらどうなりましょう。
三国志:11 五丈原の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
下僕げぼく走り出迎へ花の荘
五百五十句 (新字旧仮名) / 高浜虚子(著)
たとえば、一家の営みを見ましても奴婢ぬひがおれば、は出でて田を耕し、は内にあってあわかしぐ。——鶏はあしたを告げ、犬は盗人の番をし、牛は重きを負い、馬は遠きに行く。
三国志:11 五丈原の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そしてこれに飯を盛るに、をして盛らしむるときは、過不及かふきゅうを免れぬといって、飯を小さいひつに取り分けさせ、櫃から椀に盛ることを、五百の役目にしていた。朝の未醤汁みそしるも必ず二椀に限っていた。
渋江抽斎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)