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冬籠
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ふゆごも
ふりがな文庫
“
冬籠
(
ふゆごも
)” の例文
宿の娘ではないし、誰か連れがあって
冬籠
(
ふゆごも
)
りをする
逗留
(
とうりゅう
)
の客に違いない。その連れはいずれも相当の教養もあり、風流も解する人だ。
大菩薩峠:27 鈴慕の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
この山の上に住むものは、十一月から翌年の三月まで、
殆
(
ほと
)
んど五ヶ月の冬を過さねば成らぬ。その長い
冬籠
(
ふゆごも
)
りの用意をせねば成らぬ。
千曲川のスケッチ
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
霞
(
かすみ
)
ヶ
関
(
せき
)
には返り
咲
(
ざき
)
の桜が一面、陽気はづれの暖かさに、
冬籠
(
ふゆごも
)
りの長隠居、
炬燵
(
こたつ
)
から
這出
(
はいだ
)
したものと見える。
早
(
は
)
や
往来
(
おうらい
)
は
人立
(
ひとだち
)
だ。
妖魔の辻占
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
玄関から声かけると、主婦らしい
小肥
(
こぶと
)
りの女が出て来て、三村加世子がいるかと
訊
(
き
)
くと、まだ
冬籠
(
ふゆごも
)
り気分の、厚い
袖
(
そで
)
無しに
着脹
(
きぶく
)
れた彼女は
縮図
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
冬籠
(
ふゆごも
)
りに必要な品々を
頒
(
わ
)
け合う時になって、人々は特に、はっきりと、それを感じた。最も熱心なシャクの聞き手までが。
狐憑
(新字新仮名)
/
中島敦
(著)
▼ もっと見る
陰鬱な交換局から明るいオフィスへの解放、それは永い
冬籠
(
ふゆごも
)
りのあとの春の野へ放たれた小鳥の喜びであった。
五階の窓:04 合作の四
(新字新仮名)
/
甲賀三郎
(著)
ニーロの
邊
(
ほとり
)
に
冬籠
(
ふゆごも
)
る鳥、空に
群
(
むらが
)
り
集
(
つど
)
ひて後、なほも速かに飛ばんため
達
(
つらな
)
り行くことあるごとく 六四—六六
神曲:02 浄火
(旧字旧仮名)
/
アリギエリ・ダンテ
(著)
「
可
(
い
)
いじゃありませんか。
何
(
ど
)
うせ寒い
中
(
うち
)
は休みでしょうから、当分はここの
家
(
うち
)
に
冬籠
(
ふゆごも
)
りを
為
(
な
)
さいよ。」
飛騨の怪談
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
古
(
ふる
)
い
名
(
な
)
を
持
(
も
)
つ
草津
(
くさつ
)
に
隱
(
かく
)
れて、
冬籠
(
ふゆごも
)
る
身
(
み
)
にも、
遙々
(
はる/″\
)
と
高原
(
かうげん
)
の
雪
(
ゆき
)
を
分
(
わ
)
けて、うらゝかな
日
(
ひ
)
は
照
(
て
)
つてゐる。
日の光を浴びて
(旧字旧仮名)
/
水野仙子
(著)
十二月になって、雪が二三度降り、いよいよ
冬籠
(
ふゆごも
)
りをしだした時分になってから、うちの爺やがどうもこの頃うちを明けてばかりいるのに
漸
(
ようや
)
っと気がつき出しました。
朴の咲く頃
(新字新仮名)
/
堀辰雄
(著)
此の頃
俄
(
にはか
)
に其の影を見せぬは、必定
函根
(
はこね
)
の湯気
蒸
(
む
)
す所か、
大磯
(
おほいそ
)
の
濤音
(
なみおと
)
冴
(
さ
)
ゆる
辺
(
あたり
)
に
何某殿
(
なにがしどの
)
と不景気知らずの
冬籠
(
ふゆごも
)
り、
嫉
(
ねた
)
ましの御全盛やと思ひの外、
実
(
げ
)
に驚かるゝものは人心
火の柱
(新字旧仮名)
/
木下尚江
(著)
家
(
うち
)
の周囲の畠ばかりをいじくっていたものですが、そのうちに又、眼の前に差迫っている
冬籠
(
ふゆごも
)
りの用意の事を思出しますと、何がなしにジッとしては居られなくなりましたので
キチガイ地獄
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
森の樹々が、木枯しに吹かれて一日一日、素肌をあらわし、魔法使いの家でも、そろそろ
冬籠
(
ふゆごも
)
りの仕度に取りかかりはじめた頃、
素張
(
すば
)
らしい獲物がこの魔法の森の中に迷い込みました。
ろまん灯籠
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
予は
冬籠
(
ふゆごも
)
り
後
(
ご
)
の困難はむしろ苦とは思わざりしが、諸準備の経費の
遣
(
や
)
り
繰
(
く
)
りには、かなり頭を痛めたり、加うるに観測所の構造、材料運搬の方法、
採暖
(
さいだん
)
の装置、食料もしくは
被服
(
ひふく
)
の撰択等
寒中滞岳記:(十月一日より十二月廿一日に至る八十二日間)
(新字新仮名)
/
野中至
(著)
小判と砂利を入れ換へたのは私一人の
細工
(
さいく
)
で、誰にも相談したわけぢやありません。山吹色の小判は、別のところに、五色の虹を吐いて、ほか/\と
冬籠
(
ふゆごも
)
りして居りますよ。ハツ、ハツ、ハツ
銭形平次捕物控:248 屠蘇の杯
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
冬籠
(
ふゆごも
)
りと見える家が軒を並べてひそりと静まっているばかりである。
永日小品
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
「これでは
冬籠
(
ふゆごも
)
りもできないね。早く東京へ帰ることにしようか」
入江のほとり
(新字新仮名)
/
正宗白鳥
(著)
今年の
冬籠
(
ふゆごも
)
りのさびしさを思いながら清三は歩いた。
田舎教師
(新字新仮名)
/
田山花袋
(著)
冬籠
(
ふゆごも
)
り燈下に書すと書かれたり
俳人蕪村
(新字新仮名)
/
正岡子規
(著)
この二人は、どちらも池田良斎の一行で、この白骨の湯で
冬籠
(
ふゆごも
)
りをし、春の
来
(
きた
)
るのを待って、飛騨の方面へ飛躍しようとする一味の者。
大菩薩峠:26 めいろの巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
ことしは久しぶりで東京の郊外に
冬籠
(
ふゆごも
)
りする。冬の日は光が屋内まで輝き満ちるようなことは過ぐる三年の間はなかったことだ。
新生
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
冬籠
(
ふゆごも
)
りをする人だけに、この
広寒宮
(
こうかんきゅう
)
のながめが許されるのに、お気の毒なのは、せっかく、許された特権を
抛棄
(
ほうき
)
して眠っている人たち。
大菩薩峠:29 年魚市の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
五箇月も前から——旅の
冬籠
(
ふゆごも
)
りの間——岸本は唯そればかりを待っていたようなものであった。リモオジュの旅以来、彼の周囲には何が有ったろう。
新生
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
コノ地、秋ヨリ冬ニカケテハ、旅宿ハ戸ヲ釘ヅケニシテ里ニ去ル例ナレドモ、今年ハ珍シク
冬籠
(
ふゆごも
)
リノ客多数居残リヲレリ……
大菩薩峠:27 鈴慕の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
冬籠
(
ふゆごも
)
りする高瀬は火鉢にかじりつき、お島は
炬燵
(
こたつ
)
へ行って、そこで凍える子供の手足を暖めさせた。
岩石の間
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
全く珍しいことですよ、この温泉へ、こうまで顔がそろって
冬籠
(
ふゆごも
)
りをしようなんぞは、白骨はじまって無いことでしょう。
大菩薩峠:27 鈴慕の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
長い
冬籠
(
ふゆごも
)
りの近づいたことを思わせるような日が来ていた。ルュキサンブウルの公園にある噴水池も凍りつめるほどの寒さが来ていた。部屋の
煖炉
(
だんろ
)
には火が
焚
(
た
)
いてあった。
新生
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
一日や二日ならば隠れおおせるが、もしあれがわたしたち同様に、
冬籠
(
ふゆごも
)
りをするつもりで来たとすればどうしよう、ほとんど逃れる道はない——
大菩薩峠:23 他生の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
学校の
往還
(
ゆきかえり
)
に——すべての物が白雪に
掩
(
おお
)
われている中で——日の
映
(
あた
)
った石垣の間などに春待顔な雑草を見つけることは、私の楽みに成って来た。長い間の
冬籠
(
ふゆごも
)
りだ。せめて路傍の草に親しむ。
千曲川のスケッチ
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
でも、その当人が、この宿に
冬籠
(
ふゆごも
)
りをするうちの誰? ということは、笠がかくしていて判断の余地を与えません。
大菩薩峠:29 年魚市の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
平湯を第二の
冬籠
(
ふゆごも
)
りとして、我々の一分隊がここを占拠して、暮してみるもまた一興ではないか——こんなことに相談が
纏
(
まと
)
まって、予定よりは二日も遅れて
大菩薩峠:32 弁信の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
冬籠
(
ふゆごも
)
りの用心をする——ここから青梅の裏宿まで運ぶのはかなりの距離はあるが、それを自分ひとりでこなしては、自分ひとりで、或る時は手車を用いたり
大菩薩峠:29 年魚市の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
ここで
冬籠
(
ふゆごも
)
りをしようというまでのものはないことと、誰しも
了簡
(
りょうけん
)
しているところへ、山の通人が、同行者を一人つれて、不意に訪れたものですから、新顔が加わって
大菩薩峠:25 みちりやの巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
白骨の炉辺閑話でも、そこに集まる
冬籠
(
ふゆごも
)
りの人たちの
風采
(
ふうさい
)
を、お雪ちゃんの話によって、いちいち想像に描いてみては、それらの人と共に語るような思いもするのです。
大菩薩峠:31 勿来の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
この白骨の温泉の
冬籠
(
ふゆごも
)
りで、誰がわたしの相手になってくれます、炉辺閑話の席などへ寄りつこうものなら、
忽
(
たちま
)
ちあの人たちにとっつかまって火の中へくべられっちまいます。
大菩薩峠:32 弁信の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
ことにこの白骨の
冬籠
(
ふゆごも
)
りの宿を預っているわれわれにしてみると、絵でもあり、実感でもあります、ついこの間の仏頂寺なにがしと名乗るさむらいなんぞは、まさにそれでしたね
大菩薩峠:32 弁信の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
あの
冬籠
(
ふゆごも
)
りの人たちは、いずれも一風変った人たちではあったけれども、なかでも北原さんがいちばん気軽で、わたしとは気が合っていた。口は悪いけれども、全く親切気のあった人。
大菩薩峠:31 勿来の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
そうしていま帰らなければ、御同様ここで
冬籠
(
ふゆごも
)
りをするつもりかも知れない。
大菩薩峠:23 他生の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
この一軒の宿屋のうちの
冬籠
(
ふゆごも
)
りが、ある時は炉辺の春となり、ある時は
湯槽
(
ゆぶね
)
に話の花が咲き、あるときはしめやかな講義の席となり、ある日は俳諧の軽妙に興がわくといったような賑わいが
大菩薩峠:26 めいろの巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
えたいの知れぬ白骨の
冬籠
(
ふゆごも
)
り
連
(
れん
)
のうちに、一人や二人、無いとはいえまい。
大菩薩峠:26 めいろの巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
あなた方はあちらへおいでになる……そうして
冬籠
(
ふゆごも
)
りをなさる、いやそれほどの御辛抱がおありになれば、いかなる難病でもなおらぬということはございますまいが……それにしても、まあ
大菩薩峠:23 他生の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
弁信は今し、人無き浴槽の中——この浴槽は、お雪ちゃんをはじめ、北原君も、池田良斎も、その以前には、イヤなおばさんも、浅公も、その他、すべての
冬籠
(
ふゆごも
)
りの客を温めたことの経歴を持つ。
大菩薩峠:31 勿来の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
冬
常用漢字
小2
部首:⼎
5画
籠
常用漢字
中学
部首:⽵
22画
“冬”で始まる語句
冬
冬瓜
冬青
冬枯
冬至
冬季
冬日
冬木
冬分
冬菜