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匕首
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あいくち
ふりがな文庫
“
匕首
(
あいくち
)” の例文
真新しい紅白の鈴の緒で縛り上げられた中年者の男が、二た突き三突き、
匕首
(
あいくち
)
で刺されて、見るも
無慙
(
むざん
)
な死にようをしているのです。
銭形平次捕物控:008 鈴を慕う女
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
町
(
ちょう
)
役人連名で訴えて出ると、すぐに検視の役人が来た。お寅の傷口は鋭い
匕首
(
あいくち
)
のようなもので深くえぐられていることが発見された。
半七捕物帳:02 石灯籠
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
その、美少女の左の胸のふくらみの下には、
何時
(
いつ
)
刺されたのか、白い
𣠽
(
つか
)
のついた
匕首
(
あいくち
)
が一本、無気味な刃を
衂
(
ちぬら
)
して突刺っているのだ。
鱗粉
(新字新仮名)
/
蘭郁二郎
(著)
「いざ、
介錯
(
かいしゃく
)
下されい、御配慮によって、万事心残りなく取り置きました」といいながら、左の腹に静かに
匕首
(
あいくち
)
の切っ先を含ませた。
恩を返す話
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
大刀
(
どす
)
と、棒と、
匕首
(
あいくち
)
とが、
挟撃
(
きょうげき
)
して
喚
(
わめ
)
き立った。庄次郎は眼の中へ流れこむ汗を
怺
(
こら
)
えて善戦したが、相手の数は少しも減らなかった。
松のや露八
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
▼ もっと見る
で、
匕首
(
あいくち
)
は振り上げたが、敵を切る前に自分の手を、切りそうで切りそうで見ていられない。——と云ったようなあぶなさがある。
前記天満焼
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
むっくり起きあがった源三郎、相変わらず、
匕首
(
あいくち
)
のような、長い蒼白い顔に、もの言うたびに白い歯が、燭台の灯にちかちかする。
丹下左膳:02 こけ猿の巻
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
登はなんのことかわからなかったが、
暫
(
しばら
)
くして、ゆうべ持っていた
匕首
(
あいくち
)
だなと気づいた。角三はそれっきりなにも云わなかった。
赤ひげ診療譚:07 おくめ殺し
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
書記は
仰臥
(
あおむけ
)
に倒れて手足を突張り、
咽
(
のど
)
には
匕首
(
あいくち
)
が突刺さって、顔色は紫色に変っていた。そして口からは一線の生血がタラタラと流れて
水晶の栓
(新字新仮名)
/
モーリス・ルブラン
(著)
「ところが、おおちがいなんだ。殺されたんですよ。殺されたんですよ。どいつかに
匕首
(
あいくち
)
でね、ぐさりとやられているんですよ」
右門捕物帖:23 幽霊水
(新字新仮名)
/
佐々木味津三
(著)
次第に
扮装
(
ふんそう
)
も
巧
(
うま
)
くなり、大胆にもなって、物好きな
聯想
(
れんそう
)
を
醸
(
かも
)
させる為めに、
匕首
(
あいくち
)
だの麻酔薬だのを、帯の間へ
挿
(
はさ
)
んでは外出した。
秘密
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
いずれも、
遊人体
(
あそびにんてい
)
で、時間とともに、人数が増える。懐中に、
匕首
(
あいくち
)
か、日本刀かを隠してでもいるように、妙な恰好をしている。
花と龍
(新字新仮名)
/
火野葦平
(著)
かつて学生のころ、重吉は水戸出身の同級生と争って、
白鞘
(
しらざや
)
の
匕首
(
あいくち
)
でおどかされた事があってから、非常に水戸の人を恐れているのである。
ひかげの花
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
お初、もとより雪之丞の、真の手腕を知っているわけがない——
嚇
(
おど
)
して、追っぱらおうとしたが、例の、帯の間の
匕首
(
あいくち
)
を、キラリと抜くと
雪之丞変化
(新字新仮名)
/
三上於菟吉
(著)
匕首
(
あいくち
)
かなんかで一突きに
刳
(
えぐ
)
られ、あッと叫ぶ間もなく
縡
(
ことき
)
れたのにちがいない。この
穏
(
おだや
)
かな死顔を見ると、その辺の消息が察しられるのである。
平賀源内捕物帳:山王祭の大像
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
お銀様の応対は、いつも懐中に
匕首
(
あいくち
)
を蓄えていて、いざと言えば、自分の咽喉元へブッツリとそれが飛んで来るようで、危なくてたまらない。
大菩薩峠:18 安房の国の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
二人とも何やら浮かぬ顔色で今までの
談話
(
はなし
)
が途切れたような体であッたが、しばらくして老女はきッと思いついた体で傍の
匕首
(
あいくち
)
を手に取り上げ
武蔵野
(新字新仮名)
/
山田美妙
(著)
戦いが恥ずべきものとなり、剣が
匕首
(
あいくち
)
となるのは、ただ、権利と進歩と道理と文明と真理とを刺す時においてのみである。
レ・ミゼラブル:07 第四部 叙情詩と叙事詩 プリューメ街の恋歌とサン・ドゥニ街の戦歌
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
私にはなんの
匕首
(
あいくち
)
もなく、かの人のパッション疑わず、遠くから
微笑
(
ほほえ
)
みかけているのに、かなしく思うことございます。
創生記
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
そこには銃や、
匕首
(
あいくち
)
などが掛けてあったのです。わたしはまだ一度も使ったことのない、鋭利なダマスク製の曲った匕首をとって、鞘を払いました。
クロイツェル・ソナタ:01 クロイツェル・ソナタ
(新字新仮名)
/
レオ・トルストイ
(著)
……それは云い知れぬ思いに燃え立つ妖火のような頬の輝やき、眼の光り……と見るうちに
懐中
(
ふところ
)
の
匕首
(
あいくち
)
、抜く手も見せず、平馬の喉元へ突きかかった。
斬られたさに
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
いゝ悪党なれば、
斯
(
こ
)
う云う時の為に懐にどすといって一本
匕首
(
あいくち
)
をのんで居るが、それ程商売人の
泥的
(
どろてき
)
ではありませんから、用意をいたしておりません。
真景累ヶ淵
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
暗中
匕首
(
あいくち
)
を探ぐってぐっと横腹を突くように、栖方は腰のズボンの時計を素早く計る手つきを示して梶に云った。
微笑
(新字新仮名)
/
横光利一
(著)
地べたにくっつけるお辞儀の
繁文褥礼
(
はんぶんじょくれい
)
だ! そんなお辞儀は先刻承知の助だよ! 『唇に接吻、胸に
匕首
(
あいくち
)
』とシルレルの『群盗』の中にもありまさあね。
カラマゾフの兄弟:01 上
(新字新仮名)
/
フィヨードル・ミハイロヴィチ・ドストエフスキー
(著)
太子は斉から帰ると、側臣の
戯陽速
(
ぎようそく
)
を呼んで事を
謀
(
はか
)
った。翌日、太子が南子夫人に挨拶に出た時、戯陽速は既に
匕首
(
あいくち
)
を呑んで室の一隅の幕の陰に隠れていた。
盈虚
(新字新仮名)
/
中島敦
(著)
おれの
短銃
(
ピストル
)
と
匕首
(
あいくち
)
も持って行ってくれ。おれの武器はそれでたくさんだ。おまえも同じように武装して行け。
世界怪談名作集:02 貸家
(新字新仮名)
/
エドワード・ジョージ・アール・ブルワー・リットン
(著)
突然
匕首
(
あいくち
)
のような悲しみが彼に触れた。次から次へ愛するものを失っていった母の、ときどきするとぼけたような表情を思い浮かべると、彼は静かに泣きはじめた。
冬の日
(新字新仮名)
/
梶井基次郎
(著)
匕首
(
あいくち
)
が彼の懐で蛇のように鎌首を擡げた。が、彼の姿は、すっかり眠りほうけているように見えた。
乳色の靄
(新字新仮名)
/
葉山嘉樹
(著)
瀬川は
打懸
(
うちかけ
)
を引きながら入ってきたが、その客の前へきて、すらりと脱捨てると、右手に閃く
匕首
(
あいくち
)
。
傾城買虎之巻
(新字新仮名)
/
直木三十五
(著)
これだけは工夫した女優の所作で、手には
白金
(
プラチナ
)
が
匕首
(
あいくち
)
のごとく輝いて、
凄艶
(
せいえん
)
比類なき風情であった。
伯爵の釵
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
忠太郎 (紙片を持って、七五郎の懐中から
匕首
(
あいくち
)
を抜き取り、それで立木に刺し止めにと起つ)
瞼の母
(新字新仮名)
/
長谷川伸
(著)
然し毫も屈しないで運動を続け、或時は暴力団に包囲されて、鉄拳で乱打されたり、時には無頼漢に
匕首
(
あいくち
)
を擬して追われたりした、真に死生の間を潜り抜けた勇烈の士だった。
支倉事件
(新字新仮名)
/
甲賀三郎
(著)
藤三は壁に寄り掛ったままだらりと両手を
垂
(
た
)
れた。勇の
匕首
(
あいくち
)
が彼の脇腹をえぐったのだ。
刺青
(新字新仮名)
/
富田常雄
(著)
寸分の暇も緩めず理智の
匕首
(
あいくち
)
、自我の
剪尖
(
きっさき
)
をもって自身の胸元につきつけ/\して自身を急き立て励ますことに慣れて来た私は、いまは木から落ちた猿同様な気持になりました。
生々流転
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
あの晩、てめえは何処で何をしていやあがったんだ。お由の胸へ
匕首
(
あいくち
)
を差し附けて……
白蛇の死
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
サントブーヴは古今独歩の評論家であるが
巴里
(
パリ
)
大学で講義をした時は非常に不評判で、彼は学生の攻撃に応ずるため外出の際必ず
匕首
(
あいくち
)
を
袖
(
そで
)
の下に持って
防禦
(
ぼうぎょ
)
の具となした事がある。
吾輩は猫である
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
しかし貴方が
三たび
(
スライス
)
で
逼
(
つか
)
えて、それ以後の韻律を失ってしまったのは、けっして偶然の事故ではないのですよ。その一語には、少なくとも
匕首
(
あいくち
)
くらいの心理的効果があるからなんです。
黒死館殺人事件
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
懐中
(
ふところ
)
に呑んでいた
匕首
(
あいくち
)
で、
魂限
(
こんかぎ
)
り立ち向ったんですが、とても
敵
(
かな
)
いませんでしてね。三人とも半殺しの目に遭わされました。それが原因で逆ずり金蔵は二月ばかり患って死んでしまいました。
怪異暗闇祭
(新字新仮名)
/
江見水蔭
(著)
灼
(
や
)
けただれた
匕首
(
あいくち
)
がわたしの心臓に突き透るように感じる時もあった。
世界怪談名作集:10 廃宅
(新字新仮名)
/
エルンスト・テオドーア・アマーデウス・ホフマン
(著)
そして一、二の侍は隠し持っていた刀や、
匕首
(
あいくち
)
に手をかけた。
青銅の基督:――一名南蛮鋳物師の死――
(新字新仮名)
/
長与善郎
(著)
火になり、水になり、
匕首
(
あいくち
)
になり、毒になる。
ファウスト
(新字新仮名)
/
ヨハン・ヴォルフガング・フォン・ゲーテ
(著)
囲みは自然に解けて、五六人の荒くれ男、手拭や風呂敷で面体を包んだのが、棍棒、
匕首
(
あいくち
)
を
閃
(
ひら
)
めかして、三方から競いかかりました。
十字架観音
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
小野寺幸右衛門の顔へ向って、
匕首
(
あいくち
)
を、抛り投げた。そして、怖ろしい迅さで、近くの露地から何かの
社
(
やしろ
)
の森へ駈けこんでしまった。
新編忠臣蔵
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
と、その声が呼んだかのように、土蔵の口へ現われたのは、顔に醜い薄
痘痕
(
あばた
)
のある、蔵番らしい男であったが、手に
匕首
(
あいくち
)
を握っている。
前記天満焼
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
彼女はその
匕首
(
あいくち
)
を身辺から離さないで、最後の最後の用意としていた。そうした最後の用意が、
如何
(
いか
)
なる場合にも、彼女を勇気付けた。
真珠夫人
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
六蔵の手は
匕首
(
あいくち
)
を握ったままで早縄にかかってしまった。蒼くなってすくんでいる良次郎を見かえって、半七はしずかに立った。
半七捕物帳:20 向島の寮
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
『いや、それにしても……成るほど、あそこに寝るまで手に何も持っていなかったですね……
匕首
(
あいくち
)
が落ちていたんじゃないかな』
鱗粉
(新字新仮名)
/
蘭郁二郎
(著)
白木綿
(
しろもめん
)
の腹巻の間に、手をさし込んで、
匕首
(
あいくち
)
の柄を握りしめながら、じっと、追って来る捕り方たちの様子を覗う闇太郎だ。
雪之丞変化
(新字新仮名)
/
三上於菟吉
(著)
匕首
(
あいくち
)
をな。届けたら、けさになって豊太が刺し殺されていたんだ。どれもこれも、おかしなことばかりじゃねえかよ。
右門捕物帖:35 左刺しの匕首
(新字新仮名)
/
佐々木味津三
(著)
彼は直ちに
匕首
(
あいくち
)
が自分の
咽喉元
(
のどもと
)
へ突き刺さるだろうと観念していると、曲者は一方の腕で何処までも頸を
扼
(
やく
)
したまゝ、一方の手で二度も三度も顔の上を
武州公秘話:01 武州公秘話
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
“匕首”の解説
匕首(あいくち、ひしゅ)または合口(あいくち)は、鍔(つば)の無い短刀のこと。本来の日本語では「合口」であったが、中国の「匕首」(ひしゅ、)と混同され、現在はどちらの表記でも「あいくち」で意味が通る。また、本来の「匕首」は、その形状・定義も合口とは厳密には異なる。
(出典:Wikipedia)
匕
漢検1級
部首:⼔
2画
首
常用漢字
小2
部首:⾸
9画
“匕首”で始まる語句
匕首傷
匕首拵
匕首一閃