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か
ふりがな文庫
“
嘗
(
か
)” の例文
私だって、
嘗
(
か
)
つては、このように、見え透いた嘘を、見破られているのを知っていながらも一生懸命に言い張ったことがあったのだ。
善蔵を思う
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
極めて人を感動せしむる力量あり。彼は「彼が三十の時」(千九百十五年)の序の中に、
嘗
(
か
)
つてかう言つてゐる。
下略
(
げりやく
)
。等の類である。
日本小説の支那訳
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
「
愛欲之中
(
アイヨクシチユウ
)
。……
窈窈冥冥
(
ヤウヤウミヤウミヤウ
)
。
別離久長
(
ベチリクチヤウ
)
」
嘗
(
か
)
つて學舍でG師に教はつて切れ/″\に
諧
(
そら
)
んじてゐる經文が聞えると、心の
騷擾
(
さうぜう
)
は
彌増
(
いやま
)
した。
崖の下
(旧字旧仮名)
/
嘉村礒多
(著)
嘗
(
か
)
つて女優春川月子が、世にも無残な死をとげたのが、場所こそ違え、やっぱり化物屋敷と云われている空家の中ではなかったか。
妖虫
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
嘗
(
か
)
つてユーゴのミゼレハル、
銀器
(
ぎんき
)
を
盜
(
ぬす
)
む
一條
(
いちでう
)
を
讀
(
よ
)
みし
時
(
とき
)
に
其
(
その
)
精緻
(
せいち
)
に
驚
(
おどろ
)
きし
事
(
こと
)
ありしが、この
書
(
しよ
)
載
(
の
)
するところ
恐
(
おそ
)
らく
彼
(
か
)
の
倫
(
りん
)
にあらざるべし。
罪と罰(内田不知庵訳)
(旧字旧仮名)
/
北村透谷
(著)
▼ もっと見る
欣之介が予定してあつた春に、
園
(
その
)
の林檎が花をつけた。その美しい淡紅色の花が、
嘗
(
か
)
つて見たことのない村人の眼を驚ろかした。
新らしき祖先
(新字旧仮名)
/
相馬泰三
(著)
夢殿が修理中のため、その前の礼堂に安置されていた頃の救世観音について、私は
嘗
(
か
)
つて次のような印象を述べたことがある。
大和古寺風物誌
(新字新仮名)
/
亀井勝一郎
(著)
私が
嘗
(
か
)
つて清算しよう清算しようとして、それがこの上もなく困難だったそれらのことが、極めて必然的に安々と行われていたのを知って驚いた。
党生活者
(新字新仮名)
/
小林多喜二
(著)
これ等はこの島に隠れる事二十六年、熱心な伝道者であったが、
嘗
(
か
)
つては益田好次同様豊臣の恩顧を受けた者である。
島原の乱
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
加奈江はその卓の間をすり抜けて堂島が
嘗
(
か
)
つて向っていた卓の前へ行った。その卓の右隣りが山岸という堂島とよく連れ立って帰って行く青年だった。
越年
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
併
(
しか
)
し一つも他人の気持はさし置いて自分の意に満つやうな気持のいゝ解決方法はなかつた。
嘗
(
か
)
つて私が私の両親や血族に向つてした方法より他はなかつた。
人間と云ふ意識
(新字旧仮名)
/
伊藤野枝
(著)
そして色々な非難もあらうが、谷崎君も
嘗
(
か
)
つて云つた通り、明るく快活な気持で、一
夕
(
せき
)
を過すと云ふ意味なら、もつと、寧ろ流行させたいやうな気がする。
私の社交ダンス
(新字旧仮名)
/
久米正雄
(著)
そういう考え方は
嘗
(
か
)
つての他界信仰の名残りのようなものをおおく止めておりますが、半ばそれを否定しながらも、半ばそれを好んで受け入れようとしている
大和路・信濃路
(新字新仮名)
/
堀辰雄
(著)
彼の仕事着をつかんで、彼の母は、
嘗
(
か
)
つて一度も、子に見せた事のない程な、悲しい声を
顫
(
ふる
)
わせて
縋
(
すが
)
った。
山浦清麿
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
久しぶりの主君を正面の座に迎えて、
嘗
(
か
)
つての士分以上がここの大広間に居流れていた。口には出さなかったが、彼らの姿かたちには
安堵
(
あんど
)
の思いが浮んでいた。
石狩川
(新字新仮名)
/
本庄陸男
(著)
氷の上に立つて、湖水の四周から、
嘗
(
か
)
つて記憶に止め置いた四個の目標地点を求れば足るのである。
諏訪湖畔冬の生活
(新字旧仮名)
/
島木赤彦
(著)
嘗
(
か
)
つてものした愚作「紙人形春の囁き」とか「狂恋の女師匠」とか云ふ、
所謂
(
いはゆる
)
下町情話物が、私の作品の中では割合に強い記憶を与へてゐるので、人々は、それを土台として
日本趣味映画
(新字旧仮名)
/
溝口健二
(著)
が、非常に猛烈な嵐で其の枝の一部分は地面に投げ飛ばされて、
嘗
(
か
)
つて経験のない程の重大な損害を受けた。が、其の害にも拘はらず、二本の水松は今も、けだかい老木なのだ。
科学の不思議
(新字旧仮名)
/
ジャン・アンリ・ファーブル
(著)
須田町と言へば、これも
嘗
(
か
)
つて私の言つた処であるが、その場処そのものが誤訳である。両国でも、この筋違でも、旧来の広場をつぶして、新らしい広場の誤訳をもツて来たものである。
翻訳製造株式会社
(新字旧仮名)
/
戸川秋骨
(著)
醒
(
さ
)
むるよ。
嘗
(
か
)
つて
夜
(
よ
)
を
高
(
たか
)
み
全都覚醒賦
(新字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
「俺というこの人間はいったい何なのだ。何をしているのだ。
嘗
(
か
)
つて何をしたか。そしてこれから先、何をしようとしているのか。……」
田舎医師の子
(新字新仮名)
/
相馬泰三
(著)
嘗
(
か
)
つて私がした様に、春泥の最後の
住居
(
すまい
)
であった上野桜木町三十二番地附近を調べさせたが、
流石
(
さすが
)
は専門家である、その刑事は苦心の末
陰獣
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
然
(
しか
)
れども、之を以て直ちに老生の武術に於ける才能の貧困を云々するは早計にて、
嘗
(
か
)
つて誰か、ただ一日の修行にて武術の
蘊奥
(
うんおう
)
を極め得たる。
花吹雪
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
いや、
嘗
(
か
)
つては、長崎の町にはびこつた、恐しい熱病にとりつかれて、七日七夜の間、道ばたに伏しまろんでは、苦み
悶
(
もだ
)
えたとも申す事でござる。
奉教人の死
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
残花道人
嘗
(
か
)
つて桂川を渡る、期は夜なり、風は少しく雨を
交
(
まじ
)
ゆ、「
昨日
(
きのふ
)
も
今日
(
けふ
)
も
五月雨
(
さみだれ
)
に、ふりくらしたる頃なれど」
「桂川」(吊歌)を評して情死に及ぶ
(新字旧仮名)
/
北村透谷
(著)
嘗
(
か
)
つては法隆寺も東大寺もかくのごとくであったろう。わずかに心ある人のみが荒廃の址に
佇
(
たたず
)
み、涙しつつ往時の壮麗を偲び拝して立ち去ったのであろう。
大和古寺風物誌
(新字新仮名)
/
亀井勝一郎
(著)
海陸運輸の便があり、
嘗
(
か
)
つて、北条氏、足利氏等の九州征略の際にも、博多はその根拠地となった程である。
田原坂合戦
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
彼は
嘗
(
か
)
つて覚えたことのない血の激しい流れを感じた。これからやってのけなければならない、大きな任務を考えると、彼はガタ/\と身体がふるえ出した。
工場細胞
(新字新仮名)
/
小林多喜二
(著)
そんな幸福だとか何んだとか云うような事は、
嘗
(
か
)
つてはあれ程おれ達をやきもきさせていたっけが、もう今じゃあ忘れていようと思えばすっかり忘れていられる位だ。
風立ちぬ
(新字新仮名)
/
堀辰雄
(著)
それほど
狼狽
(
ろうばい
)
したのだ。間もなくそのうちのある者は、
嘗
(
か
)
つての
朋輩
(
ほうばい
)
の、あるいは目下のものの許へ嘆願に来ている。ここにもその一人がいた。即ち、阿賀妻であった、——
石狩川
(新字新仮名)
/
本庄陸男
(著)
それでゐて、彼女は
嘗
(
か
)
つて私に対して訓戒がましい事を云つた事がありませんでした。
背負ひ切れぬ重荷
(新字旧仮名)
/
伊藤野枝
(著)
嘗
(
か
)
つて村田君が持つて行つた「街の手品師」や、松竹の「萩寺心中」が巴里で上映され、
或
(
あるひ
)
は、岡本綺堂氏の「修善寺物語」がそのまゝに日本劇として向うの劇場に、上演されたのに
依
(
よ
)
り
日本趣味映画
(新字旧仮名)
/
溝口健二
(著)
角三郎は、声を荒らげ、
嘗
(
か
)
つて、お悦の知らない恐い眼をして
罵
(
ののし
)
った。
御鷹
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
その可憐な様子を見ると、格二郎は、彼自身の貧乏については、
嘗
(
か
)
つて抱いたこともない、ある
憤
(
いきどお
)
りの
如
(
ごと
)
きものを感じぬ訳には行かなかった。
木馬は廻る
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
嘗
(
か
)
つて光悦作と伝えらるる船橋
蒔絵
(
まきえ
)
硯筥
(
すずりばこ
)
をみたときも、私はそれを指で押してみたい誘惑を禁じえなかった。
大和古寺風物誌
(新字新仮名)
/
亀井勝一郎
(著)
ことしの初夏の頃から、僕のこの若いアンテナは、
嘗
(
か
)
つてなかったほどの大きな
海嘯
(
かいしょう
)
の音を感知し、震えた。けれども僕には何の策も無い。ただ、あわてるばかりだ。
パンドラの匣
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
嘗
(
か
)
つて諸将の上席であった自分も、この有様だと、ついには一田舎諸侯に過ぎなくなるであろう、——秀吉の
擡頭
(
たいとう
)
に不満なる者は次第に勝家を中心に集ることになる。
賤ヶ岳合戦
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
だから彼奴等の裏をかいて、同じ地区にいるのも悪くないと思った。
嘗
(
か
)
つてこんな事がある。
党生活者
(新字新仮名)
/
小林多喜二
(著)
……私はそんな話をしている爺やの無表情な顔のなかに、
嘗
(
か
)
つて彼自身もその老外人に一種の敵意をもっていたらしいことが、一つの傷のように残っているのを私は認めた。
美しい村
(新字新仮名)
/
堀辰雄
(著)
で、龍子は、
嘗
(
か
)
つて此処の未決檻に多勢の同志と一緒にゐた事のあるMに聞いた。
監獄挿話 面会人控所
(新字旧仮名)
/
伊藤野枝
(著)
あたかもそれを予告するように、
嘗
(
か
)
つてない穏かな航路であった。
石狩川
(新字新仮名)
/
本庄陸男
(著)
彼は
嘗
(
か
)
つて、池内と一緒に、同じ様な方法で、芙蓉を誘い出したことがあったので、大体様子を呑み込んでいたのである。
虫
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
「私は
嘗
(
か
)
つて民衆に対してどんな罪を犯したろうか。けれども、いまでは、すっかり民衆の友でないと言われている。
輿論
(
よろん
)
に
於
(
お
)
いて人の誤解されやすいのには驚く。実に驚く。」
春の盗賊
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
鷲の巣は見たことがない、しかし、楠の老木は
嘗
(
か
)
つて見たことがある。上信国境にある牧場のまんなかに、その大木がぽつんと一本だけ立っていた。その孤独な姿がいかにも印象的だった。
雪の上の足跡
(新字新仮名)
/
堀辰雄
(著)
嘗
(
か
)
つて、私達の優れた同志が「七人」もの人に自分の家を知らせ、出入りさせていた。その中には同志ばかりか単なる「シンパ」さえいた。そのためにその優れた同志はアジトを襲われた。
党生活者
(新字新仮名)
/
小林多喜二
(著)
松浦郡は
嘗
(
か
)
つての神功皇后征韓の遺跡であり、湾内も水深く艦隊を碇泊せしめるに便利であったのである。秀吉は、信長在世中、中国征伐の大将を命ぜられたとき、私は中国などはいらない。
碧蹄館の戦
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
品川四郎が
嘗
(
か
)
つて、どんな大陰謀を企らんでいるかも知れぬと、恐れ
戦
(
おのの
)
いたのは、考えて見ると決して
杞憂
(
きゆう
)
ではなかった。
猟奇の果
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
たしかに笠井さんは、その名を、
嘗
(
か
)
つて口にし、また書きしたためたこともあったような気がするのである。わからぬ。ポルト・リッシュ。ジェラルディ。ちがう、ちがう。アンリ・ベック。
八十八夜
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
「四月の後、
嘗
(
か
)
つて老人の坐つた座蒲団には公然と子供等の父なる若者が坐るやうになつた。其背後の半間の間には羽織袴でキチンと坐つた老人の四つ切りの写真が額に入つて立つて居る……」
志賀直哉氏の作品
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
嘗
(
か
)
つてのその少女たちの一人であった
彼女
(
かのじょ
)
の方では、(
恐
(
おそ
)
らく他の少女たちも同様に)そんな私との出会いのことなどは少しも気に留めていないで、すっかり忘れてしまっているのかなあと思った。
美しい村
(新字新仮名)
/
堀辰雄
(著)
嘗
漢検準1級
部首:⼝
14画
“嘗”を含む語句
大嘗
新嘗
新嘗祭
未嘗
舌嘗
嘗試
一嘗
大嘗祭
臥薪嘗胆
大嘗会
新嘗忌
神嘗祭
総嘗
神嘗
相嘗
總嘗
践祚大嘗祭
飴嘗
新嘗会
新嘗屋
...