斯ういう人と、需めとに対しては容易に答えられるものではない。私はふとヘルマン・ヘッセのシッダールタという本を思い起した。
而シテ君今亡シ。嗣子紳六郎男、其伝ヲ携ヘ来リテ之ニ序セムコトヲ需ム。余之ヲ読ミテ其感ニ堪ヘス。即数言ヲ記シテ以テ之ヲ返ス。
此際に於て尤も多く時代に需めらるべきは、此目的に適ひたるものなるが故に、其第一着として三田翁は皇天の召に応じたるものなり。
すなわち本誌編者の需めに応じて、いささかこの問題に関する余輩の回顧を筆録し、再建論者としての余輩の立場を明らかにせんとする。
後にどうつくろうべきものでもなかろう。ただ、時の流れと、時評の是々非々と、そして読者の需めにまかせるのみである。