大人うし)” の例文
けれども是は批評をするのだと、馬琴大人うしに甚だ以て相済ぬ、唯ね、どうもネ。彼の人は意地の悪いネヂケた爺さんのやうだからさ。
いろ扱ひ (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
賀茂真淵かものまぶち大人うしは、是も東西の各地にある丹生にふという地名を、同じ例に加えようとせられたが、それには本居もとおり氏がまず同意をしなかった。
海上の道 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
豊雄、七二ここに安倍あべ大人うしとまうすは、年来としごろ七三まなぶ師にてます。彼所かしこに詣づる便に、傘とりて帰るとて七四推して参りぬ。
一切の「からごころ」をかなぐり捨てて、言挙ことあげということもさらになかった神ながらのいにしえの代に帰れと教えたのが大人うしだ。
夜明け前:01 第一部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
あなたが神の道を学びたいとのお心なら、それはどうしても黒住宗忠公から出立なさらなくてはいけません、平田大人うしではお話になりませんよ
大菩薩峠:32 弁信の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
投げ棄てるころもであらわれた神は煩累わずらい大人うしの神、投げ棄てるはかまであらわれた神はチマタの神、投げ棄てる冠であらわれた神はアキグヒの大人の神
もてアタマくだしに評し去るはあにに心なきの極ならずや我友二葉亭の大人うしこのたび思い寄る所ありて浮雲という小説をつづりはじめて数ならぬ主人にも一臂いっぴ
浮雲 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
畑銀雞はたぎんけいの『江戸文人寿命附』という俗書に「講釈もわけて手に入る水滸伝すいこでん江戸に名をえし大人うしの小説」としてある。
下谷叢話 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
わしの首を斬って、おまえの主人、姫路の城主池田輝政殿の前へ持って行ってごらんじゃい、輝政大人うしは、オヤ沢庵、今日は首だけでお越しかと驚くじゃろう。
宮本武蔵:02 地の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
其は荷田の門に大人うし(真淵)をおきて、外に大人の如く、師に勝れる人なきにて知るべし。
二千六百年史抄 (新字旧仮名) / 菊池寛(著)
私はその話を聞いてほほえんだのでしたが、近頃成尋阿闍梨じょうじんあじゃりの母の日記のことを佐佐木信綱ささきのぶつな大人うしの書かれたのに、その母性愛のことの記されてあるのを読んで動かされました。
鴎外の思い出 (新字新仮名) / 小金井喜美子(著)
中に、祖母が「その性高く雄々しく中條精一郎大人うしの御親としてよく教へよく導き」
祖母のために (新字新仮名) / 宮本百合子(著)
本居宣長大人うしの「大祓詞後釈」を始めとして、古来種々の解釈が試みられているが
法窓夜話:02 法窓夜話 (新字新仮名) / 穂積陳重(著)
蘆屋の大人うしさかしいお人で、世渡りの道にかけては、諸事ぬかりなくやってのけるという評判だが、表の道に木戸をおき、唐門の櫓に見張りあげて守らせても、裏の水路はまるあきで
うすゆき抄 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
向島むかうじま武蔵屋むさしや落語らくごくわい権三ごんざますと、四方よも大人うしふでにみしらせ、おのれ焉馬えんば判者はんじやになれよと、狂歌きやうかの友どち一ぴやく余人よにん戯作げさくの口を開けば、遠からん者は長崎ながさきから強飯こはめしはなし、近くば
落語の濫觴 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
承知いたしました。おつたえいたしますが。泰軒大人うし、いくら心を
丹下左膳:02 こけ猿の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
乏しきを老いて豊けき大人うし見ればとりけ風呂焚け造酒みきよとめんよと
夢殿 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
茫々と吉田の大人うしに過去の見えそれよりも濃く我に現る
晶子鑑賞 (新字旧仮名) / 平野万里(著)
黄海のうねりの上の大船おほふねに花田の大人うしと語る初夏
暗き哉、大人うし亡きのちの秋灯あきともし
わが心のなかの白鳥碑 (新字旧仮名) / 佐藤春夫(著)
児島備後びんご三郎大人うしの詩の心を
墨汁一滴 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
昔の聖 今の大人うし
遠友夜学校校歌 (新字旧仮名) / 有島武郎(著)
「はあ、貴方あなたがその勝山さんのお使つかい?」と大人うし紅革べにかわ夏蒲団なつぶとんの上に泰悠におわす。此方こなたは五ツ紋の肩をすぼめるまで謹んで
三枚続 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
平田家では、彼の名を誓詞帳(平田門人の台帳)に書き入れ、先師没後の門人となったと心得よと言って、束脩そくしゅうも篤胤大人うしの霊前に供えた。
夜明け前:01 第一部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
三一てきすべからねば、おそらくはうけがひ給はじ。媒氏なかだちの翁ゑみをつくりて、大人うしくだり給ふ事甚し。
病気もあって、人が現に悩んでいます、やっぱり平田大人うしと同様に、拙者にも、真如から無明の出所がわからない、生き通しのお光から闇とけがれが出るという理がわかりません
大菩薩峠:32 弁信の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
次に投げ棄つる御けしに成りませる神の名は、煩累わづらひ大人うしの神。次に投げ棄つる御はかまに成りませる神の名は、道俣ちまたの神。次に投げ棄つる御冠みかがふりに成りませる神の名は、飽咋あきぐひ大人うしの神
……鹿は鹿の子の『か』と読ませるつもりだそうだから、すると『五』は五月さつきの『さ』。こりゃあ、わけはない。すると『大』はこの筆法で、大臣おとどの『お』かな、それとも大人うしの『う』かな。
顎十郎捕物帳:01 捨公方 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
同時に、平田大人うし没後の門人と一口には言っても、この先輩に水戸風な学者の影響の多分に残っていることは争えないとも考えさせられた。
夜明け前:01 第一部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
「何じゃな、きさまは一体、」と大人うしは正面に腕を組む。令夫人はものもいわずと後向きになりたまう。後室は声鋭く
三枚続 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
従来もとよりかの家は二三吉備の鴨別かもわけすゑにて家系すぢめも正しければ、君が家に二四ちなみ給ふは二五はた吉祥よきさがなるべし。此の事のらんは二六老が願ふ所なり。二七大人うし心いかにおぼさんやといふ。
清内路とは半蔵が同門の先輩原信好のぶよしの住む地であり、座光寺とは平田大人うしの遺書『古史伝』三十二巻の上木じょうぼくに主となって尽力している先輩北原稲雄の住む村である。
夜明け前:02 第一部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
が、大人うしに道徳というはそぐわぬ。博学深識のじゅ七位、花咲く霧に烏帽子は、大宮人の風情がある。
茸の舞姫 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
真先まっさきに気が着いたのは、大人うしが机のそばに差置かれたる、水引のかかった進物の包であった。
三枚続 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
社務所を虎のごとく猛然としてあらわれたのは摂理の大人うしで。
茸の舞姫 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)