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おとづ
何も
彼も
忘れ
果てて、
狂氣の
如く、
其家を
音信れて
聞くと、お
柳は
丁ど
爾時……。あはれ、
草木も、
婦人も、
靈魂に
姿があるのか。
聖母の像ある家ごとに
音信れ來て、救世主の
誕れ給ひしは今ぞ、と笛の音に知らせありきぬ。
日闌けて
眠き
合歡の
花の、
其の
面影も
澄み
行けば、
庭の
石燈籠に
苔やゝ
青うして、
野茨に
白き
宵の
月、カタ/\と
音信るゝ
鼻唄の
蛙もをかし。
ふと
蓮葉に、ものを
言つて、
夫人はすつと
立つて、
對丈に、
黒人の
西瓜を
避けつゝ、
鸚鵡の
籠をコト/\と
音信れた。
なじみに
成ると、
町中の
小川を
前にした、
旅宿の
背戸、その
水のめぐる
柳の
下にも
來て、
朝はやくから
音信れた。
美濃から
近江、こちらの桟敷に
溢れてる大きなお
臀を、隣から手を
伸して
猪口の
縁でコトコトと
音信れると、片手で
簪を
撮んで、ごしごしと
鬢の毛を
突掻き突掻き
うき
世を
濟ました
媼さんが
一人、
爐端に
留守をして、
暗い
灯で、
絲車をぶう/\と、
藁屋の
雪が、ひらがなで
音信れたやうな
昔を
思つて、
絲を
繰つて
居ると、
納戸の
障子の
破れから
世にやくねれる、
戀にや
惱める、
避暑の
頃よりして
未だ
都に
歸らざる、あこがれの
瞳をなぶりて、
風の
音信るともあらず、はら/\と、
櫨の
葉、
柿の
葉、
銀杏の
葉、
見つゝ
指の
撓へるは