音信おとづ)” の例文
なにわすてて、狂氣きやうきごとく、その音信おとづれてくと、おりうちやう爾時そのとき……。あはれ、草木くさきも、婦人をんなも、靈魂たましひ姿すがたがあるのか。
三尺角拾遺:(木精) (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
聖母の像ある家ごとに音信おとづれ來て、救世主のうまれ給ひしは今ぞ、と笛の音に知らせありきぬ。
音信おとづれて鳴く天津かりがね
蔦葛木曽棧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
けてねむ合歡ねむはなの、面影おもかげけば、には石燈籠いしどうろうこけやゝあをうして、野茨のばらしろよひつき、カタ/\と音信おとづるゝ鼻唄はなうたかへるもをかし。
五月より (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
ふと蓮葉はすはに、ものをつて、夫人ふじんはすつとつて、對丈つゐたけに、黒人くろんぼ西瓜すゐくわけつゝ、鸚鵡あうむかごをコト/\と音信おとづれた。
印度更紗 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
なじみにると、町中まちなか小川をがはまへにした、旅宿やどや背戸せど、そのみづのめぐるやなぎもとにもて、あさはやくから音信おとづれた。
木菟俗見 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
美濃みのから近江おうみ、こちらの桟敷にあふれてる大きなおしりを、隣から手をのばして猪口ちょくふちでコトコトと音信おとづれると、片手でかんざしつまんで、ごしごしとびんの毛を突掻つッかき突掻き
南地心中 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
うきましたばあさんが一人ひとり爐端ろばた留守るすをして、くらともしで、絲車いとぐるまをぶう/\と、藁屋わらやゆきが、ひらがなで音信おとづれたやうなむかしおもつて、いとつてると、納戸なんど障子しやうじやぶれから
間引菜 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
にやくねれる、こひにやなやめる、避暑ひしよころよりしていまみやこかへらざる、あこがれのひとみをなぶりて、かぜ音信おとづるともあらず、はら/\と、はじかき銀杏いてふつゝゆびしなへるは
婦人十一題 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)