一人々々ひとり/\)” の例文
彌次郎やじらう時代じだいにはゆめにも室氣枕くうきまくらことなどはおもふまい、と其處等そこいらみまはすと、また一人々々ひとり/\が、風船ふうせんあたまくゝつて、ふはり/\といてかたちもある。
大阪まで (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
さゝるゝな立派な出世致すべしかくてこそ予にたい忠義ちうぎなるぞと申聞られ一人々々ひとり/\盃盞さかづきを下され夫より夜のあくるをまちける此時越前守の奧方おくがたには奧御用人を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
小児こども着飾きかざらせて一人々々ひとり/\乳母を附けて芝居を見せようと云ふ豪奢がうしや性質たち、和上が何かに附けて奥方の町人気質かたぎを賎むのを親思おやおもひの奥方は、じつと辛抱して実家さとへ帰らうともせず
蓬生 (新字旧仮名) / 与謝野寛(著)
汗をたらしてきずによく働いてゐたものだが、一人々々ひとり/\みな死んでしまつた今日けふとなつて見れば、あの人達はこの世の中に生れて来ても来なくてもつまるところは同じやうなものだつた。
すみだ川 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
げられたものは、一人々々ひとり/\検疫医けんえきいならんだ段階子だんばしごしたとほつてうへく。『ミストル・アサヤーマ』。「ヤ」で調子てうしげてすこつて「マ」でげる。成程なるほどやまのやうにきこえる。
検疫と荷物検査 (新字旧仮名) / 杉村楚人冠(著)
あと二三にんだけのこつたのが一人々々ひとり/\牛小屋うしごやからつかされて、はてしもらないうみうへを、二十日目はつかめしまひとつ、五十日目ごじふにちめしまひとつ、はなれ/″\に方々はう/″\られて奴隷どれいりました。
印度更紗 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
三百にんばかり、山手やまてから黒煙くろけぶりげて、羽蟻はありのやうに渦卷うづまいてた、黒人くろんぼやり石突いしづきで、はまたふれて、呻吟うめなや一人々々ひとり/\が、どうはらこし、コツ/\とつゝかれて、生死いきしにためされながら
印度更紗 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
……そしてくるまいた商人あきんどの、一人々々ひとり/\穗長ほながやりいたり、かついだりしてかたちが、ぞろ/\かげのやうにくろいのに、椰子やししげつたうへへ、どんよりと黄色きいろた、つきあかりで、白刃しらはばかりが
印度更紗 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)