くぢら)” の例文
僕の胃袋ゐぶくろくぢらです。コロムブスの見かけたと云ふ鯨です。時々しほも吐きかねません。える声を聞くのには飽き飽きしました。
囈語 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
「ひらめやかれいに附き合ひはないよ。うなぎといふ字と、くぢらといふ字なら看板かんばんで見て知つてるが、それでも間に合せるわけには行かねエのか」
そのほかおほきな動物どうぶつ標本ひようほんにはぞうくぢらもあり、鑛物こうぶつ植物しよくぶつ標本ひようほんもすっかりそろつてゐることはまをすまでもありません。
博物館 (旧字旧仮名) / 浜田青陵(著)
じよ、じようだんばかり、やすいたつて、化物屋敷ばけものやしき……んでもない、はあ、えゝ、たぬき、きつね、そんなものはくぢらんでしまうた、はゝは。
木菟俗見 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
神異記しんいき洞冥記とうめいきにも夜光珠やくわうしゆの㕝見えたれども孟浪うきたることしよくす。古今注ここんちゆうにはすぐれて大なるくぢらは夜光珠をなすといへり。
マルヂヴエ群島ぐんとうへんから南方なんほうむかつてはしるなる、一層いつそう流勢ながれはや潮流てうりう吸込すひこまれてるとさとつたときおもはず驚愕おどろきこゑはつしたことと、かつものほんんだおびたゞしきくぢらむれはるか海上かいじやうながめたことほか
それはくぢらえたにちがひない。
歌の話 (旧字旧仮名) / 折口信夫(著)
「これ、くぢらひげだよ。」
良寛物語 手毬と鉢の子 (新字旧仮名) / 新美南吉(著)
神異記しんいき洞冥記とうめいきにも夜光珠やくわうしゆの㕝見えたれども孟浪うきたることしよくす。古今注ここんちゆうにはすぐれて大なるくぢらは夜光珠をなすといへり。
東作はくぢらのやうに飮みました。逃げ腰のお富は、彦兵衞に眼でしかられて、觀念し切つた手に銚子を擧げるのです。
しやちくぢらなかへ、芝海老しばえびごとく、まれぬばかりに割込わりこんで、ひとほつ呼吸いきをついて、橋場はしば今戸いまど朝煙あさけむりしづ伏屋ふせや夕霞ゆふがすみ、とけむながめて、ほつねんと煙草たばこむ。
大阪まで (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
甚だ尾籠びろうなお話ですが、第一下痢げりをする時には何だかさめの卵か何かを生み落してゐるやうに感ずるのです。それだけでももうがつかりします。おまけに胃袋までくぢらのやうに時々潮をき出すのです。
無題 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
熊野くまのくぢらつきのうたです。
歌の話 (旧字旧仮名) / 折口信夫(著)
くぢらでも釣つて來るか——と冗談を仰しやつてお出かけになりましたが、それつきりになつてしまつて——
全体ぜんたい少しもくさらず、かたち今の船にことなるのみならず、金具かなぐを用うべき処みなくぢらひげを用ひて寸鉄すんでつをもほどこしたる処なし。木もまた何の木なるをべんずる者なく、おそらくは異国いこくの船ならんといへりとぞ。
やうなものがくぢらゑさにありますか、とりかねないいきほひで。
城崎を憶ふ (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
女の帶はくぢらの一丈だ。その端を窓の敷居にしかと留め、一方の端を窓の外の大八車に留めて、死骸を
全体ぜんたい少しもくさらず、かたち今の船にことなるのみならず、金具かなぐを用うべき処みなくぢらひげを用ひて寸鉄すんでつをもほどこしたる処なし。木もまた何の木なるをべんずる者なく、おそらくは異国いこくの船ならんといへりとぞ。
「つまり、その鯤といふくぢらのやうな魚が、鳥になつて今度はほうといふものになり、南冥なんめいといふところに飛んで行く、——南冥は天池也てんちなりと斷わつてある、つまり天の池だな」