偵察ていさつ)” の例文
召使、御用商人、親戚しんせき、友人、無関係者、見知らぬ通行人、などすべての者が、暗黙の間に一致して、偵察ていさつに力を合わせている。
ケート、モコウ、次郎、バクスターは、他の四人の幼年組と洞に残り、他の八名はイバンスとともに偵察ていさつにむかうことになった。
少年連盟 (新字新仮名) / 佐藤紅緑(著)
久野は何だか自分の艇も誰れかに偵察ていさつされてるような気がして、仔細しさいに両岸を望遠鏡で調べた。しかしそれらしいものは誰れもいなかった。
競漕 (新字新仮名) / 久米正雄(著)
多勢の斥候隊は、国民兵の各隊の中にある戦列隊で編成され、飾り帯をつけたひとりの警部を先に立てて、反乱してる街路を偵察ていさつに行った。
色里から朝帰りの若い者共は、まずこの湯屋へ立寄って、家の首尾の偵察ていさつを試みて、それから帰宅する足場としている。
大菩薩峠:19 小名路の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
地球内部ちきゆうないぶにまで偵察ていさつ出掛でかけそれがふたゝ地球ちきゆう表面ひようめんあらはれて報告ほうこくをなしつゝあることが氣附きづかれたことである。
地震の話 (旧字旧仮名) / 今村明恒(著)
「僕もそれが気になって仕方がないんだ。じゃあの婆の家へは行かないでも、近所まで偵察ていさつに行って見ようか。」
妖婆 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
おこたり無く偵察ていさつしてゐると、丁度将門の雑人ざふにん支部はせつかべ子春丸といふものがあつて、常陸の石田の民家に恋中こひなかの女をもつて居るので、時〻其許へ通ふことを聞出した。
平将門 (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)
日本にっぽんもうくに古来こらい尚武しょうぶ気性きしょうんだお国柄くにがらであるめ、武芸ぶげい偵察ていさつ戦争いくさ駈引等かけひきとうにすぐれた、つまり男性的だんせいてき天狗てんぐさんはほとんど全部ぜんぶこのくにあつまってしま
おだやかならぬ一族の様子がかみに聞えた。横目よこめ偵察ていさつに出て来た。山崎の屋敷では門を厳重にとざして静まりかえっていた。市太夫や五太夫の宅は空屋になっていた。
阿部一族 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
幾たび目かの、木曾川きそがわをわたり、翌日、二宮山にのみやざんに出て、敵情を偵察ていさつし、転じて、二十八日には、小折こおり附近の敵の散兵を掃討そうとうし、附近を、火攻めにして、ひっ返した。
新書太閤記:11 第十一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
みんなてんでに、スケッチブックやカメラなどをたずさえているが、かれらの真の目的が、写生や撮影にあるのではなく、館内の様子ようす偵察ていさつにあることはいうまでもない。
少年探偵長 (新字新仮名) / 海野十三(著)
それには、ひとっていて、下方かほうにたむろしている敵軍てきぐんのようすを偵察ていさつしていたのであります。すると、これを射落おとそうと、てき騎兵きへい軽気球けいききゅうがけて、発砲はっぽうしていました。
おばあさんとツェッペリン (新字新仮名) / 小川未明(著)
やがて和田方面へ偵察ていさつに出かけて行ったものは、また雨をついて峠の上に引き返して来る。
夜明け前:02 第一部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
武はかしらだった下男にいいつけて林児を偵察ていさつさしてあった。林児は夜他から帰って来て偵察している者の手に落ちた。偵察していた者は林児を武の前に突きだした。武は林児をつえたたいた。
田七郎 (新字新仮名) / 蒲 松齢(著)
僕の考えでは、どうも、チョッピリ女史が、くさい。かれを折檻せっかんしたら、事の真相を白状するかも知れぬ。そのうち一度、チョッピリ女史のところへ、何くわぬ顔をして偵察ていさつに行ってみよう。
正義と微笑 (新字新仮名) / 太宰治(著)
改ためて自分の心を解剖して見たら、彼ら二人の間に秘密の関係がすでに成立しているという仮定が遠くから彼をあやつって、それがために偵察ていさつの興味が一段と鋭どくぎ澄まされたのかも知れなかった。
彼岸過迄 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
彼の耳は、その間にも、鋭敏に周囲を偵察ていさつしている。
次郎物語:01 第一部 (新字新仮名) / 下村湖人(著)
洞の外には多くの人のくつあとが、朝露あさつゆにぬれて縦横じゅうおうに点々と印せられている、あきらかに海へびたちが昨夜、洞外を偵察ていさつしたときのくつあとである。
少年連盟 (新字新仮名) / 佐藤紅緑(著)
そして激しい荷車の音に、軍曹はもうこらえきれなくなって、一つ偵察ていさつしてみようと決心した。
地震波ぢしんぱ偵察ていさつした結果けつか器械きかい、これを地震計ぢしんけいづける。まへにユーイング教授きようじゆ地震計ぢしんけい發明はつめいしたことをべたが、これはじつ容易よういならざる發明はつめいであつたのである。
地震の話 (旧字旧仮名) / 今村明恒(著)
十分ほど前、何小二かしょうじは仲間の騎兵と一しょに、味方の陣地から川一つ隔てた、小さな村の方へ偵察ていさつに行く途中、黄いろくなりかけた高粱こうりょうの畑の中で、突然一隊の日本騎兵と遭遇した。
首が落ちた話 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
その夜にも二回、その次の日の朝にも三回、春木少年はお稲荷さんの祠を偵察ていさつした。
少年探偵長 (新字新仮名) / 海野十三(著)
すぐ偵察ていさつを放ってみたところ、金沢の援兵は、まだ津幡まで来ていないし、城中の形勢から見て、たとえ、利家が来ても、こん夜は、津幡城に泊るであろうという見方に一致していた。
新書太閤記:11 第十一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
のそのそ椽側えんがわから書斎の入口まで来て室内の動静を偵察ていさつに及んだ。
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
イバンスは昼食後、少年を集めてそのことをはかった、少年たちは即時、偵察ていさつに出発することに賛成した。
少年連盟 (新字新仮名) / 佐藤紅緑(著)
アンジョーラは偵察ていさつに出かけていた。彼は軒下に沿ってモンデトゥール小路から出て行った。
でも、極秘の公用です。——三蔵さんも、そのための偵察ていさつでしょう。はやく戻って、大留城の裏切りは、確かめられましたから、安心して、軍をお進めあるがよいと、勝入さまへ、お伝えを
新書太閤記:10 第十分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
偵察ていさつロケット
三十年後の世界 (新字新仮名) / 海野十三(著)
暴徒らはふいに、近くの屋根の上に日光に輝く一つの兜帽かぶとぼうを見いだした。ひとりの消防兵が高い煙筒に身を寄せて、偵察ていさつをやってるらしかった。その視線はま上から防寨の中に落ちていた。
一里ゆくにも、偵察ていさつの結果を待ち、二里進むにも、偵察して進んだ。
新書太閤記:07 第七分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
帆村の偵察ていさつ
宇宙戦隊 (新字新仮名) / 海野十三(著)
しかも死を招くその場所を、まじめな考え込んだ様子で偵察ていさつしていた。
あかつき偵察ていさつ
空襲葬送曲 (新字新仮名) / 海野十三(著)
彼は同時に自分のためと楽しみと本能とから男をうかがい、あたかも金で頼まれたかのように偵察ていさつしていたのである。そしてその黄色い上衣の男の一挙手一投足はことごとく彼の目をのがれなかった。
エポニーヌはプリューメ街に行き、鉄門と庭とを見いだし、その家を調べ、偵察ていさつしうかがって、それから数日後に、クロシュペルス街に住んでいたマニョンのもとへ、ビスケットを一つ持って行った。